日視練令和4年度陳情に関する報告



日視練が令和4年度各府省庁等に提出した陳情の回答等をまとめた陳情報告書です。

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【目次】


01 厚生労働省 障害福祉関係へ


02 厚生労働省 職業関係へ


03 人事院へ


04 文部科学省へ


05 国土交通省へ


06 警察庁へ


07 総務省へ


08 経済産業省へ


09 デジタル庁へ


10 金融庁へ



※注意
 提出した陳情書より回答のあった項目のみ掲載する。



01 厚生労働省(障害福祉関係)




1.日時
 令和4年8月25日(木) 13時00分〜15時30分

2.場所
 オンライン

3.出席者
(1)日本視覚障害者団体連合
                      会長  竹下 義樹
                     副会長  及川 清隆
                     副会長  片岡 美佐子
                    常務理事  橋井 正喜
                    事業部長  逢坂 忠
                    情報部長  吉泉 豊晴
                     事務局  木村 幸平
                     事務局  佐藤 絵里

(2)厚生労働省
 社会・援護局障害保健福祉部
  障害福祉課
   訪問サービス係                神田
   企画法令係                  岡本
   相談支援係                  橋本
  障害福祉課地域生活支援推進室          今井
  企画課
   障害認定係                  鈴木
  企画課自立支援振興室
   地域生活支援係                澤田
   情報・意思疎通支援係             大江
   障害者支援機器係               南谷
   社会参加活動支援係              辰巳
 老健局
  高齢者支援課                  村田
 保険局
  医療課                     松平
  国民健康保険課                 柴田
 医政局
  総務課                     島田
 子ども家庭局
  母子保健課                   担当者名不明

4.陳情項目、回答、意見交換

【高齢者問題】

(1)視覚障害者が一定以上の所得があっても、養護盲老人ホームに入所できるようにすること。

(高齢者支援課 村田)
 今後、高齢化の進展に伴い社会的孤立の問題等が顕在化していることから、介護ニーズや介護以外の生活課題を抱える低所得の高齢者が増加すると見込まれている。このような者が居宅での生活が困難な場合、地域での受け皿となる養護老人ホームの存在はますます重要になると考えている。
 養護老人ホームの入所措置については、老人福祉法において「六十五歳以上の者であつて、環境上の理由及び経済的理由により居宅において養護を受けることが困難な者」を対象にしている。一方で、令和元年7月2日に発出した事務連絡「養護老人ホームにおける契約入所及び地域における公益的な取組の促進について」(※1)によって、定員が20%の範囲内で契約入所を可能とする取り扱いを再周知しており、高齢者や障害者が契約入所により養護老人ホームに入る際は経済的な理由は要件にしていない。
 厚生労働省としては、養護老人ホームが必要な者に対する福祉制度の適切な活用、財政的支援、契約入所に対する効果的かつ円滑な実施への支援等を自治体が適切に実施するよう、全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議等において周知している。

(竹下会長)
 契約入所する場合の条件や報酬は契約によって変わるのか。

(高齢者支援課 村田)
 個々の契約になるため、一律の料金があるわけではない。ただ、措置制度に準じた条件や金額等で契約を結ぶものと考えている。

(※1)養護老人ホームにおける契約入所及び地域における公益的な取組の促進について
https://www.pref.ehime.jp/h20400/kaigohoken/jigyou/documents/yougotuuti.pdf

(2)市町村による養護盲老人ホームへの入所措置控えを解消すること。

(高齢者支援課 村田)
 養護盲老人ホームを含む養護老人ホームは、地方分権の推進の観点から、三位一体の改革により措置費等を一般財源化し、地方公共団体の権限と財源を移譲している。そのため、入所措置等については地方公共団体において適切に対応されるものであると考えている。
 今後も、全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議等を通して、地方公共団体に対して、必要な者に対する措置制度の適切な対応をお願いしていく。

(竹下会長)
 地方分権を進めていることを考えると、頂いた回答の内容は理解できる。ただ、この入所措置控えが実際に起きていて、困っている視覚障害者が多いことを理解してほしい。引き続き、自治体等に強く周知してほしい。

(橋井常務)
 私の地元に養護盲老人ホームができたが、定員80人に対して18人しか集まっていないと聞いた。一方で、この養護盲老人ホームに入所を希望しても、他県に住んでいるとか、市町村が措置を認めない等があり、入所したくても入所できない視覚障害者もいる。こういった現実があることを理解してほしい。

【新型コロナウイルス感染症】

(3)新型コロナウイルス感染症に罹患した視覚障害者が安心して療養するため、入院、ホテル療養、自宅療養をする際に、適切な情報提供や移動の支援が受けられるようにすること。

(自立支援振興室 大江)
 視覚障害者及び聴覚障害者は、その障害特性から情報取得や他者とのコミュニケーションが困難なことから、新型コロナウイルス感染症に関する支援施策の周知等に当たっては、障害福祉担当部局、新型コロナウイルス感染症に関する担当部局、視聴覚障害者情報提供施設、地域の障害者団体等が連携する必要があると考えている。そのため、これらの関係機関に対して周知を行っている。要望の療養については、令和3年6月16日に事務連絡「障害者に係る新型コロナウイルス感染症に対応した宿泊療養の運営について」(※2)を発出しており、宿泊療養、自宅療養を問わず、地域の実情に応じて工夫しながら支援を行うことを求めている。
 また、今後も新型コロナウイルス感染症に関する情報提供が必要となることから、視覚障害者については、相談に関する連絡先の公開、ホームページに掲載する情報のテキストデータの提供、郵便物の内容や発信元を識別するための点字や拡大文字で表記する等を留意しながら、障害特性に応じた情報発信に努めることを、障害保健福祉関係主管課長会議等の場において自治体にお願いをしている。
 
(竹下会長)
 視覚障害者が新型コロナウイルスに感染し、自治体等から適切な情報提供や移動の支援が受けられなかったことに関する苦情は厚生労働省には届いているのか。私たちの加盟団体には、自治体の対応の悪さに関する苦情や改善要望が多く届いている。

(自立支援振興室 大江)
 大変申し訳ないが、私の部署にはその情報は届いていない。

(竹下会長)
 私たちとしては、視覚障害者を支援することが困難な地域では、自治体や保健所が地域の障害者団体や支援施設と予め連携しておく等の取り組みが必要ではないかと思っている。まず、全国の会員からの情報を整理すると、視覚障害者向けの支援施設で新型コロナウイルスの自宅療養等の支援の経験がある所であれば、ある程度の支援を行っていることが分かっている。ただ、こういった施設は全国的に少ない。そうなると、視覚障害者が自宅療養したとしても、何も支援が受けられないと心配している。そのため、自治体や保健所が地域の障害者団体や支援施設と予め連携しておくことが必要だと思っている。このことは、追加の要望として受けとめてほしい。

(※2)障害者に係る新型コロナウイルス感染症に対応した宿泊療養の運営について
https://www.mhlw.go.jp/content/000794053.pdf

【補助犬】

(4)盲導犬使用者の乗車拒否や入店拒否をなくすために、身体障害者補助犬法における努力義務を法的義務にすること。

(自立支援振興室 辰巳)
 身体障害者補助犬法においては、第9条で「不特定かつ多数の者が利用する施設を管理する者は、当該施設を身体障害者が利用する場合において身体障害者補助犬を同伴することを拒んではならない。ただし、身体障害者補助犬の同伴により当該施設に著しい損害が発生し、又は当該施設を利用する者が著しい損害を受けるおそれがある場合その他のやむを得ない理由がある場合は、この限りでない。」と示している。そのため、厚生労働省では、施設等の管理者に身体障害者補助犬のことを正しく理解してもらうために、これまでにリーフレットやポスターの作成及び配布、都道府県が実施する普及啓発活動への国庫補助等を行い、身体障害者補助犬の理解を進めるための取り組みを進めてきた。令和3年度においては、「補助犬ユーザー受け入れガイドブック」を医療機関や飲食店等の業界別に作成し、関係行政機関の協力を得て各種業界団体に周知を行った。また、身体障害者補助犬の受け入れを促すことをさらに周知するため、動画や広告を作成し、厚生労働省のYouTubeチャンネルや新聞各紙に掲載を行った。
 引き続き、受け入れ拒否事例が発生することのないよう、身体障害者補助犬の理解促進に努めていく。

(橋井常務)
 私の妻は盲導犬を利用していて、妻や他の盲導犬使用者から盲導犬の受け入れ拒否のことをよく聞く。例えば、医療機関は受け入れ拒否をするところが多く、私の妻も盲導犬と一緒に入ることを断られたことがある。以前と比べると気持ちよく盲導犬を受け入れてくれる施設やお店は増えたと思う。ただ、医療機関は依然として受け入れ拒否をするところが多いので、厚生労働省から回答の旨を強く指導してほしい。

(竹下会長)
 身体障害者補助犬法ができて今年で20年目になる。そこで思うのは、20年経っても依然として受け入れ拒否があるのであれば、国の取り組みを考え直す必要があるのではないか。回答は、いつも「普及啓発をします」「周知します」と繰り返すばかりだ。それでは、何も進まない。厚生労働省が20年間何も努力していないとは言わないが、今のやり方でだめなら、要望している義務化も含めて別の方法を試みることが必要ではないか。

【意思疎通支援事業】

(5)地域生活支援事業の意思疎通支援事業を個別給付にすること。

(6)視覚障害者を対象とする意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を全国の自治体で実施させるため、実施要領を作成し、市町村に対し通知すること。

(7)視覚障害者を対象とする意思疎通支援事業「代筆・代読支援」を同行援護と併せて利用できるようにすること。

(自立支援振興室 大江)
 陳情項目(5)から(7)をまとめて回答する。
 ご要望の多くは制度改正が必要なことから、慎重な議論を踏まえた検討が必要になる。なお、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」については、社会保障審議会障害者部会において現行制度の見直しが必要との指摘があったことから、令和4年度障害者総合福祉推進事業において「代筆、代読に関する効果的な支援方法に関する研究」を実施し、この調査結果を踏まえて、厚生労働省として必要な支援を検討していきたい。

(竹下会長)
 私たちとしては、代筆・代読の支援を全国で広げるためには、やはり陳情項目(5)の個別給付化が必要ではないかと思っている。仮に意思疎通支援事業「代筆・代読支援」が全国の自治体で実施されるようになったとしても、この事業は短時間の利用が多いだけに、この事業の依頼を単独で受ける事業者は少ないと思う。そのため、陳情項目(7)のような同行援護と連動した利用が効率的だと思っている。例えば、一部の自治体では、同行援護の利用時において、自宅からの出発前と自宅に帰ってきた時の少しの時間に行われる自宅内での代筆・代読を認めている。これは、同行援護の好事例であり、自治体が利用者のニーズを理解し、柔軟に対応している一例だ。こういった実例があることを踏まえると、陳情項目(7)を検討する余地は大いにあると考えている。

(8)スマートフォンの動画機能を利用した読み上げや場面解説を文書対応に準ずるサービスとして、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」の中で利用できるようにすること。

(自立支援振興室 大江)
 地域生活支援事業は、実施主体である自治体が地域の利用状況や特性を踏まえ、柔軟な事業実施を可能としている。そのため、厚生労働省としては、ご要望いただいたスマートフォンの動画機能を利用した読み上げ等は、門前払いする内容ではないと考えている。事業実施に当たっては、お住まいの地域の自治体に相談してもらいたい。

(竹下会長)
 令和4年6月までに社会保障審議会障害者部会で議論していた障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しでは、多くの委員からICTの活用を進めるべきとの指摘があった。ICTの活用は、視覚障害者の代筆・代読の支援でも活用できると思うので、ぜひ、陳情項目(8)の実現を全国で広めることを検討してほしい。

【日常生活用具・補装具等】

(9)日常生活用具の音声体温計や音声体重計、音声血圧計等の支給基準にある家族要件を廃止すること。

(10)読書バリアフリー法の理念である読書環境の充実に向け、日常生活用具の視覚障害者用ポータブルレコーダーの支給範囲の制限を撤廃すること。

(11)日常生活用具の品目に放射能測定器(しゃべる線量計)を加えること。

(12)日常生活用具の品目にスマートフォン等と連携機能があるスマート家電を加えること。

(13)日常生活用具または補装具の品目に、AI技術を活用した多機能の視覚支援装置や暗所視支援眼鏡を加えること。

(自立支援振興室 南谷)
 陳情項目(9)から(13)をまとめて回答する。
 日常生活用具給付等事業は、実施主体である自治体が自らで創意工夫し、地域の障害者のニーズや地域の実情に応じて柔軟に運営することが可能な制度となっている。こういった事業の特性を踏まえて、厚生労働省では用具の要件と用途までを定め、実施主体である自治体が具体的な用具の内容や支給範囲等を定めている。今後も各市町村において適切な給付が行えるよう、障害保健福祉関係主管課長会議等の場において、制度の周知徹底を図りたい。

(逢坂部長)
 陳情項目(9)の家族要件のことについて意見がある。この要望は目の見える家族が同居している場合、これらの用具の給付を認めない実例があるため、その改善を求める要望となっている。もし、同居する家族が仕事等でいない時に体調が悪くなり、体温を測る必要があったら、私たちはどうしたらよいのだろうか。こういったことを踏まえると、回答のように自治体に判断を任せるのは問題があると思う。これはある意味で障害者総合支援法の欠点とも言える。欠点があるのであれば、国が主導して欠点を直すべきではないか。しっかりと検討してほしい。

(竹下会長)
 陳情項目(10)は、読書バリアフリー法と一体的に考える必要があるのではないか。国として、読書バリアフリー法の理念を進める考えがあるのであれば、日常生活用具の給付要件を超えて全国で機器の給付を行う等、しっかりと障害者の読書環境を整える施策を推進すべきだ。

(及川副会長)
 陳情項目(11)のしゃべる線量計は、福島県での原発事故があったことで福島県の視覚障害者団体が開発した企業に要望し、やっとの思いで完成したものである。そして、福島県の団体は「しゃべる線量計があることで、原発のある自治体の視覚障害者が安心して暮らせる」という思いがあり、この要望を出している。私は平成27年2月に日視連の代表として当時の復興大臣に面会し、同じことをお願いして前向きな回答をもらった。ただ、その後、結果的に国は何も動かなかった。これは福島県の視覚障害者からすれば悲しい結果だ。繰り返しになるが、厚生労働省が腹を決めて自治体に指示すれば、しゃべる線量計は日常生活用具になり、多くの視覚障害者は安心するはずだ。ぜひ、前向きに検討してほしい。

(竹下会長)
 私たちとしては、この陳情項目(11)こそ、回答の「地域の実情に応じて柔軟に運営すること」が必要なものだと思っている。例えば、原発を設置している自治体は、福島県以外にもたくさんあるはずだ。そういった原発を設置している自治体こそ、このしゃべる線量計を日常生活用具にすべきではないか。回答では「地域の実情に応じて給付する」ことが指摘されていたが、このしゃべる線量計については、国から各自治体に対して「しっかりと地域の実情を踏まえて給付すべき」といった旨の通知を出してもよいのではないか。そうでもしないと全国の自治体は何も動かない。

(14)視覚障害者向けの音声式のパルスオキシメーター及び非接触式体温計を開発し、日常生活用具に加えること。

(自立支援振興室 南谷)
 厚生労働省では障害者自立支援機器等開発促進事業を実施しており、この事業を通して用具や機器の開発を後押ししている。ただ、ご要望のパルスオキシメーターや非接触式の体温計は医療機器になるため、この事業には該当しない。
 なお、日常生活用具という観点では、視覚障害者用体温計としてパルスオキシメーターを給付している自治体があると聞いている。また、一部の企業は視覚障害者からのニーズに応え、視覚障害者が利用できる音声式体温計の商品開発と販売に力を入れている。厚生労働省としては、こういった自治体や企業の取り組みに期待しながら、各自治体で適切に日常生活用具が給付されるように取り組んでいきたい。

(逢坂部長)
 今回の陳情を行っている令和4年8月は、新型コロナウイルスの第7波がピークとなり、自宅待機者が100万人を超えていると言われている。その中には罹患した視覚障害者も大勢いて、多くの者はパルスオキシメーターの数値を確認することができず困っている。もし、測定結果が分からなかったことで体調を悪化させたらどうなるのか。測定結果が分からないことで不安になりながら療養生活を送らないといけないのか。こういったことを引き起こさないためにも、国や自治体は対応をしっかりと考えるべきだ。

(竹下会長)
 回答の障害者自立支援機器等開発促進事業は、企業から手を挙げないと国は何も動けない制度ではないか。それでは何も解決しない。やはり、国から企業に「こういう機器を作ってほしい」と働きかけることができる制度にすべきではないか。また、国がどうしても動けないというのであれば私たちが動いて、こういった企業に働きかけることもできると思う。ぜひ、どのような方法ならこの要望が実現するか、一緒に考えていくことを検討してほしい。

(15)日常生活用具または補装具の取扱説明書は、視覚障害者が確認できる媒体(音声版、点字版、拡大文字版、テキストデータ版等)で発行できるように助成すること。

(自立支援振興室 南谷)
 この要望は、情報保障の観点から回答する。
 まず、日本規格協会が、「アクセシブルデザイン―視覚に障害のある人々が利用する取扱説明書の作成における配慮事項」を発行しており、この活用によって視覚障害者が確認できる取扱説明書が発行されていると承知している。そして、視覚障害者が利用する用具や機器を開発・販売する企業の中には、音声版、テキスト版、点字データをホームページで公開している企業があると聞いている。厚生労働省としては、こうした取り組みが情報保障の観点からも非常に重要なものだと認識している。一方で、視覚障害者が確認できない媒体でしか説明書がない場合は、製造・販売業者が丁寧に説明することに加え、意思疎通支援事業「代筆・代読支援」等の社会資源を活用することも一つの方法だと考えている。そのため、要望の内容を広めるためには、社会全体で理解を深めていくことが必要だと考えている。

【読書バリアフリー】

(16)「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(読書バリアフリー法)に基づいて、地方自治体が計画を策定し予算化するよう、地方自治体に指導すること。

(自立支援振興室 大江)
 厚生労働省では、読書バリアフリー法や同法の規定により策定された基本計画に基づき、視覚障害者等の読書環境が向上するよう、地域生活支援促進事業「地域における読書バリアフリー体制強化事業」の実施等を通して施策の推進に努めている。地方自治体に対しては、文部科学省と連携しながら、地方自治体での基本計画の策定が進むよう、策定の依頼や留意事項の周知、策定状況の調査等を行っている。
 なお、都道府県・政令指定都市・中核市の令和4年2月時点の策定状況は、策定済みは13自治体、策定作業中が12自治体、策定に向けて検討中が42自治体となっており、令和3年2月の時点からは11%増加している。引き続き、障害保健福祉関係主管課長会議等の場において、全国の自治体に対して周知徹底を図っていきたい。

(竹下会長)
 自治体の基本計画の策定状況はこちらでも把握しているが、都道府県レベルでの策定が進んでいないと感じている。法律ができて3年が経過したが、都道府県の半分が基本計画を作っていないことは大きな問題ではないか。文部科学省にも同じことを要請したが、まずは都道府県に基本計画を作らせるように、国からしっかりと働きかけてほしい。
 そして、回答の地域生活支援促進事業「地域における読書バリアフリー体制強化事業」は、実際に事業を実施している自治体はどの位あるのだろうか。あまり多くないと感じている。ただ、こういった事業を実施している所は好事例を持っているかもしれないので、厚生労働省で事業の実施状況を整理して、好事例の情報発信が必要だろう。もしその情報がいただけるのであれば、日視連から全国の加盟団体に情報提供し、地域での働きかけの材料にしたい。

(自立支援振興室 大江)
 地域生活支援促進事業の実施状況は都道府県・政令指定都市・中核市で25自治体になる。厚生労働省としても少ないと感じているので、引き続き周知していきたいと思っている。なお、事例については、令和4年3月に公開した障害保健福祉関係主管課長会議の資料に「地域における読書バリアフリー体制強化事業の取組事例」(※3)を掲載し、徳島県、高松市、鳥取県の事例を紹介している。

(※3)地域における読書バリアフリー体制強化事業の取組事例(障害保健福祉関係主管課長会議 資料の61ページから68ページに掲載)
https://www.mhlw.go.jp/content/000920900.pdf

【ICTに関する支援】

(17)視覚障害者がICT機器の操作を会得し、円滑に利用できるようにするため、障害者支援センターによる支援や障害福祉サービスによる支援を充実させること。
(18)デジタル化に伴い、視覚障害者にも利用できる機器等の研修会を開催する自治体や当事者団体に対し、開催費用等を助成すること。

(自立支援振興室 大江)
 陳情項目(17)と(18)をまとめて回答する。
 近年のデジタル技術の進展に伴い、ICT機器の利活用が進んでいる中で、障害者のICT機器の利用機会を拡大し、活用能力の向上を図り、情報へのアクセスを円滑にすることは大変重要であると考えている。そのため厚生労働省においては、障害者のICT機器の利用を拡大するために都道府県等のICTサポートセンターの設置、地域におけるICT機器の操作支援に係る経費の補助を行っている。
 また、障害者等のICT機器の利用支援については、令和4年度に「障害者等のICT機器利用支援事業」を創設し、地域における障害者のICT機器の利用に対する相談体制の充実を図っている。

(竹下会長)
 回答のようにICTに関する様々な支援があることは承知しているが、実感では、視覚障害者に対する支援はあまり行われていないと感じている。一方で、私たち自身もICTサポートセンターでどういった支援が受けられるか理解していない部分がある。そこで、例えばICTサポートセンターにおいて、視覚障害者を対象に実施すべき支援内容をメニュー的に設定することはできないのだろうか。地方の加盟団体や会員が地域の自治体に要望活動を行う際に、このような基本メニューがあれば要望が出しやすい。

(吉泉部長)
 令和3年に、全国のICTサポートセンターに対してどのくらい視覚障害者への支援を行っているかを調査した。その結果、都道府県レベルではある程度のところで支援を行っていたが、政令指定都市や中核市レベルになると殆ど実施していないことが分かった。地域に住む視覚障害者がICTサポートセンターに通うことを考えると、広域的な都道府県レベルの支援よりも身近に支援が受けられる市町村レベルの支援の充実が必要になる。そのため、国においては、市町村レベルの支援を充実させてほしい。
 また、ICT機器の操作は画面を見ることを前提に支援を行うことが多いが、視覚障害者は画面が見えない・見えにくいことから、実際の支援を行うには視覚障害者に特化した支援方法が必要になる。ただ、実際にはこの支援方法を熟知した者が少なく、支援者の養成も進んでいない。そのため、視覚障害者の支援に長けている点字図書館等の情報提供施設や視覚障害の当事者団体でICTに関する支援を実施することが多い。そこで、こういった実際に視覚障害者への支援を行っている機関に助成を行ってほしい。そうすれば、視覚障害者へのICT支援がさらに進むと考えている。

(自立支援振興室 大江)
 ご提案をいただき、ありがとうございます。回答した「障害者等のICT機器利用支援事業」が地域によってばらつきがあることは厚生労働省としても問題意識をもっており、今年度の事業の実施状況を整理し、今後、どのような進め方が必要かを検討します。

【医療と福祉の連携】

(19)地域の中途視覚障害者等の支援を充実させるため、スマートサイト等の医福連携体制を全国各地で普及させ実質化させること。また、イギリスにおけるECLOを参考として支援者を養成すること。

(自立支援振興室 大江)
 この要望は障害者への情報提供の観点から回答する。
 まず、全国の視覚障害者情報提供施設において、点字刊行物の発行や視覚障害者用の録音物の制作・貸し出し、さらに中途視覚障害者を含めた地域の視覚障害者からの相談の受け付けを行っている。視覚障害者への情報提供は、これらの施設での対応が重要だと考えている。
 一方で、要望のECLOについては、日視連で研究していると伺っている。厚生労働省としては、こういった障害者支援に関することは積極的に勉強していく必要があると考えているので、差支えがなければECLOの概要や特徴を教えてほしい。

(吉泉部長)
 まず、ECLOの概要から説明すると、眼科と視覚障害者団体が連携して、目の回復が見込めない患者を福祉に結び付けて生活の質の向上に繋げる制度や相談員のことである。目を治療する者の多くは、目が見えないこと、見えにくいことを受け入れることが難しいとされ、本人が障害の受容をするかどうかが重要とされている。例えば、障害を受容することができれば、障害福祉サービスの同行援護を利用して、安心して移動することができる等、生活の質はおのずと向上するはずだ。つまり、眼科で治療を受けている段階から福祉、さらには教育や雇用に繋げる仕組みがECLOの効果の一つになる。なお、眼科医は大変忙しいので、こういった相談の時間をさけないことから、医療と福祉が連携して相談を行えれば、眼科医にとっても負担軽減となるとも言われている。
 そして、このECLOにおいて私たちが重要視しているのが、視覚障害当事者が相談員として活躍することである。これはピアサポートと呼ばれており、相談者の相談内容を親身になって対応できることがメリットになる。そのため、このECLOを日本で広めるためには、日視連自身がもっと勉強する必要があることから、ご指摘の研究事業を行っている。今後もイギリスの実施例や国内の関係者の意見を参考にしながら、日本でどのようにして広めるかを考えていきたい。

(竹下会長)
 ECLOに関連することで補足する。まず、日本眼科医会が中心となって47都道府県でスマートサイトを設置したことになっている。ただ、パンフレットを作ったレベルのところもあり、全国的に温度差がある。一方で、吉泉が説明したECLOのような取り組みは、一部の眼科で先駆的に取り組んでいるところもある。これは日視連としても歓迎している動きだ。この流れの中で、日視連としては視覚障害当事者が相談員になることが大切だと思っていて、例えば、地域の眼科から要請を受けて、日視連の加盟団体のような視覚障害の当事者団体から相談員を派遣することができないかと考えている。
 ただ、ECLOのような支援は、医療側で行うべきか、福祉側で行うべきか、私たち自身もどのような方法で行えばよいか悩んでいる。失明の宣告を受けて、上手く福祉側に繋がらなかったことから自殺してしまった人もいる。私たちとしては、少しでもこういった人がなくなるようにしたいと考えている。今後も、ECLOの実現に向けて、様々なことを厚生労働省に相談していくので協力してほしい。

【歩行訓練】

(20)歩行訓練を全国の視覚障害者が受けられるようにするために、自立訓練(機能訓練・生活訓練)事業所の要件を緩和すること。また、歩行訓練士を国家資格化し、配置基準を定める等して歩行訓練を実施する事業所と歩行訓練士を増やすこと。

(21)歩行訓練を全国の視覚障害者が受けられるようにするために、地域生活支援事業の実施要綱等に配置基準を示したうえでメニューとして明文化すること。

(地域生活支援推進室 今井)
 陳情項目(20)と(21)をまとめて回答する。
 まず、厚生労働省では、平成30年に自立訓練(生活訓練)において視覚障害者向けの歩行訓練ができるよう、要件等の改正を行った。そしてご要望の地域生活支援事業に歩行訓練を組み込むことは、地域生活支援事業自体の予算が少ないことや、歩行訓練を実施している自立訓練との整理の兼ね合いで、地域生活支援事業で実施することは難しいと考えている。特に、国の予算が限られている中で新規事業として歩行訓練を地域生活支援事業に加えることは難しく、厚生労働省としては引き続き自立訓練(機能訓練・生活訓練)において、歩行訓練を実施する事業所を増やすことを目指したい。このことについては、日視連からも良い方法があれば教えていただきたい。
 なお、現在、自立訓練に関する実態を調査しており、調査結果によっては、令和6年度の報酬改定において問題点の改善を図る必要があると考えている。

(片岡副会長)
 実際に歩行訓練を実施している施設としての意見になるが、歩行訓練を必要とする視覚障害者の多くは家に閉じこもっており、こちらから訪問する形で歩行訓練を行うことが多い。この場合、自治体に相談して地域生活支援事業の予算で実施しているが、自治体の予算が少なく、私たちの団体の予算を持ち出す形でなんとか実施できている。訪問での歩行訓練の効果が大きいだけに、地域でしっかりと歩行訓練ができるようにしてほしい。

(地域生活支援推進室 今井)
 まず、自立訓練で訪問訓練が実施できるよう、訪問訓練の報酬を設定している。ただ、自立訓練で訪問訓練を行っているところは少ないと認識している。
 また、実際に歩行訓練の実施状況を見ていると、機能訓練や生活訓練を問わず、そもそも自立訓練で歩行訓練を行っているところは少ない。そのため、厚生労働省としては、歩行訓練を実施する施設が「なぜ自立訓練で実施しないか」を把握する必要があると思っている。例えば、自立訓練では事業所が設置しづらい等、自立訓練で歩行訓練を行いにくい要因を知りたい。日視連でこのことについて何か情報があれば教えてほしい。

(竹下会長)
 質問への答えにはならないかもしれないが、この2つの要望の背景を紹介する。
 まず、この2つの要望は、住まいの近くで歩行訓練が受けられない視覚障害者からの要望が非常に強い。ただ、要望の内容は、どのような形で歩行訓練が行われるべきか明確に整理できていないまま、地方からの声として要望にしている。つまり、これを要望している者は「どのような方法でも良いので、自分の身の回りで簡単に歩行訓練を受けさせてほしい」との思いがあって要望を出している。
 一方で、歩行訓練を行う施設側にも困り事がある。例えば、近くで歩行訓練を受けられる施設がないことから、他県の訓練施設に入所し、宿泊しながら訓練を受ける者もいる。しかし、この方法は訓練施設にとっては採算が合わず、ニーズがあっても対応しきれないことがある。
 これらの背景を整理すると、やはり機能訓練なり生活訓練の自立訓練の施設が身近にないことが問題になるのかもしれない。

(地域生活支援推進室 今井)
 自立訓練(機能訓練)の事業所は、県に1〜2か所しかないところもあり、視覚障害者にとって身近な存在になっていないことは理解している。そして、こういった訓練を地域で負担なく受けられるようにすることも大切だと思っている。自立訓練の在り方に課題があることは承知しているので、引き続き検討を進めたい。

【手帳】

(22)眼球使用困難症を身体障害者手帳の認定基準に加えること。また、身体障害者手帳の交付対象となるまでの間は、眼球使用困難症の者を暫定的に同行援護や日常生活用具の給付対象とすること。

(企画課 鈴木)
 企画課からは、要望の前半の身体障害者手帳に関することを回答する。
 まず、身体障害者手帳の交付の基準は、身体の機能に一定以上の障害があること、その障害が永続するものであることを基本として定めており、現在、視覚障害の認定基準は視力・視野に関する医学的検査の結果に基づいて作成されている。一方で、視力・視野に異常がないものの、眼瞼痙攣等により日常生活に支障をきたすいわゆる眼球使用困難症は、原因等が未だ解明されておらず、客観的な診断基準や医学的検査方法が確立されていないため、現状では、身体障害者手帳における視覚障害の認定の対象は難しいものと考えている。ただし、眼球使用困難症の実態把握は必要と考えていることから、厚生労働科学研究において眼球使用困難症の実態調査を実施しており、令和4年度からは3か年の調査を開始した。今後も、公平かつ適切な障害支援施策が実現できるよう、最新の医学等の進歩の状況、障害種別間のバランス等を踏まえて、認定基準の見直しの検討を進めていきたい。

(自立支援振興室 南谷)
 自立支援振興室からは、後半の日常生活用具の利用に関する部分を回答する。
 日常生活用具の給付対象については、障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業において実施されることから、対象者は障害者・障害児・難病患者になる。眼球使用困難症の者については、身体障害者手帳における視覚障害の認定の対象は難しいとしているため、現時点では日常生活用具の給付対象とするのは難しい。

(障害福祉課 神田)
 障害福祉課からは、後半の同行援護の利用に関する部分を回答する。
 同行援護は、同行援護アセスメント票の要件を満たす者に対して移動に必要な情報の提供や移動の援護等、外出時における必要な援護を行うものとなっている。そのため、身体障害者手帳の所持を給付の要件とはしていないため、眼球使用困難症をもってサービスの対象外とすることはない。

(片岡副会長)
 確認だが、身体障害者手帳を持っていなくても、アセスメント票の要件に見合えば眼球使用困難症の者でも同行援護を利用できるのか。

(障害福祉課 神田)
 利用は可能です。

(竹下会長)
 回答をいただき、納得できた部分と納得できていない部分がある。それこそ、眼球使用困難症を身体障害者手帳の対象にするまで、様々な検討が必要なことから大変時間がかかることは理解している。ただ、それまでの間に、眼球使用困難症の者には要望の障害福祉サービスの利用ができるようにすべきだと考えている。例えば、羞明の者は補装具として遮光レンズの給付が受けられるはずだし、難病の者も一部の障害福祉サービスは受けられるはずだ。こういった支援がないと、眼球使用困難症の者は誰からも支援の手が差し伸べられず、困ったままでいることになる。

(自立支援振興室 南谷)
 確かに遮光レンズについては難病の患者には支給している。

(竹下会長)
 そうなると、眼球使用困難症を難病に指定すれば、私たちの要望を解決することができるのではないか。どうしたら眼球使用困難症を難病に指定することができるのか。

(企画課 鈴木)
 いわゆる難病の範囲は、障害者総合支援法で対象とする疾病の要件で考えると、治療方法が未確立であること、長期の療養を必要とすること、客観的な診断基準が定まっていること、この3つの要件に該当することが必要になる。そのため、回答で説明した調査では、眼球使用困難症がこの要件に入るかどうかを含めて多角的に調査している。現時点では、眼球使用困難症が難病の指定になるのかどうかは明確に回答ができないが、厚生労働省としては、眼球使用困難症の者が大変な思いをしながら日常生活を送っていることは重々承知しているので、引き続き検討を進めていきたい。

【障害福祉サービス全般】

(23)障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の第10条により、貴省が所管する施策において視覚障害者への情報保障をさらに進めるための措置を講じ、あるいは予算を確保すること。

(自立支援振興室 大江)
 これまで厚生労働省においては、障害者総合支援法等に基づいて障害者の意思疎通支援の充実のため施策を講じてきた。また、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法においては、意思疎通支援者の確保や養成、資質の向上が明記されている。さらに、令和4年6月に社会保障審議会障害者部会でとりまとめた報告書では、障害者のICT利用に関する支援を充実させることが明記されている。
 厚生労働省としては、これらを踏まえ、障害者に対して必要な支援が行えるよう予算の確保等に努めていきたい。

(竹下会長)
 回答だけ聞くと、厚生労働省が障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の10条に基づいて施策を推進するのは、意思疎通支援やICT利用の拡充だけだと聞こえる。果たしてそうなのだろうか。私たち自身もこの法律によって、どこまで視覚障害者の情報アクセシビリティやコミュニケーションに関することが向上できるかは分かっていない部分がある。ただ、厚生労働省が所管する分野を考えた時、意思疎通支援やICT利用の拡充だけに留める必要があるのか。この法律によって厚生労働省ができることをもっと探してほしい。

(24)障害福祉サービスを行う人材を確保し、視覚障害者のニーズに見合った人材を育成すること。

(障害福祉課 神田)
 この要望は、同行援護従業者の養成の観点から回答する。
 同行援護従業者の養成は、各都道府県において地域の実情を踏まえた研修が行われている。厚生労働省としては、各都道府県に対して同行援護従業者養成研修にかかる費用の補助を行い、従業者の確保、質の向上に取り組んでいる。
 なお、同行援護従業者養成研修カリキュラムについては、令和3年度厚生労働行政推進調査事業費補助金・障害者政策総合研究事業「同行援護の担い手となる支援者の養成のための研究」(※4)の調査において、従業者の資質を向上させる観点からカリキュラムの改正を行うべきとの結果が出ている。そのため、カリキュラム改正に向けた検討作業を進めている。

(※4)同行援護の担い手となる支援者の養成のための研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/158100

(25)障害福祉サービスの一部負担金の算定基準は所得によって区分されているが、この区分を細かく分けて、所得の実情に合った負担となるようにすること。

(障害福祉課 岡本)
 要望として承り、今後の検討材料の一つにさせていただく。

(竹下会長)
 陳情項目(25)は、厚生労働省として答えづらい内容であることは理解している。今後は、誰が、どのように困っているかを整理した上で、もっと具体的な要望を出したい。

(26)各自治体の障害福祉窓口担当者の専門性を確保するため、スキルアップを助成すること。

(障害福祉課 橋本)
 要望の「障害福祉窓口担当者」がどの範囲を指しているかが明確でなかったため、障害者の相談支援事業として回答する。
 まず、各自治体では障害者に向けた相談支援事業を実施しており、必要な経費は地方交付税により支払われ、各自治体において必要な人員配置や人材養成等を行っている。各自治体において必要な相談支援体制を作ることは重要だと考えているので、引き続き、厚生労働省としての取り組みを進めていく。

(竹下会長)
 補足でこの要望の背景を説明する。地方の自治体は、窓口に出てくる担当者が数年で入れ替わることが多い。そのことにより、窓口での対応力に大きな差が生まれ、全国からの不満の声に繋がっている。ここで重要なのは、新しく配属された担当者への研修をいかに充実させるかだろう。この研修は地方の自治体が実施することなので、厚生労働省に要望しても仕方がないことなのかもしれないが、各自治体が積極的に研修を実施するよう、厚生労働省から各自治体に指導してほしい。

(片岡副会長)
 自治体の窓口対応を考えた時、新たに身体障害者手帳を渡す際は、しっかりと制度の説明や頼れる施設の紹介等をしてもらいたい。例えば、多くの自治体では手帳を渡す際に福祉のしおりを一緒に渡すが、視覚障害者はその福祉のしおりを貰っても一人では読むことができない。少しの時間でも良いので、福祉のしおりに書いてある便利な情報を教えてもらえれば、その視覚障害者の生活はだいぶ楽になるだろう。陳情項目(19)のECLOの話にも繋がるが、障害者になったばかりの人に対する最初の情報提供は重要なので、窓口対応はしっかりとしてほしい。

【外出保障】

(27)施設利用者が地域生活支援事業の移動支援が利用できることを周知徹底すること。

(自立支援振興室 澤田)
 施設利用者については、原則として施設側で移動の支援を行うべきと考えている。ただし、施設サービスと明確に切り分けができるものに関しては、地域生活支援事業の移動支援事業の対象となっている。なお、この判断については、個々の利用者の状況や意向等を踏まえて各自治体において判断されるものとなっている。厚生労働省としては、このことが各自治体で適切に行われるよう、障害保健福祉関係主管課長会議等の場において、自治体に対して引き続き周知していく。

(竹下会長)
 まず、施設利用者が移動支援を使えるようになったことは大きな前進だ。ただ、施設利用者が移動支援を使えるようになったことを自治体の担当者等が知らないことが多く、施設に入所する視覚障害者が移動支援を使いたくても使えないことがある。回答のとおり、自治体に周知徹底することは大切だと理解しているので、引き続き、厚生労働省からの働きかけを強めてほしい。

(28)視覚障害者がどの地域でも同行援護を安定的に利用できるようにするため、空白地区の自治体に対し、必要な同行援護事業所を育成し従業者を養成すること。そのために報酬の見直しも実施すること。

(29)同行援護従業者の資質を向上させ、コロナ禍であっても必要な移動に対してサービスを行うことができるように自治体を指導すること。

(障害福祉課 神田)
 陳情項目(28)と(29)をまとめて回答する。
 同行援護事業所の整備については、市町村及び都道府県が地域の障害者の意見を聞きつつ、それぞれの地域の実情を把握した上で、サービスの必要量を見込んだ障害福祉計画に基づき実施されるものである。そして、同行援護従業者の養成については、各都道府県において地域の実情を踏まえた研修が行われていると承知している。厚生労働省としては、各都道府県に対し同行援護従業者養成研修にかかる費用の補助を行い、従業者の確保及び資質の向上に取り組んでいる。

(30)同行援護従業者養成研修応用課程において代筆・代読支援のカリキュラム拡充を行い、応用課程修了者を採用する事業所への加算を設定すること。

(障害福祉課 神田)
 令和4年度障害者総合福祉推進事業において「代筆、代読に関する効果的な支援方法に関する研究」を実施し、全国の自治体でどのようにしたら視覚障害者への代筆・代読の支援が進むのかを研究することになっている。この中では、代筆・代読の支援を担う者として、全国の同行援護従業者の活用が焦点となっており、要望の代筆・代読に関するカリキュラムの拡充も検討事項の一つとなっている。厚生労働省としては、この調査結果を踏まえて、必要な施策の推進を検討していきたい。

(31)公共交通機関の利用が不便な地域において、同行援護従業者の車の利用を認め、移動・待機時間を報酬算定の対象に加えること。

(障害福祉課 神田)
 利用者を車両で運送する時間は道路交通法に定める安全運転を行う必要があり、利用者への介助を行うことができないため、同行援護の報酬上の評価はできないと考えている。厚生労働省としては、このようなことから、車両での移動は福祉有償運送の制度において手当をすることが適当と考えている。なお、重度訪問介護の利用者に対して車両が停車・駐車した状態で緊急的に介護を行うことは、報酬対象に加えている。

(竹下会長)
 この回答は毎年変わらない。どうにかして同行援護で車を利用することはできないのか。

(障害福祉課 神田)
 この要望を実現しようとなると、国土交通省や警察庁等の他省庁にまたがる部分があり、厚生労働省だけでは解決できない部分がある。

(竹下会長)
 回答の重度訪問介護において車を利用している際の介護が報酬対象になったことは、車の利用を求める私たちにとっては、小さな穴かもしれないがやっと壁に穴を開けることができたと思っている。他省庁にもまたがる等、この壁はなかなか突破できない部分もあると思う。ただ、この問題が解決できるよう、関係省庁との調整を含め、厚生労働省には引き続き頑張ってもらいたい。私たちも協力します。

(32)通勤や通学、子供の通園等で同行援護の利用ができるよう、同行援護の支援適用範囲を広げるか、新たな福祉制度を新設すること。

(障害福祉課 神田)
 障害者の支援は、生活の場における障害福祉サービスによる支援だけではなく、職場や教育機関等の場での支援も重要と考えている。そのため、障害者の就労や学習等を支援するための取り組みを就労や教育等を支援する関係省庁と連携して行っている。
 なお、障害者総合支援法に基づく介護給付費の対象は、居宅や外出時における日常生活・社会生活を支えるために必要なものを対象としており、営業活動等の経済活動に関する外出、通年かつ長期にわたる外出等は支給対象外となっている。個人の経済活動に要する費用を負担すべきかどうか等の課題については、障害者差別解消法に基づき企業や学校等に合理的配慮が求められていることから、介護給付費の対象外としており、慎重に検討すべきことと考えている。

(竹下会長)
 通勤については、令和2年10月より「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」が開始したことで、大きな前進をしたと考えている。ただ、通学や子供の通園で同行援護が利用できないことは、何とかして解決したいと考えている。そのため、内閣府の障害者政策委員会で議論している第5次障害者基本計画に対して、通学や子供の通園で同行援護が利用できるようにすべきと意見を出した。ただ、教育側の文部科学省からは明確な回答がなかった。この文部科学省の対応と今回の厚生労働省からの回答を聞いていて強く思うのは、厚生労働省と文部科学省で責任のなすり合いをしているだけで、根本的な解決に向かっていないことだ。両省が連携する必要がある。

(障害福祉課 神田)
 子供の通園の部分で、親が障害者であり移動の支援を求めているのであれば、居宅介護の家事援助において、育児支援の範囲で移動の支援が受けられることになっている。このことは、令和3年7月12日に事務連絡「障害者総合支援法上の居宅介護(家事援助)等の業務に含まれる「育児支援」の取扱いについて」(※5)を発出している。ただ、日視連と今回の意見交換をしていて、自治体の担当者がこのことを知らない可能性があると感じた。このことは、今後の障害保健福祉関係主管課長会議等の場において周知することを検討したい。

(※5)障害者総合支援法上の居宅介護(家事援助)等の業務に含まれる「育児支援」の取扱いについて
https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/258285.pdf

(33)介護保険対象者が通院する際に、同行援護が利用できることを周知徹底すること。

(障害福祉課 岡本)
 同行援護は、障害福祉サービスの支給決定を受けた障害者等が利用可能なサービスとなっている。しかし、ご要望の「介護保険対象者が通院する際に、同行援護が利用できること」は自治体によって温度差があると思っている。今回のご要望を踏まえ、適切に周知を行っていきたい。

(竹下会長)
 私たちも、厚生労働省が繰り返し周知していることは承知している。ただ、全国各地の自治体では、依然として65歳を過ぎたら介護保険が優先だと説明する担当者が多い。自治体の担当者に介護保険対象者でも同行援護を使えると理解させるには、どのようにしたらよいだろうか。

(障害福祉課 岡本)
 厚生労働省としても何故自治体の担当者が理解しないのか、頭を悩ませている部分がある。厚生労働省の担当レベルでは、自治体の実態を調査し、その調査結果によって必要な対応を検討するのはどうかと考えている。このことについて、日視連からも良いアイデアがあれば、後日でも構わないので教えてほしい。

(34)同行援護における地域間格差をなくし、利用時間の制限を撤廃させ、個人のニーズに合った支給量が確保されるようにすること。

(障害福祉課 神田)
 まず、障害福祉サービスは、それぞれの地域の実情を把握した上で、サービスの必要量を見込んだ障害福祉計画に基づき、支援体制の構築を図る必要がある。同行援護をはじめとした訪問系サービスの支給決定に当たっては、申請があった障害者等の障害支援区分のみならず、一人一人の事情等を考慮し、支給量を決定するものとなっている。引き続き、全国の自治体で適切な決定が行われるよう、障害保健福祉関係主管課長会議等の場において周知を図っていく。

(竹下会長)
 まず、国庫負担基準の制度はまだ残っているのだろうか。この基準に従って計算すると、同行援護の時間は50.4時間になると思う。

(障害福祉課 神田)
 制度としては残っている。同行援護は区分に関わらず13,270単位を示していて、時間数までは示していない。

(竹下会長)
 私たちとしては、この国庫負担基準を全国の自治体に理解してもらいたいと思っている。まず、この国庫負担基準から計算された約50時間は、同行援護の支給時間の目安の一つとして認識されていて、私たちも最低でも50時間は支給してほしいと思っている。以前と比べて50時間未満の支給時間しかくれないところは減ってきているが、まだまだ時間数が短い自治体は多い。最終的には要望の利用時間の制限の撤廃を望んでいるが、少なくとも、地域の視覚障害者が満足できる時間数は与えられるべきだと思う。

(35)同行援護の利用者の自己負担を廃止すること。

(障害福祉課 岡本)
 障害福祉サービスの利用者負担については、所得に応じて一月当たりの負担上限額を設定しており、利用者にとって過剰な負担が発生しないようにしている。
 なお、利用者負担の在り方については、障害者総合支援法の趣旨や、これまでの利用者負担の見直しの経緯、家計の負担能力、他の制度とのバランス等を踏まえ、制度の持続可能性や障害福祉サービスに対する国民への理解等を留意しつつ、慎重な議論が必要なものと考えている。

(竹下会長)
 回答の趣旨は理解しており、自己負担を廃止することは非常にハードルが高いと思っている。ただ、全国の視覚障害者から毎年この要望が挙がってきていることは、生活が苦しい視覚障害者が多いことを意味している。この点だけは理解してほしい。

【ロービジョンケアに関する診療報酬改定】

(36)現行の視能訓練には、「斜視視能訓練」と「弱視視能訓練」があるが、これらに「ロービジョン視能訓練」を新たに追加し、ロービジョン検査判断から引き続いて実際のロービジョン訓練が受けられるようにすること。

(医療課 松平)
 ロービジョン検査判断料は、身体障害者福祉法に定める障害程度の視覚障害を有する者に対して眼科検査を行い、その結果を踏まえ患者の保有視機能を評価して、この結果に応じた適切な視覚的補助具・補装具の選定や、生活訓練や職業訓練を行っている施設等との連携を含めた指導管理に対しての評価を行っているものである。ロービジョン訓練の評価の在り方については、診療報酬といった医療領域の部分を考慮しながら、慎重に検討する必要があると考えている。

(竹下会長)
 この要望は、眼科の先生方からも同じ要望を出している。視覚障害当事者だけが要望していることではない。要望の「ロービジョン視能訓練」の在り方を検討する場だけでも作ることはできないのか。

(医療課 松平)
 検討の場を作るかどうかの回答は差し控えるが、どのようなロービジョン訓練があって、どのような評価が必要になっているのかは気になるので、詳しい情報があったら教えてほしい。今の枠組みでは、回答したロービジョン検査判断の中で補装具の選定を行う等、医学的なリハビリテーションという形で医療保険の中で対応している。この枠組みで対応しきれない個別事例等があり、新たな枠組みが必要との認識になれば、検討の余地はあると思う。

(竹下会長)
 御指摘はごもっともなので、実際にロービジョン訓練が必要な患者にとってこの基準がないことで問題になる点等を、私たちの方でも整理したいと思う。

【医療】

(37)入院中に居宅介護等のヘルパーを利用できるようにすること。

(障害福祉課 神田)
 入院中の看護は、当該保険医療機関の看護要員のみによって行われることになり、当該保険医療機関に入院する患者の負担による付添看護は行わないことになっている。一方で、視覚障害者を含め意思疎通をすることに支障がある障害者等が入院中に意思疎通支援を必要とするときは、当該患者へのコミュニケーション支援に熟知している支援者が入院中に付き添うことは差し支えないとの通知を平成28年6月28日に「意思疎通を図ることに支障がある障害者等の入院中における意思疎通支援事業(地域生活支援事業)の取扱いについて」(※6)として発出している。この通知の内容については、直近では、新型コロナウイルス感染症による障害者への医療提供体制を強化するために、令和3年1月27日に事務連絡「障害児者に係る医療提供体制の整備について」(※7)を発出、令和3年9月1日に事務連絡「特別なコミュニケーション支援が必要な障害児者に対する医療機関における対応について」(※8)を発出し、全国の自治体や医療機関等に周知している。今後も、このような周知を通して、自治体や医療機関等で適切な判断が行われるように努めていきたい。

(竹下会長)
 視覚障害者は意思疎通の支援も重要だが、移動の支援も必須になることを忘れてはならない。そのため、この両面を支援してくれる者を必要としており、様々な理由で病院のスタッフでは対応できないため、要望の居宅介護等のヘルパーを希望している。以前よりは前進していることは理解しているので、引き続き、要望の実現に向けて頑張ってほしい。

(※6)意思疎通を図ることに支障がある障害者等の入院中における意思疎通支援事業(地域生活支援事業)の取扱いについて
https://www.mhlw.go.jp/content/000728548.pdf
(※7)障害児者に係る医療提供体制の整備について
https://www.mhlw.go.jp/content/000729230.pdf
(※8)特別なコミュニケーション支援が必要な障害児者に対する医療機関における対応について
https://www.mhlw.go.jp/content/000828155.pdf

(38)医療機関において、急患時の検査・手術・入院の説明、書類の代筆・代読を促進すること。

(総務課 島田)
 厚生労働省としては、障害者が安心して医療を受けられる体制を整備することは非常に大切なことと認識している。そのため、障害者差別解消法の第11条「事業者のための対応指針」に基づき、障害者に対して不適切な差別的取り扱いを行わないことや、社会的障壁を取り除き、必要かつ合理的な配慮を行うため、平成28年1月に「障害者差別解消法 医療関係事業者向けガイドライン」(※9)を公開した。この中で、サービスの提供に当たっての情報提供等に関する配慮や工夫として、必要に応じて代読・代筆を行うことを求めている。このガイドラインは、全国の都道府県を通じて各地の医療機関に周知していることから、引き続き、この取り組みを進めていきたい。

(竹下会長)
 病院に行って代筆・代読のお願いをしたら断られたとの事例は、全国の視覚障害者から多数寄せられている。それも、回答の取り組みがあった後も、代筆・代読の拒否事例は減っていない。つまり、回答の取り組みが上手く機能していないと言え、医療機関等へのさらなる周知や指導が必要になっている。また、障害者差別解消法の基本方針の改定に向けて議論を行っている最中だが、事業者での取り組みが進まないなら、国の基本方針や厚生労働省の対応要領、さらにはこのガイドラインのような対応指針を必要に応じて改正すべきだと思う。
 なお、私自身の経験だが、医療機関で代筆・代読を受けることになった際、付添者である家族の顔を見ながら、代筆・代読の確認を取ろうとする医者や看護師がいる。代筆・代読をお願いするのは視覚障害の本人なのだから、こういった確認は止めてほしい。

(※9)障害者差別解消法 医療関係事業者向けガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sabetsu_kaisho/dl/iryou_guideline.pdf

(39)医療費の自己負担につき、障害者医療扶助が使える場合は、窓口での支払いをしなくても済むように法制化すること。少なくとも、窓口での支払いをしなくてもよいようにしている自治体に課せられているペナルティーを撤廃すること。

(国民健康保険課 柴田)
 この要望の後半部分を中心に回答する。
 国民健康保険においては、保険者の負担する保険給付費等に対して国が公費を投入しているところ、自治体による独自の医療費助成によって窓口の負担が減額される場合、一般的に医療費が増加する傾向にあることから、医療費助成を行っている自治体に対する公費負担も増加することになる。そのため、自治体による医療費助成により医療費が増加している分については、性格上、その自治体が負担するものとして、国の公費負担を減額調整している。この減額調整措置については、限られた財源の公平な配分及び国庫財政に与える影響等の観点から、自治体の医療費助成によって増加する医療費分に係る公費負担を減額調整しているものであることをご理解いただきたい。

(竹下会長)
 この要望は、医療費の償還払いを病院窓口で代行してくれないことが不満で、その改善を求めるものである。視覚障害者としては、一度窓口で自己負担を支払い、自治体の窓口に行って、書類を書いて自己負担を補助してもらうことの負担感は、他の障害者よりも強い。何か上手い解決策を見つけてほしい。

【療育】

(40)視覚障害児の早期発見のためのスクリーニングテストを、乳幼児検診等で実施すること。

(母子保健課)
 市町村が実施する3歳児健康診断においては、家庭での視力検査を併用して目の疾病及び異常を確認することになっている。また、その後の適切な治療等への結び付けを含めた一連の視覚検査体制の面では、地域の医療関係団体との連携が重要となるため、令和4年2月28日に眼科医等の関係団体に対して事務連絡「3歳児健診の視覚検査に関する体制整備への協力について(依頼)」(※10)を発出し、協力をお願いした。
 さらに、令和4年度から市町村において屈折検査機器を含め各種検診に必要な備品等の整備等に活用できる補助事業を創設して、市町村の取り組みを促している。また、令和4年度の調査研究事業においては、3歳児健康診断における視覚検査の実施体制に関する実態調査研究を実施しており、同検査の実施に向けた自治体向けの手引きの作成や、要精密検査となった児童の家族に配布するリーフレット等の作成を行う予定となっている。

(竹下会長)
 厚生労働省としては、視覚障害児の早期発見のためのスクリーニングテストを実施していると考えてよいのか。

(母子保健課)
 回答の通り、実施しているものと考えている。回答では3歳児検診の中で行っていることを紹介したが、3〜4か月検診や1歳6か月検診においても、問診票の中で目の異常を確認する項目が設けられている。また、乳幼児健康診査の身体診察マニュアルの中では、具体的な例を交えて目の診察も行うことを示している。そのため、小児科の医師が行う検診の中で、要望のスクリーニングテストが行われていると認識している。

(竹下会長)
 回答は私たちの認識とは少し異なっている。私たちとしては、視覚障害児の早期発見のためのスクリーニングテストが行われていないと思っている。スクリーニングテストが上手く実施されていないために、もっと早い段階で視覚障害であると診断されるべき子供が多く、学齢期になってやっと視覚障害であることが分かった事例が多数寄せられている。ただ、回答を踏まえると、もっと実態把握が必要な部分もあると感じた。要望を出した団体と連携しながら、どうしたら要望が実現できるか、考えていきたい。

(※10)3歳児健診の視覚検査に関する体制整備への協力について(依頼)
https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/news/refractometry.pdf



02 厚生労働省(職業関係)



1.日時
 令和4年8月25日(木) 15時30分〜17時00分

2.場所
 オンライン

3.出席者
(1)日本視覚障害者団体連合
                      会長  竹下 義樹
                     副会長  及川 清隆
                     副会長  片岡 美佐子
                    常務理事  橋井 正喜
                    事業部長  逢坂 忠
                    情報部長  吉泉 豊晴
                     事務局  木村 幸平
                     事務局  佐藤 絵里

(2)厚生労働省
 人材開発統括官
  特別支援室                   山本
 職業安定局
  障害者雇用対策課                木村
 社会・援護局障害保健福祉部
  障害福祉課                   野原
 医政局
  医事課                     担当者名不明
 保健局
  医療課                     神谷
 老健局
  高齢者支援課                  山畑
 労働基準局
  労働関係法課                  担当者名不明

4.陳情項目、回答、意見交換

【あはき 雇用拡大】

(1)訪問マッサージ業者による視覚障害者の不当解雇が続いているため、国は事業者への適切な指導を行うこと。

(労働関係法課)
 まず、視覚障害者の不当解雇に特化した取り組みは、厚生労働省では実施していない。法律で禁止されている解雇が行われているのであれば指導の対象となるが、それ以外については、不当なのかどうかを判断することが難しい事例もあるため、場合によっては司法の判断を仰ぐことになる。不当解雇については、個別性が強いことから、厚生労働省が個別の判断を行うことが難しいことを理解してほしい。
 なお、会社と労働者の間での紛争解決を促す制度もあるので、このような制度の活用を通して不当解雇の解決等を図っていくことも重要だと考えている。

(逢坂部長)
 新型コロナウイルスの感染拡大以降の視覚障害あはき師の就労状況を調査した結果を見ると、企業に勤めるヘルスキーパーであれば配置転換であったり、あはきとは関係のない職場に異動させられた事例が確認できている。これらの者は、我慢しながら仕事をしている者も多いが、こういったことをきっかけに解雇通告を受けた者もいると聞いている。この要望にはこのような背景があり、働いている視覚障害あはき師にとっては切実な問題であることを理解してほしい。

(2)視覚障害者の職域拡大のために、公的機関及び民間企業が視覚障害あはき師をヘルスキーパーとして優先的に採用すること。

(障害者雇用対策課 木村)
 回答は民間企業での就労を前提に回答する。公的機関の部分は人事院や他省庁の管轄になる部分があるため回答は差し控える。
 厚生労働省としては、働く意欲のある障害者の能力や適性を十分に発揮することが重要と考えていることから、ハローワークにおいてその能力や適性が活かせる職場を紹介できるようにしている。また、要望の中の「職域の拡大」については、高齢・障害・求職者雇用支援機構が作成した「視覚障害者の雇用事例集 支援機関を活用して職域拡大に取り組む」(※1)を活用して、事業主の理解を深めつつ、視覚障害者の特性や技能を生かせる職種が拡大できるよう、要望のヘルスキーパーだけでなく、資料作成の事務職等も含め、ハローワークでの紹介の幅を広げる努力を行っている。今後も、個々の求職者の希望等を踏まえて雇用の促進に繋げていきたい。

(竹下会長)
 回答は民間企業に関しての取り組みだったが、私たちが最も求めたいのは、公的機関でヘルスキーパーを優先的に採用することだ。例えば、外務省のように視覚障害者をヘルスキーパーとして雇う等、先駆的な取り組みを行っている公的機関がある。こういった好事例を広める等、もっと努力をしてほしい。障害者雇用対策課が障害者雇用を進めている立場であれば、公的機関での障害者雇用を真剣に考えるべきだ。

(※1)視覚障害者の雇用事例集 支援機関を活用して職域拡大に取り組む
https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/ca_ls/casestudy_sonota_01.html

(3)視覚障害者の病院マッサージ師、高齢者施設マッサージ師の雇用を促進すること。

(障害者雇用対策課 木村)
 厚生労働省では、ハローワーク等により就労を希望する障害者を含む求職者の意向を踏まえて適切な就労が実現できるよう、各種取り組みを進めている。ただし、要望の病院や高齢者施設のマッサージ師といった限定的な職種の拡大を民間に促すことは行っていない。

(逢坂部長)
 この要望の背景を説明する。まず、病院のマッサージ師は募集が少ない上、給料が少ない等、以前より課題がある。また、高齢者施設は機能訓練指導員の募集は多いが、マッサージ師の募集は非常に少ない。つまり、これらの病院や施設で働く視覚障害者の処遇は全般的に悪いことから、処遇を改善してほしいという思いがあり、この要望を出している。障害者雇用対策課の所管を超えてしまうが、例えば診療報酬を上げる等をして病院や高齢者施設で働いている者の処遇を改善してほしい。また、高齢者施設のマッサージ師を雇用する際は視覚障害者を優先的に雇用する制度等も検討してほしい。

(及川副会長)
 病院のマッサージに関する診療報酬は何十年と単価が変わっていない。そのため、病院としての利益が少ないので、病院内にマッサージ師を配置することに消極的になっており、視覚障害あはき師が働きにくくなっている。診療報酬を上げることは視覚障害あはき師の処遇を改善させる一つの方法だと思うので、ぜひ検討してほしい。

(障害者雇用対策課 木村)
 診療報酬等は所管が異なるため、当課では回答ができない。ただ、頂いたご意見は視覚障害者の雇用において重要なことだと思うので、担当部局に報告する。

【雇用・就労に関する支援】

(4)視覚障害者の一般就労に対応したジョブコーチを育成し、地域を問わず利用できるようにすること。

(障害者雇用対策課 木村)
 厚生労働省としては、ジョブコーチが十分に確保され、視覚障害を含めた障害者の就労支援が進むよう、高齢・障害・求職者雇用支援機構や民間の研修実施機関を活用し、ジョブコーチの育成に努めている。
 なお、令和2年度に開催した「職場適応援助者養成研修のあり方に関する研究会」においては、特定の障害種別に特化したジョブコーチの養成は、その障害種別に特化した専門的な人材を一から育てるよりも、その障害種別に特化した支援施設の職員等に専門スキルを付与することが効果的との意見があった。そのため、視覚障害を含めた特定の障害者への支援を行っている団体に対し、ジョブコーチ養成研修の受講を促している。
 今後もジョブコーチの養成が進むよう、施策を推進していきたい。

(吉泉部長)
 まず、ジョブコーチに関する現状を整理すると、全国的に視覚障害者への支援ができるジョブコーチは非常に少ない。また、これらの者は大都市圏に集中していて、地方には殆どいない。そのため、この要望には、視覚障害者への支援ができるジョブコーチが別の地域に訪問して支援を行えるようにすることも含まれている。別の地域に訪問するとなると交通費等のコストが発生するが、これを利用者が負担するわけにはいかないので、例えば、国で補助する等の支援が必要だと考えている。
 また、数は少ないが、視覚障害者がジョブコーチになり、支援を行っている者がいる。ただ、この者が単独で利用者の所に訪問するのは難しく、移動の支援が必要となるので、こういった者への支援も必用だと考えている。

(障害者雇用対策課 木村)
 ジョブコーチが大都市圏に集中していて地方に少ないことは、厚生労働省としても問題意識を持っている。そのため、回答した障害者への支援を行っている団体に対する周知は、地方を意識して行っている。ただ、まだ始まったばかりなので、地方でどれだけ広がるか分からない部分もある。引き続き、ご指摘の点を踏まえて取り組みを進めていきたい。

(5)就労を希望する視覚障害者が希望した職業で安定して働き続けられるよう、人的支援、支援機器の導入、歩きやすい環境の整備等により雇用環境を改善すること。特に、テレワークの推進に伴う本人認証やセキュリティ対策については、視覚障害者が利用できる内容に改めること。

(障害者雇用対策課 木村)
 後半の本人認証やセキュリティ対策の部分は所管外になるため、要望の前半のみを回答する。
 まず、要望の「人的支援」については、ハローワークが中心となって地域の関係機関が連携し、就職から職場定着まで一貫した障害者向け勤務支援を行っている。また、障害者職業センターでは、職場にジョブコーチが訪問し、障害者の能力や障害特性を活かした担当業務の選定や働きやすい職場環境の構築等について、障害者及び事業者双方に対して支援を行っている。さらに、障害者就業・生活支援センターが関係機関と連携にすることによって就業と生活の一体的な支援を実施している。
 また、要望の「支援機器の導入」「歩きやすい環境の整備」については、中央障害者雇用情報センターより事業主に対して、車両やコミュニケーションを容易にする機器の無料貸し出しを行っている。さらに、ハローワークの職員が職場に出向き、障害者の能力や障害特性を踏まえた担当業務の選定や配置転換、働きやすい環境の整備の助言を行っている。

(吉泉部長)
 人的支援にしろ、環境整備にしろ、厚生労働省が進める納付金制度に基づく助成金はあくまでも事業主に対する助成である。この場合、本当に働いている視覚障害者への支援に繋がるのかが疑問である。例えば、ある視覚障害者が働く上で何らかの支援機器が必要だと感じ、職場にその支援機器の導入を求めても、その事業主が必要性を理解してくれないと支援機器を導入してくれない。また、回答のような支援の申請は複雑で、事業主側が前向きに申請しないとも言われている。つまり、回答のことを進めるには、事業主の理解の推進と手続きの簡素化が必要となっている。この点は改善してほしい。

(竹下会長)
 労働政策審議会障害者雇用分科会では、障害者雇用促進法の改正について先日まで議論を行い、改善すべき点をまとめた意見書を取りまとめた。その中では「雇用の質の向上に向けた事業主の責務の明確化」が指摘されていることから、今後、働いている障害者への就労継続支援が重要になると考えており、現行の制度をしっかりと活用することが求められている。また、意見書では、今後の雇用納付金の制度は、雇用調整金をカットして、助成金を充実させる旨を記載している。ただ、助成金を拡大したとアピールするばかりでなく、実際に雇用主に助成金等を使ってもらうようにしなくてはならない。私たちとしては、今のタイミングが要望内容を実現するためにチャンスだと思っているので、意見書の内容を踏まえて、厚生労働省としての取り組みをしっかりと進めてほしい。

(6)多様化の時代に入り、あはき業が困難となりつつあることを踏まえ、その人にあった適正な職業選択ができるよう、あはき業に変わる新職業の開発を進めること。

(障害者雇用対策課 木村)
 陳情項目(2)と重複するが、ハローワークにおいてその能力や適性が活かせる職場を紹介できるようにしていることや、高齢・障害・求職者雇用支援機構が作成した「視覚障害者の雇用事例集」を活用して、事業主の理解を深めつつ、視覚障害者の特性や技能を活かせる職種が拡大できるよう新たな求人の開拓に努めている。

(逢坂部長)
 この要望は、視覚障害あはき師の実情を踏まえた回答がほしかった。陳情項目(2)では、病院や高齢者施設に勤める視覚障害あはき師が厳しい環境に置かれていることを指摘した。ただ、これ以外にも企業に勤めるヘルスキーパー、訪問型の会社に勤務する者、さらには自宅で開業する者等、多くの視覚障害あはき師はあはきの仕事で生計を立てることが厳しくなっている。そこで、あはきに代わる新職業を開発することを国に求めている。私たちも視覚障害あはき師が活躍できる新たな職業を探していくが、国にも協力してほしいというのがこの要望の趣旨である。

(竹下会長)
 例えば、あはきの免許を持っている視覚障害者がハローワークに出向き、「あはきでは生計が立てられないから、あはき以外の仕事を紹介してほしい」とお願いすると、ハローワークの相談員からは「あなたは視覚障害者であはきの免許を持っているのであれば、あはきの仕事を紹介する」と言われてしまう。つまり、ハローワーク側は、視覚障害者が就労できる新しい仕事を探してくれない。これが実態で、回答のような支援は必ずしも行われていない。こういった実態を踏まえて、回答の施策を推進すべきではないか。

(障害者雇用対策課 木村)
 ご指摘の実態があることは把握していなかった。実態把握をすることは必要なのかもしれない。課内に持ち帰って検討します。

(7)視覚障害者に特化した職域拡大のために、公務部門におけるヘルスキーパーや電話交換手等の雇用を障害者雇用促進法に明記すること。

(障害者雇用対策課 木村)
 まず、厚生労働省としては、働くことを希望する障害者一人一人が障害特性や個性に応じて能力を発揮し、その障害者が活躍できる職場の環境を整備することが大切だと考えている。ただし、要望の内容を義務付けることは、義務付けたことで他の障害者の雇用が進まない可能性があること等、様々な課題があると思われるので、慎重な議論が必要になる。なお、障害者の職域拡大については、ハローワークで障害者の能力や適性が活かせる職場を拡大させようと、高齢・障害・求職者雇用支援機構が作成した「視覚障害者の雇用事例集」を活用する等、取り組みを進めている。

(竹下会長)
 障害者雇用促進法に視覚障害者の職業を限定して書き込むのは難しいことは、私たちも理解している。ただ、このような要望が挙がってくるぐらい、視覚障害者の職域は狭いことを認識してほしい。障害者雇用の統計を見ていると、身体障害者の中で視覚障害者の雇用は伸び悩んでいて、他の障害者よりも少ない。そのため、法律に書き込むぐらいに強制力を持たせないと、視覚障害者の雇用が伸びないと考える者もいる。視覚障害者の雇用率が低いことは事実なので、厚生労働省としてしっかりと雇用率を上げる取り組みを行ってほしい。

(8)視覚障害者の一般就労を促進するため、ICTに関する訓練等を充実させること。

(特別支援室 山本)
 まず、障害者の就労に関する訓練施設は、国立の障害者職業能力開発校が13校あり、さらに府県が設置している障害者職業能力開発校が6校あり、この一部において視覚障害者を対象とした職業訓練を実施している。また、国と都道府県が委託契約を結び、都道府県が事業の実施主体となって、企業・社会福祉法人・NPO・民間教育訓練機関等の訓練委託先を活用して、多様な訓練を実施している。これらでも視覚障害者の受け入れ実績がある。そして、これらの職業訓練では、パソコン操作等のICT訓練を中心に実施している。引き続き、視覚障害者を対象とした職業訓練の機会を提供できるよう、これらの取り組みを進めていく。

(吉泉部長)
 まず、全国にある障害者職業能力開発校で視覚障害者を対象とした職業訓練を行っている所はごく一部である。委託訓練でも視覚障害者に対応した施設はごく一部で、求職者訓練や在職者訓練を視覚障害者が簡単に受けることができない。そのため、このごく一部の訓練施設に視覚障害者が遠くから移動することになり、大変な負担となっている。私たちは、なるべく近くの障害者職業能力開発校で視覚障害者が職業訓練を受けられるようにすべきだと思っている。ただ、それが難しいのであれば、移動費や宿泊費の補助を行うようにするとか、講師の出張やオンラインの講習を可能にするとか、視覚障害者が職業訓練を受けやすい環境を作るべきではないか。
 また、委託訓練の単価が安いことも問題だと思っている。例えば、実際の訓練では単価に応じて複数名を同時に訓練する方法が取られている。しかし、視覚障害者の場合は訓練をワンツーマンで行う必要があり、この単価の範囲でワンツーマンの訓練を行うことは難しい。障害種別を問わず一律の単価を設定するのではなく、障害者の特性に合った訓練ができるような単価にして、委託訓練の実施機関が安定的に事業ができるようにしてほしい。

(特別支援室 山本)
 全国の障害者職業能力開発校と委託先の訓練機関の両方で、視覚障害者が受けられる職業訓練が増えるようにすることは、厚生労働省としても実現させたいと思っている。頂いた意見を参考にしながら、厚生労働省での取り組みを進め、都道府県にも協力を仰いでいく。

【重度障害者等に対する通勤や職場等における支援】

(9)雇用主が独自に行う視覚障害者の通勤支援に対し、国や自治体はその費用等を助成すること。

(障害者雇用対策課 木村)
 障害者雇用を促進する観点から、令和2年10月より始まった「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」により、雇用する障害者の障害特性に応じて通勤を容易にする措置を行っている。開始以降、制度が利用しづらいとのご意見も頂いているので、どのような点に課題があるのかを検討しながら、全国で制度の運用が進むよう、取り組みを進めていきたい。

(竹下会長)
 障害者雇用対策課からの回答なので、障害者雇用納付金制度に基づく助成金の利用を前提にした回答だと思うが、今回の要望の「雇用主が独自に行う視覚障害者の通勤支援」は、障害者雇用納付金制度に基づく助成金の制度外で行われている通勤支援のことを指している。ある地方の視覚障害者は、コロナ禍の通勤が大変だったので、雇用主の判断でタクシーでの送迎を行う等、雇用主側で柔軟な通勤支援を行っていた。ただ、こういったものは制度の対象外になってしまい、雇用主側の負担になってしまう。こういった柔軟な通勤支援があることは視覚障害者としては望ましいことなので、この要望を提出している。

(障害者雇用対策課 木村)
 ご指摘いただいた内容の支援が行われていることを把握していなかった部分があるので、まずは実態把握から行っていきたい。

(10)重度障害者等就労支援特別事業を全国の自治体で開始させるため、国は具体例を示す等、制度のさらなる周知を行うこと。また、働く視覚障害者が利用しやすい制度に改善すること。

(障害福祉課 野原)
 ご要望の重度障害者等就労支援特別事業は、令和2年10月より地域生活支援事業の一つのメニューとして実施している。厚生労働省では、市町村での実施を加速させるため、令和3年度からは地域生活支援促進事業のメニューとして位置づけ、さらに、YouTube等において取り組み事例等をまとめた解説動画を公開し、自治体への周知を強めている。また、令和3年度は自治体に対して実施状況の調査を行い、事例収集に努めている。令和4年度についても、自治体への周知を行うことで、自治体が実施する事業の後押しを行っていきたい。

(竹下会長)
 まず、この事業が始まったことには感謝をしているが、やはり使い勝手が悪い点は問題だと思っている。既に実施している自治体の実施例を見ても、視覚障害者向けに実施している所は限られた自治体でしかない。ただ、この制度の価値は大きいと思っているので、今後、私たちも知恵を絞りながら全国の自治体に働きかけを行い、全国の自治体に開始してもらうことを目指したい。その上で、視覚障害者にとって利用しやすい制度の在り方を整理し、全国的な働きかけを行っていきたい。

(11)重度障害者等就労支援特別事業を地域生活支援事業の必須事業にすること。

(障害福祉課 野原)
 重度障害者等就労支援特別事業は、市町村が地域の実情に応じて必要な支援を行う地域生活支援事業において実施している。今後も、全国の自治体が同事業を実施するよう、事業の周知に努めたい。

(12)重度障害者等就労支援特別事業は、利用する個々人の就労状況を考慮し、利用時間、本人負担等を柔軟に対応すること。

(障害福祉課 野原)
 重度障害者等就労支援特別事業の本人の自己負担については、この事業が地域生活支援事業であることから、実施する自治体において柔軟に設定することが可能となっている。今後とも、実施している自治体での決定内容や取り組み事例を情報収集していきたい。

(竹下会長)
 今後、重度障害者等就労支援特別事業を実施する自治体が増えてくると、決定内容や実施方法に違いが出てくるだろう。そうなると、決定内容等に格差が出てくる可能性がある。私たちも決定内容や実施方法の事例収集に努めるので、厚生労働省としても事例収集を行い、ぜひ、決定内容に格差が出ないようにしてほしい。

(13)自営で開業する視覚障害あはき師が、全国で一律に重度障害者等就労支援特別事業を利用できるようにすること。

(障害福祉課 野原)
 重度障害者等就労支援特別事業は、重度訪問看護・同行援護・行動援護の支給決定を受けたあはき等の自営業者も対象としている。例えば、文書の作成、パソコンの読み上げ、業務上の外出の支援等も対象となりうると考えている。

(竹下会長)
 この要望こそ、この事業が全国で広がっていない証拠だと思っている。全国の視覚障害あはき師の多くはこの制度に期待しているが、全国の自治体が制度を実施しないことに困っている。これは視覚障害あはき師だけでなく全ての視覚障害者が思っていることだ。厚生労働省はこういった視覚障害者の思いを理解した上で、全国の自治体が一律に重度障害者等就労支援特別事業を実施するよう、取り組みを進めてほしい。

(14)あはき自営業者の業務に伴う移動や事務処理等に対する支援制度は、国の就労対策として確実に実施すること。

(障害福祉課 野原)
 厚生労働省としては、あはき自営業者に対する移動や事務処理は重度障害者等就労支援特別事業における支援の対象になりうると考えている。そのため、自治体の取り組み事例が少ないことから、これらの事例を収集し、自治体に対して周知していきたい。

(竹下会長)
 視覚障害あはき師の多くは業務に伴う移動や事務処理等に困っている。ただ、視覚障害あはき師の多くは、重度障害者等就労支援特別事業が分かりにくいことから、どのような職業的な支援が受けられるかが分かっていないため、この要望を出している。回答のあった有効な取り組み事例があったら、ぜひ、私たちにも教えてほしい。頂いた事例をもとに、地域レベルの働きかけを行いたい。

【あはき 無免許・無資格】

(15)あはきにおける無免許・無資格医業類似行為者、違法業者を排除するよう、国は取り締まり強化を推進し、視覚障害あはき師の生計と職業領域を守ること。

(医事課)
 まず、無資格者が行う医業類似行為で禁止処罰の対象となるものは、人の健康に害を及ぼす恐れのある業務になる。また、人の健康に害を及ぼすかどうかは、施術を受けた者の健康状態等の様々な条件を考慮して判断する必要があるため、個別具体的に判断することが必要になり、国で一律の規程を設けることは難しいと考えている。しかしながら、無資格者が行う医業類似行為等により事故が発生することは看過できないため、都道府県に対して消費生活センターが有する健康被害の情報を活用し、迅速な指導を行いつつ、悪質な事例については警察とともに摘発等の対応をするよう依頼している。
 また、「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」の19条を違憲とする裁判は、令和4年2月に最高裁判所より合憲とする判決があった。このことにより、視覚障害あはき師の生計と職業領域を守ることができたと考えている。

(16)無資格者が「マッサージ」と広告することに対して、国が徹底した指導と取り締まりを実施すること。

(医事課)
 まず、厚生労働省からは、広告等でマッサージを行っていることを掲げている無資格の業者に対して適切な指導を行うことを、関係する主管課長会議等の場で全国の自治体に対して周知している。
 また、平成30年より「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」を開催しており、日視連にも参加をいただきながら、広告に関するガイドライン作りを進めている。

(逢坂部長)
 陳情項目(15)も(16)も、厚生労働省からは毎年同じ回答になり、この回答を聞くたびに、国が本気で無資格者を取り締まる気持ちがあるのかを疑いたくなる。回答のあった消費生活センターには毎年多くの苦情が寄せられ、このうちの何割かは無資格者による被害だと思っている。そして、こういった被害は堂々と駅前で「マッサージ」と看板を出している無資格者の店から被害が出ている。国が「国民の健康を守る」という強い意志があるのであれば、国家資格を持っていない者に対して摘発や取り締まりを行うのは当然ではないか。しっかりと考えてほしい。

(竹下会長)
 日視連も参加している「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」は動きが止まっているので、早急に再開してほしい。陳情項目(15)や(16)を解決するためには、やはり広告に関する規制を設けることが必要だと思う。そのためには、この検討会で議論しているガイドラインを早急に作らないといけない。

【あはき師への支援】

(17)病院や高齢者施設等に雇用されている視覚障害あはき師に対する研修機会を確保すること。さらに賃金の増額に繋がる具体的な施策を講ずること。

(医事課)
 医事課からは病院の観点から回答する。
 まず、現在の制度では視覚障害あはき師に特化した研修制度は設けていない。ただし、地域医療介護総合確保基金の対象事業の中で「医療従事者の確保に関する事業」があり、この事業であれば要望の研修会の開催は該当する可能性がある。この事業は都道府県が実施するものであり、実施の判断は都道府県になるので、詳しくは都道府県に相談してほしい。
 また、処遇改善については、令和3年度の補正予算で看護職員等処遇改善事業を実施している。この事業で行う処遇改善加算は看護職員に限られているが、処遇改善のための収入をもってあはきの施術者も含む他の職員の処遇改善に充てる等の柔軟な対応ができるものになっている。
 さらに、今後の処遇改善の在り方については、内閣官房に設置された公的価格評価検討委員会が令和3年12月にまとめた中間整理において、今後の処遇改善は「これまでの措置の実効性を検証するとともに、これまでの措置で明らかになった課題や対象外となった職種も含め、検証を行うべき」との考えが示された。このことを踏まえ、厚生労働省としては、職種ごとに仕事の内容に比した適正な賃金にすることや適正な人材を確保できるようにしたいと考えている。

(高齢者支援課 山畑)
 高齢者支援課からは高齢者施設の観点から回答する。
 高齢者施設においてケアの質を確保する必要があることから、介護職員等の研修機会を確保することが大変重要となっている。このため、厚生労働省では、基準省令において高齢者施設等に雇用されている従事者の資質向上のために研修機会を確保することを定めている。各高齢者施設においては、この基準によって適切に研修を行っているものと承知している。
 また、賃金の増額については、令和元年10月に経験・技能のある介護職員の充実を図るために「介護職員等特定処遇改善加算」を開始しており、この加算の趣旨を損なわない程度で、機能訓練指導員等の介護職員以外の職種に対しても一定程度の処遇改善を行う等の柔軟な運用を認めている。さらに、令和4年4月より「介護職員処遇改善臨時特例交付金」を開始し、福祉・介護職員を対象に、収入を3%程度引き上げるための処置を実施している。

(逢坂部長)
 まず、病院や高齢者施設に限らず、雇用されている視覚障害あはき師が研修を受けられるようにすることは非常に大切なので、回答の内容を含め、しっかりと研修の機会を確保してほしい。
 そして、病院の処遇改善に関しては、陳情項目(3)でも指摘したマッサージに関する診療報酬を上げないと、働いている視覚障害あはき師の処遇は改善されないと思う。
 また、高齢者施設については、看護職員や機能訓練士等が中心になるため、視覚障害あはき師が働く余地がなくなりつつある。この要望とは別の話になるが、高齢者施設で視覚障害あはき師が優先的に働けるような仕組みがあれば、視覚障害者の雇用は維持されると思う。

(竹下会長)
 高齢者支援課からの回答で、高齢者施設で「従事者の資質向上のために研修機会を確保する」との話があったが、実際にはどのような研修が行われているのか。例えば、機能訓練指導員のための研修を一つの事業所で実施するのは難しいと思う。そうなると地域で連携して研修を行うようになるのかと思っている。詳しい情報があれば教えてほしい。

(高齢者支援課 山畑)
 厚生労働省で基準省令にしているものは、施設の採用においてケアに必要な人材を確保するために研修を行うべきとの基準になる。そのため、実施方法に何らかの縛りがあるわけではない。ご指摘のように地域や施設同士が連携して研修が行えれば良いと考えている。

(橋井常務)
 障害者施設を運営する立場から意見を述べたい。まず、様々な処遇改善加算は申請が複雑で、書類を作成するのが大変だ。また、処遇改善加算の対象者はどうしても現場で働く者が中心となり、その施設の事務員等には該当しないので、こういった者にも該当するようにしてほしい。こういったことは病院や高齢者施設の処遇改善にも共通すると思うので、施設にとって利用しやすい処遇改善の取り組みを行ってほしい。

(18)あはき業に特化した新型コロナウイルス関連の助成金制度や支援制度を創設すること。

(医事課)
 要望のあはき業に特化した制度の創設は難しいが、新型コロナウイルス感染症の影響により経営が厳しいあはきの施術所については、日本政策金融公庫等による実質無利子・無担保の融資や、中小企業庁が実施している事業再構築補助金等があるので、これらを活用してほしい。

【あはき業における事務処理】

(19)あはき免許保有証の更新時に添付する書類はさらに簡略化すること。

(医事課)
 あはき免許保有証は東洋療法研修試験財団において発行しており、5年ごとに更新されている。ご要望の趣旨は従来より承知しており、東洋療法研修試験財団では一部の書類を簡略化する変更を行った。今後も、東洋療法研修試験財団と連携しながら、利用しやすいあはき免許保有証となるよう、取り組みを進めていく。

(竹下会長)
 この要望については東洋療法研修試験財団も理解してくれ、一部の書類が簡略化されたが、視覚障害者にとって書類を作成することはハードルが高いため、引き続き、このような要望が出ている。ただ、書類の簡略化は無理なことが言えない部分もあるので、引き続き、東洋療法研修試験財団にも相談しながら、あはき免許保有証の推進に協力したい。

(20)保険請求等の書類は、視覚障害あはき師が容易に作成できるような書式に変更すること。

(医療課 神谷)
 まず、平成30年12月27日に発出した事務連絡「はり、きゅう及びあん摩・マッサージの施術に係る療養費の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について」(※2)を発出しており、この中で視覚障害あはき師が作成する施術録等は「代理人による記入、パソコンやレセプトコンピュータへ代理人が入力して印字、大きな文字での記入、点字での記入等、施術に関する必要な事項の確認が可能な適宜の方法によって差し支えない。」と示している。また、受領委任の申出の書類等をA3に拡大しても良い等の見解も示している。
 さらに、厚生労働省のホームページに記載されている各種申請書類は、視覚障害あはき師が見やすいよう、文字のサイズが大きいものを掲載している。
 今後とも、日視連や全国の視覚障害あはき師の声を聞きながら、記入しやすい書類に改善していきたいと考えている。

(逢坂部長)
 回答の疑義解釈資料で示したことは、視覚障害あはき師にとっては助かる部分もあるが、現実的ではない部分もある。例えば、点字で書いた保険の申請書を保険者に送ったら受け取ってくれるだろうか。そのため、パソコンを使って作成したり、他の者に代筆してもらったり、多くの視覚障害あはき師は苦労しながら書類を作成している。こういった点があるから、要望の「視覚障害あはき師が容易に作成できるような書式」に改めることを求めている。

(※2)はり、きゅう及びあん摩・マッサージの施術に係る療養費の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/181228_08.pdf

【あはき 受領委任制度】

(21)受領委任制度における鍼灸マッサージの同意書は、撤廃を含む見直しを行うこと。

(医療課 神谷)
 療養費は、医療機関での治療を行うことが困難な場合に療養の給付に代えて支給されるものとしている。鍼灸では慢性の痛みを主症とする病態が施術の対象、マッサージでは筋麻痺や関節拘縮がある場合等の施術が該当し、保険による適当な手段がない場合の施術となる。そして、これに係る療養費を求める際は、療養費の適正な支給の観点から、医師の同意書等の添付が必要となっている。一方で、柔道整復師による施術は、ある程度定型的なものであり、保険医療機関等における治療に代わって行われることが一般的であることから、以前より同意書を必要としないものになっている。
 なお、平成31年4月からあはきの受領委任制度の取り扱いが開始されたことに伴い、あはきの適正化策の一環として、医師の同意書の添付が義務化されている。このことは、保険者や施術者団体の代表者で構成される「社会保障審議会医療保険部会あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会」において審議を受けた上で成立したものである。

(逢坂部長)
 この要望の背景を整理しておきたい。あはきの場合は病院に行って同意書を貰ってこないと保険での施術ができない。一方で、柔整はこの同意書がなくても保険で施術ができる。この違いは大きく、あはきに患者さんが流れてこない要因を生んでいる。よく、患者さんからは「先生の治療を保険で受けようとすると、病院に行かないといけない。それは面倒だよ」といった声を聞く。こういった声が不満になり、この要望に繋がっている。

(竹下会長)
 この要望の先として、柔道整復師の不正請求の問題はしっかりと解決すべきだと思っている。そうでないと、この要望の根源にある不満を埋めることができないだろう。
 一方で、あはきの仕事をしている立場からすると、医師からの同意書が取りにくいことも問題だと思う。同意書が取りにくいことは、多くの視覚障害あはき師より聞いている。医師からの同意書を取りやすくすることも検討すべきではないか。

(医療課 神谷)
 医師から同意書を取りやすくすることは、患者が必要とする施術に繋げるために必要なことだと思う。慎重な議論は必要だが、検討していきたい。

(22)視覚障害あはき師が療養費の請求書類の作成を他の個人や団体に依頼する場合、事務負担軽減のため、療養費に翻訳等の加算制度を設けること。

(医療課 神谷)
 健康保険法第87条では「保険医療機関以外から手当てを受けた場合、保険者がやむを得ないものと認めるときは、療養の給付等に代えて、療養費を支給することができる。」と示されている。この点に基づき、鍼灸の施術を保険者が認める時には、療養費として保険給付がされることになっている。ただし、保険者がやむを得ないと考える療養費については、施術に関しての評価として給付されているものになるため、施術者の事務負担を軽減するために療養費を支給することは適切ではないと考えている。なお、現行の施策で対応できる事務負担軽減となると、陳情項目(14)で回答した重度障害者等就労支援特別事業による支援が適当であると考えている。

(逢坂部長)
 保険を取り扱っている視覚障害あはき師の一部は、業団体や地域の視覚障害の当事者団体に依頼し、手数料を払いながら代理記入をしてもらっていることが多い。この方法が便利だと考えている者も多く、もっと活用しても良いと思っている。そのため、この要望に示した「加算制度」があれば、こういった依頼がしやすくなるのではないか。回答では「今の制度では加算をすることは難しい」とのことだが、何か別の方法や制度で助成等をすることはできないものか。

(医療課 神谷)
 残念ながら健康保険の制度の範囲で要望の内容を助成するものはない。福祉行政の範疇になってしまうが、陳情項目(14)で回答した重度障害者等就労支援特別事業で支援を受けるしかないと思っている。

(竹下会長)
 平成31年4月より受領委任制度を開始する際に、厚生労働省の事務方と協議していた中で、要望のような保険請求の中で書類の作成費用を賄うことを検討してもらったことがある。これは、もし視覚障害あはき師が点字で書類を作成して保険者に送ったら困るのは保険者なので、保険者の負担を減らすために要望のような提案を検討してもらった。この観点に沿えば、保険の中で書類作成の費用を補助することは難しいとは言い切れない。回答の内容は理解しているが、もう一度、可能かどうか検討してほしい。
 また、重度障害者等就労支援特別事業については、実施例が少ない上に、視覚障害あはき師が利用できるものになっていない。そのため、この事業では支援が受けられないから、加算制度を求める声がある。こういった点が背景にあることは理解してほしい。

(23)病院治療と鍼灸治療の療養費払いの併用を認めること。

(医療課 神谷)
 陳情項目(27)と重複するが、療養費は健康保険法第87条で「保険医療機関以外から手当てを受けた場合、保険者がやむを得ないものと認めるときは、療養の給付等に代えて、療養費を支給することができる。」と示されている。この点に基づき、鍼灸の施術を保険者が認める時には、療養費として保険給付がされることになっている。そして、取り扱いについては、「はり師、きゅう師及びあん摩・マッサージ・指圧師の施術に係る療養費の支給の留意事項等について」という通知で支給対象や取り扱い等が決まっている。この通知では、医師による適当な治療手段がない場合に支給の対象とされていることから、同一疾病に係る併給は認められていない。なお、保険者については、この通知に基づいて支給を認めるかどうかの判断になると承知している。

(竹下会長)
 例えば、先端医療等は保険診療と保険外診療は併用して使えるようになってきた。そのため、他の医療で併用ができることから、患者さんからも施術者側からも病院治療と鍼灸治療の療養費払いの併用を求める要望が出てきている。今の法律ではこの併用が難しいことは理解しているが、こういった要望があることは忘れないでほしい。

(片岡副会長)
 病院治療と鍼灸治療が重なった場合、健康保険法第87条で療養の給付が優先されているから鍼灸の方が却下されてしまう。特に多いのは、こういった事情を知らない患者さんが鍼灸で治療を受けているのに、私たちの気づかないところで病院にも行っているケースだ。患者さんには何も言えないので、制度として併用できるようになってほしい。



03 人事院



1.日時
 令和4年8月24日(水) 13時30分〜14時00分

2.場所
 中央合同庁舎第5号館別館

3.出席者
(1)日本視覚障害者団体連合
                     副会長  佐々木 宗雅
                    情報部長  吉泉 豊晴
                     事務局  佐藤 絵里
(2)人事院
 事務総局
  総合調整官   総務課長補佐(総括)事務取扱  藤田 武志
  総務課(調整班)                渋木 亮

4.陳情項目、回答、意見交換
※担当者不在のため、人事院の事務担当者との意見交換を行う。なお、要望内容は事務担当者より各担当者へ伝えることになっている。

(1)障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の第10条により、貴院が所管する施策、とりわけ国家公務員採用試験に関連した視覚障害者への情報保障をさらに進めるための措置を講じ、あるいは予算を確保すること。

(事務総局 藤田)
 国家公務員採用試験に関連した視覚障害者への情報保障について、具体的な情報保障の内容を確認したい。現状は点字と拡大文字での試験で対応している。それ以外については、要望を踏まえて検討することとなっている。

(吉泉部長)
 パソコンによる受験は人事院でも実施しているが、点字試験の補助的な位置づけだと思う。パソコンによる受験を補助的な位置づけではなく、点字とは別で独立したものにしていただきたい。司法試験は既に独立した形になっているので、検討してほしい。例えば、学生時代に目が悪くなった者は点字を指で読めるようになるまで習得するのは大変である。このような者が盲学校等を卒業後に試験を受けて公務員になろうとした時に、点字で受験するのはハンディキャップが大きい。点字を覚えきれない、覚えたとしても一定の速度で読むことが難しい者もいるので、配慮していただきたい。

(佐々木副会長)
 障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法ができたことに、我々視覚障害者は喜んでいる。この法律を基に、是非、合理的配慮をしていただきたい。
 要望書にもあるとおり、特に第10条の組織的、予算的な配慮の面で具体的な対応をしていただきたい。

(2)障害者雇用納付金制度を利用できない公的部門で働く視覚障害者に対し、国庫負担による支援制度を実施すること。

(3)公務員がヒューマンアシスタント等の支援を受けられる制度を新設すること。

(事務総局 藤田)
 国家公務員の職員に対する援助というのは税金で賄われている部分が多いかと思うが、私たちの認識不足があるかもしれない。国庫負担がされていない部分がある等、具体的な課題や問題があるのであれば教えていただきたい。

(吉泉部長)
 まず、民間で働く視覚障害者に対しては、雇用率制度や雇用納付金制度に基づくいろいろな助成金が利用できる。また、雇用保険を財源とする助成もあり、ジョブコーチ等の支援を利用できる。しかし、公務員は財源が違うという理由でこれらの対象から外されている。「雇用納付金制度を利用できない公的部門」と記載しているのはそういう意味である。公務員の場合、建前としては、助成制度を使わなくても率先垂範して障害者の雇用に取り組むべきであり、適切に環境整備や支援を行うべきであるとなっている。しかし、上司の判断次第できちんと対応してもらえる場合もあるが、個々のケースを見ると、思うような環境整備をしてもらえないことや、ヒューマンアシスタントを付けてもらえないことがある。そのため、公務員の場合も、上司の判断次第で支援を受けられたり受けられなかったりする不安定なものではなく、一定の基準を満たしている場合には、きちんと国庫負担によって受けられるようにしてほしい。
 なお、要望項目(2)の納付金制度で一番問題なのは、環境整備についてである。視覚障害者専用のスクリーンリーダーや拡大ソフト等を入れてほしいと要望しても、聞き入れてもらえないことがあるため、制度的に保障していただきたい。
 また、要望項目(3)のヒューマンアシスタントについては、人的支援をきちんと受けられるようにしていただきたい。

(事務総局 藤田)
 支援にはヒューマンアシスタントやジョブコーチが含まれ、国庫負担による支援制度というのは、ヒューマンアシスタントやジョブコーチの育成も含まれるということか。
 これは人事院だけに要望しているのか。関連部局にも伝えてほしいということか。

(吉泉部長)
 民間部門での雇用の問題は厚生労働省で対応してもらえるが、公的部門はそれに当たるところがないため、人事院に要望している。

(佐々木副会長)
 この件に関しては人事院が代表となり、各省庁の関係部署に要望があったことを伝えてほしい。

(事務総局 藤田)
 関連機関についても伝達してほしいという要望があったことを担当者に伝える。

(4)公的部門で働く視覚障害者に対応したジョブコーチを育成し、地域を問わず利用できるようにすること。

(吉泉部長)
 民間で働く障害者はジョブコーチの支援を受けることができるが、公務員はその支援を受ける制度的基盤がない。きちんと枠組みとして利用できるような体制整備をしていただきたい。

(事務総局 藤田)
 ジョブコーチについては、現状は障害者の方々を担当する職員が個別支援者として指名されており、その指名された職員が、厚生労働省が委託している民間と同じようなジョブコーチの養成研修を受けて対応することになっている。また、要望のとおり、地域を問わずジョブコーチを使えるようになっているのかについては、必ずしもそうではないと承知している。そういったことも踏まえて要望があったことを担当者に伝える。

(吉泉部長)
 視覚障害者が就職して間もない頃は、ジョブコーチにいろいろと支援をしていただくことが多い。1つはパソコンの環境整備である。健常者や他の障害者は画面を見て操作するが、視覚障害者は画面を見て操作することができないため、かなり特殊な方法が必要となってくる。そのため、ジョブコーチがこれらの操作方法を知らないと、適切な支援ができない。また、環境整備には通勤できるようにすることも含まれており、安全に通勤できるように歩行訓練を受けることも大切である。しかし、歩行訓練は専門的なノウハウを求められ、一般的なジョブコーチで対応するのは難しい。また、民間も含め、視覚障害者に対応できるジョブコーチそのものが少ないため、公的部門でジョブコーチに当たる職員を研修で育成すると言っても、そう簡単な話ではないと思う。

(5)公的部門で働く視覚障害者の就労継続のために、ICTに関する訓練等を充実させること。

(吉泉部長)
 訓練制度として、公共の職業訓練施設や民間部門に委託して行う在職者訓練等のメニューがあるが、公務員は全てそこから外されている。公務員は、建前としては、各部署の実行予算を活用して訓練を受けさせることになっているが、上司が許可を出してくれないと受けられない。そのため、上司の個人的な判断に任せるのではなく、制度としてきちんと認められるようにしていただきたい。

(6)公的部門で働く視覚障害者が希望した職種で安定して働き続けられるよう、人的支援、支援機器の導入、歩きやすい環境の整備等により雇用環境を改善すること。特に、テレワークの推進に伴う本人認証やセキュリティ対策については、視覚障害者が利用できる内容に改めること。

(事務総局 藤田)
 本人認証等でどういったものが視覚障害者にとって使いやすいものなのか教えていただきたい。

(吉泉部長)
 まず、トータル的な内容だが、視覚障害者が希望する職種で安定して働き続けられるように、いろいろな支援をしていただきたい。公務員の場合、雇用率を達成するという意味合いもあるが、非常勤職員として勤務した後、選考を経て正職員として働き続けられるような道筋はある。しかし、これは難しいという話を良く聞く。障害者が希望する場合、そういうチャンスをきちんと確保できるようにしてほしい。
 また、現在、コロナの関係もあり、公的部門で働く障害者もテレワークをすることがあると思う。自宅からパソコンで職場のサーバーにアクセスする際、本人確認をするためのシステムとしてトークンをよく使うが、トークンは音声出力で確認することができず、小さな画面に表示されたパスワードを見て、それをパソコンに入力しなければいけない。これは視覚障害者には困難な作業のため、別の形でアクセスできるようにしていただきたい。例えば、一部の金融機関では、スマートフォンやパソコンに暗証番号を送ってもらい、それを入力することでアクセスできるようにするというやり方を採用しているところもある。こういったことを、公的部門で働く視覚障害者のために採用していただきたい。

(佐々木副会長)
 人事院の公務の中で、オンラインでテレワークをしているのはどれくらいの割合か。

(事務総局 藤田)
 一概には数字では申し上げられないが、本人が希望すればテレワークができるようになっている。一時期、新型コロナウイルス感染症が拡大した時には、7割程度までテレワークを進めるよう内閣府事務局から話があり、その目標に向けてテレワークをする体制になっていた。その頃より若干減ってきているかとは思うが、現在何割がテレワークをしているかは把握していない。

(佐々木副会長)
 視覚障害者にとってテレワークは、アクセシビリティの面で苦労することが多い。人事院に対して、公務部門で働いている視覚障害者からテレワークのアクセシビリティに関する要望は挙がっているのか。

(事務総局 藤田)
 要望については、内閣人事局で取りまとめをしているため、障害者からどういった要望が来ているかは把握していない。ただ、自分が知らないだけで担当は情報を持っている可能性はある。

(佐々木副会長)
 テレワークの際のアクセシビリティに関して苦労している者が多いため、人事院内部や他の省庁含め、要望があったら個別具体的に対応してほしい。

(吉泉部長)
 視覚障害に限らないが、健常者だった者が障害者になってしまった場合、いろいろな訓練を受けた上で復職する必要がある。そのリハビリテーションのための訓練を受けることについては、平成19年1月に人事院から各府省等人事担当課長宛に通知を出している。通知には「障害のある職員が受けるリハビリテーションは、例えば、在職中に疾病又は事故等により、視覚障害者となった場合で、復帰のためにリハビリテーションを受ける場合などが該当する」といった旨が記載されている。この通知の内容は、内閣官房内閣人事局、厚生労働省、人事院が平成31年3月にとりまとめた「公務部門における障害者雇用マニュアル」(※1)にも記載されている。これらは、他の省庁に対してのアピールにもなったし、公務部門で働く視覚障害者にとってとてもありがたかった。アクセシビリティの件や他の陳情項目に記載していることも含めて、人事院がイニシアティブをとって他の省庁に対して、こうあるべきだという姿勢を示していただきたい。

(※1)公務部門における障害者雇用マニュアル
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/files/shougaisha_manual_200327.pdf



04 文部科学省



1.日時
 令和4年8月25日(木) 11時00分〜11時30分

2.場所
 文部科学省

3.出席者
(1)日本視覚障害者団体連合
                      会長  竹下 義樹
                    情報部長  吉泉 豊晴
                     事務局  佐藤 絵里

(2)文部科学省
 総合教育政策局
  男女共同参画共生社会学習・安全課
   障害者学習支援推進室 障害者学習支援第二係
                      係長  今井 敏之助
  地域学習推進課
   図書館・学校図書館振興室 図書館振興係
                      係長  近藤 たみ
 初等中等教育局 特別支援教育課    指導係長  山田 知佳子
                          高橋
 スポーツ庁
  健康スポーツ課            専門職  石井 奏可
 文化庁
  地域文化創生本部                南部

4.陳情項目、回答、意見交換

(1)障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の第10条により、貴省が所管する施策において視覚障害者への情報保障をさらに進めるための措置を講じ、あるいは予算を確保すること。

(男女共同参画共生社会学習・安全課 今井)
 文部科学省では、同法の施行を踏まえて、本省が管轄する教育関係部局に同法の意義や内容を広く周知する事務連絡を6月に行った。教育分野における意思疎通支援者の確保、養成及び資質の向上に関する施策の推進等については、関係部局と連携して取り組んでいく。

(地域学習推進課 近藤)
 図書館担当課としては、予算事業において、学校図書館や図書館の司書の研修の実施や読書バリアフリーコンソーシアムの設置により、地方公共団体における読書環境の整備を示している。令和5年度の事業についても、予算が取れるように努めていく。

(特別支援教育課 山田)
 学校教育における視覚障害のある児童・生徒への指導に当たっては、特別支援学校の学習指導要領において、視覚補助具やコンピューター等の情報機器、触覚教材、拡大教材、音声教材等の効果的な活用を規定している。また、機器、教材の活用により、児童が容易に情報を収集整理し、主体的な学習ができるよう、児童生徒の障害の程度を考慮しつつ、指導方法を配慮・工夫することも規定している。引き続き、文部科学省としては、学習指導要領を踏まえた指導が各学校で適切に行われるように、教育委員会を通して周知を行っていく。

(竹下会長)
 障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法ができたことに私たちは期待を寄せている。今回の回答を加盟団体に情報提供し、加盟団体が自治体と交渉する際に活用する。回答のように地域で様々な取り組みが進むようにしてほしい。

(2)視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)に基づいて、地方自治体が計画を策定し予算化するよう、地方自治体に指導すること。

(男女共同参画共生社会学習・安全課 今井)
 文部科学省では、自治体が作成する基本計画の作成状況の調査を行っている。令和4年2月現在で、都道府県、政令市、中核市の129自治体の内、作成済みと作成中が51%となっている。引き続き、自治体への指導等を進めていきたいと考えている。

(竹下会長)
 私たちとしては、自治体の努力義務となっている読書バリアフリー法における基本計画の策定が進んでいないと思っているため、47都道府県は早急に作成してほしいと考えている。文部科学省は、作成に関する指導のようなことはしているのか。
 また、基本計画の作成済み・作成中の自治体の情報は公開しているのか。

(男女共同参画共生社会学習・安全課 今井)
 都道府県に限定しての指導は行っていないが、全国的に基本計画の策定を促していくことは今後も続けていく。また、基本計画の作成済み、作成中の自治体の情報は文部科学省のホームページ「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画の策定状況一覧」(※1)で公開している。現在は令和4年2月の情報を掲載している。

(吉泉部長)
 読書バリアフリー法における基本計画は、生涯学習における基盤になると考えている。高齢になってから視覚障害になる者も増えてきている中で、自分の興味のあるものの情報を手に入れることは生きがいを維持していく中で重要だと考えている。各自治体に対して、基本計画の策定だけではなく、情報を利用するための機器の講習会等を開催することも働きかけてほしい。
 また、化学式や数式のある電子媒体は、単純な点字変換では読み込みにくく、理解しにくい場合がある。そのため、点訳に長けた者によるルールの整った点字のデータ版の作成が大切である。一方で点字の読めない視覚障害者もいるので、その様な視覚障害者を想定した、他の情報伝達手段についても研究してほしい。

(※1)視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画の策定状況一覧
https://www.mext.go.jp/content/20220330-mxt_kyousei01-000012302_2.pdf

(3)あはきの魅力を次世代の視覚障害者に伝え、技術力の高い視覚障害あはき師を養成するために、視覚特別支援学校の理療科教育を充実させること。

(特別支援教育課 山田)
 視覚特別支援学校の教員免許証の保有率の向上や、養成、採用、研修の各段階での質の向上を図ることは重要であると考えている。特に視覚障害教育については、大学の教職課程での養成等が全国で分布していないため、国立特別支援教育総合研究所において、免許法認定通信教育を実施してる。令和4年度の前期においては、視覚障害について学ぶ講座を全国から630名程の教員が受講した。引き続き、特別支援教育の専門性の向上のため、取り組んでいく。

(4)視覚障害者の職域を広げるため、ICTスキルの習得を目指す専門コース等を各地域の視覚特別支援学校に設置すること。

(特別支援教育課 高橋)
 専門コースの設置は、学校教育法上における特別支援学校設置者にあり、具体的なコース設定や指導内容については、教育委員会の裁量が大きい。しかし、文部科学省としてもICTスキルの習得は重要であると考えている。そのため、授業におけるICTを活用した職業教育に関する指導計画や指導法の調査研究を進め、障害児がICT技術を活用しながら将来必要となる力を身につける施策の策定に努めている。
 また、自治体によっては、独自に生徒が在学中にICTを活用し、必要な就労スキルを身につける取り組みをしているところもある。そのような好事例を全国に周知していくことも考えている。

(吉泉部長)
 好事例の取りまとめの周知をする際には、日視連への情報提供もお願いしたい。

(5)地域の学校でインクルーシブ教育(統合教育)を受ける視覚障害児・者が十分な教育をうけることができるようにするために、ニーズに沿った支援体制を確立し、支援機器を利用できるようにすること。

(特別支援教育課 高橋)
 統合教育について、文部科学省としては、地域の一般校における特別教育支援員に関する予算を拡充したり、特別教育支援員の必要性を自治体に周知したりするため、学校教育法の施行規則に特別教育支援員を位置づけることを行っている。また、入出力支援装置に関する支援や厚生労働省が行う補装具の支給制度の紹介を行い、支援が行える環境整備に努めている。
 なお、特別支援学校は地域のセンター的機能を発揮する役割にもなっている。そのため、特別支援学校の教員等が地域の学校から要請があった際に必要な助言や支援を行い、負担を減らせるよう、周知を行っていきたい。

(竹下会長)
 視覚障害児・者がインクルーシブ教育を受けることについて、私たちは様々な懸念を持っている。例えば、視覚障害児・者の学校外での学習に関して、親や兄弟等が音声読み上げソフト等の利用を考慮しながら、視覚障害児に学習指導を行うことは難しいと思う。その結果、学習において大きく差が出てしまうのではないかと懸念している。学校外のことなので、担当する省庁が分からないのだが、対応を検討してほしい。
 また、統合教育を受ける視覚障害児は、体育の授業を他の健常者と一緒に受けることができないことが大半である。現実的に体育の授業において、視覚障害児と健常者の生徒に同様の内容を同時に受けさせることは難しいことかもしれないが、何かサポートができないだろうか。

(吉泉部長)
 関連してGIGAスクール構想についても懸念がある。例えば、様々なニーズに応え、視覚障害児に対してICT端末を配布する際は、視覚障害児にも扱いやすいものを配布すると聞いた。しかし、視覚障害といっても様々な見え方があり、使用したい機器そのものが変わってくることもある。学校で一律にこの機種を配布するということになると、視覚障害者のニーズに応えきれないのではないか。
 また、ニーズに応えるといっても現場の教員からすると、様々なノウハウを学ばなければならず、負担が大きいと思う。場合によっては、教員以外の専門家の助力を得やすくする制度が必要ではないか。

(6)視覚障害者が文化・芸術活動やスポーツ活動を通して社会参加し自己実現を図るために、支援者を養成し会場を確保すること。そのために、文化・芸術活動やスポーツ活動に関する視覚障害者の取り組みを社会に周知すること。

(健康スポーツ課 石井)
 スポーツ庁としては、スポーツ施設のユニバーサル化を促進するためにハード、ソフトにおいて、配慮する事項や取組事例の収集整理を行い、ガイドブックに取りまとめた。また、地域における障害者スポーツにおいても、地域においてスポーツ、福祉、医療の関係者が連携し、障害者の身近な場所でスポーツができる環境を整える事業を行っている。
 その他、普及啓発を図るために自治体職員、体育館等の管理者、民間スポーツ施設の運営者を対象としたセミナーの実施、オリンピック・パラリンピック教育、障害者スポーツの各種体験会の広報を行っている。

(地域文化創生本部 南部)
 文化庁では、障害者による文化芸術活動の推進に関する法律に基づき、厚生労働省とともに平成31年3月に「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画」(※2)を策定、関係省庁と連携し、施策を進めている。また、本基本計画は令和4年をもって終了するが、今般、障害者を含む幅広い構成員からなる障害者文化芸術活動推進有識者会議を立ち上げ、地域基本計画の策定に向けた検討を行っている。
 また、令和元年度から実施している障害者等による文化芸術活動推進事業において、文化芸術団体やNPOが実施する障害者等の文化芸術活動の支援を行っている。なお、同事業を紹介する文化庁のホームページ「障害者等による文化芸術活動推進事業」(※3)では、各団体の実施内容を公開し、取り組みの周知を行っている。そして、令和4年度より課題解決プロジェクトとして、障害者等による文化施設等へのアクセスの改善や鑑賞サポートの取り組み、文化芸術作品の公演や展示における情報提供や対応窓口の設置を行っている。

(竹下会長)
 障害者の文化芸術に対する支援がなかなか得られないため、障害者団体は苦慮している。各障害に関しての文化芸術支援を受けられるようにしてほしい。

(※2)障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画
https://www.bunka.go.jp/seisaku/geijutsubunka/shogaisha_bunkageijutsu/1415475.html
(※3)障害者等による文化芸術活動推進事業
https://shogaisha-bunkageijutsu.bunka.go.jp/index.html



05 国土交通省



1.日時
 令和4年8月25日(木) 10時30分〜11時50分

2.場所
 中央合同庁舎第3号館

3.出席者
(1)日本視覚障害者団体連合
                     副会長  佐々木 宗雅
                    常務理事  橋井 正喜
                    組織部長  三宅 隆
                     事務局  木村 幸平
                     事務局  石原 慎太郎

(2)国土交通省
 大臣官房総務課            総務係長  伊藤 樹
 総合政策局
  バリアフリー政策課        企画調整官  北小路
                    課長補佐  中島
                    課長補佐  西村
  総務課              規格専門官  福島
 鉄道局
  鉄道サービス政策室         課長補佐  大久保
  都市鉄道政策課           課長補佐  酒井
  技術企画課             課長補佐  金丸
 道路局
  路政課               課長補佐  栗原
 自動車局
  技術・環境政策課                河野
  旅客課               課長補佐  佐藤
  車両基準・国際課          課長補佐  河村
 不動産・建設経済局
  不動産業課             課長補佐  愛内
 住宅局 参事官              係長  伊倉


4.陳情項目、回答、意見交換

(1)障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の第10条により、貴省が所管する施策において視覚障害者への情報保障をさらに進めるための措置を講じ、あるいは予算を確保すること。

(バリアフリー政策課 北小路)
 国土交通省では、バリアフリー法に基づく基本方針において、令和3年度から令和7年度における整備目標を定めている。その中で視覚障害者の情報保障に関わるバリアフリーの進捗状況の見える化を図り、文字だけではなく音声についても案内設備の目標を定めている。これらの設備に係る費用については、補助金による支援を行っている。
 今後も公共交通機関において障害者が必要な情報を収集し、意思疎通が取れるよう、取り組みを推進していきたい。

(佐々木副会長)
 第10条の施策の実施に必要な法制上、財政上の措置をとるという部分に、私たちは大いに期待している。鉄道駅等でのコミュニケーション、AI導入の際の配慮、ソフト面での対応等、新しい法律の施行に合わせてこれまで以上の対応をしていただければと思う。

(橋井常務理事)
 鉄道関係の情報保障のことで思うのは、地方に住んでいると、利用している駅が無人駅になるという情報の周知が行き届いていないように思える。鉄道事業者が周知をすることが一番良いのだが、国土交通省からも無人駅化の際は、障害者団体への周知と意見交換をするよう鉄道事業者に伝えてほしい。また、時間によって無人駅になる場合に、どの時間に無人駅となるのか、有人駅となるのか分からないことが多い。この件についても鉄道事業者に対応してもらえるように働きかけてほしい。

(鉄道サービス政策室 大久保)
 鉄道事業者より駅の無人化の話を聞いた際には、必ず自治体、駅周辺の障害者団体に説明を行うように指導を行っている。また、令和4年7月に「駅の無人化に伴う安全・円滑な駅利用に関するガイドライン」(※1)を公表したところだが、その検討を行った意見交換会において、地方での意見交換会を地方の鉄道運輸局を中心として令和4年度中に1回は行う予定となっていることを示したところである。その意見交換会を通じて、鉄道事業者、国が対応をしていきたいと考えている。

(三宅部長)
 これまで、国土交通省のホームページに資料等を掲載する際は、画像PDFのみの場合が多かったが、近年Word版やテキスト版の資料も作成する等の改善がなされており、視覚障害者としてはありがたい。また、同法の第3条3項にて可能な限り同一時点で同一内容の資料を障害の程度に関わらず、取得できるようにすることが定められているので、今後も視覚障害者が直接アクセスできるような情報提供をお願いしたい。

(※1)駅の無人化に伴う安全・円滑な駅利用に関するガイドライン
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_fr2_000017.html

(2)視覚障害者誘導用ブロックや階段の段鼻の色は、輝度比を踏まえた上で黄色とすること。

(バリアフリー政策課 北小路)
 建築設計標準において、視覚障害者誘導用ブロックや階段の段鼻の色は黄色を原則とすること、誘導用ブロックと周囲の床面との明度は色相、彩度の差を大きくし、容易に識別できるようにすること、場所による視覚障害者誘導用ブロックの色が異なることによる混乱を防ぐため、なるべく色を統一することを定めている。また、「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン バリアフリー整備ガイドライン 旅客施設編」(※2)においても、公共交通機関における視覚障害者誘導用ブロックや階段の段鼻の色は黄色を原則としている。また、段鼻は全長に渡って周囲の色との明度、色相または彩度の差、輝度(コントラスト)を大きくすることにより、段を容易に識別できるようにし、階段の始めから終わりまで統一した色にすることを定めている。
 道路においても「道路の移動等円滑化に関するガイドライン」(※3)にて、視覚障害者誘導用ブロックや階段の段鼻の色は黄色を原則とし、黄色とすることで周囲との対比効果を発揮できなくなる場合には、接地面との輝度比が確保できるように誘導用ブロックを縁取るように舗装の色を変えるよう定めている。階段の段鼻においては、周囲との輝度比が大きい等の理由で段を容易に識別できるようにし、最初から最後の段まで色を統一することを定めている。
 引き続き、各種ガイドラインを通じてバリアフリー化の促進を図っていきたいと考えている。

(※2)公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン バリアフリー整備ガイドライン 旅客施設編
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/content/001475234.pdf
(※3)道路の移動等円滑化に関するガイドライン
https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/bf/kijun/pdf/all.pdf

(3)道の駅や鉄道駅等の多目的トイレにおいて、視覚障害者を便座横に誘導するための音声案内装置が設置されるよう、国の設置基準に音声案内装置を加えること。

(バリアフリー政策課 西村)
 令和2年に学識経験者、障害者団体、事業者団体を交えたトイレに関する調査研究の検討会を開催し「共生社会におけるトイレの環境整備に関する調査研究検討会 報告書」(※4)を公表した。その報告書では、トイレの入り口だけではなく便房内での設備案内を行うことが望ましいとの取りまとめを行っている。この報告点を踏まえ、旅客施設等のバリアフリーガイドラインに反映し、関係事業者にも周知を行っている。
 国土交通省としては、引き続き各種ガイドラインの周知を行い、施設の実情を踏まえながら多様な利用者に配慮したトイレの整備を推進する。

(橋井常務理事)
 トイレ内が広いと便房の位置等が分からないことが多い。また、点字の案内を触読しながら便房を探すとなると、時間がかかり余裕がなくなってしまうこともある。公共施設全般にさらに音声案内装置が設置されるように記載することはできないか。

(バリアフリー政策課 西村)
 毎年、トイレ等の適正利用に関するキャンペーンを行い、ガイドラインの周知を行っている。今後も、建築物、旅客施設へのガイドラインの周知に努めていく。

(橋井常務理事)
 例えば、バリアフリー法の建築設計標準に音声案内装置を必ず設置することを盛り込めば、建築の際にこれらの装置を設置してもらえると思う。今後もさらなる検討を進めてほしい。

(※4)共生社会におけるトイレの環境整備に関する調査研究検討会 報告書
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/content/001391847.pdf

(4)視覚障害者の鉄道駅での安全確保のため、駅職員の適正な配置と見守りサービスの充実、ラッシュ時には駅員の増員を行うこと。

(鉄道サービス政策室 大久保)
 駅員の配置については、それぞれの駅における利用の状況、設備の状況を考慮して鉄道事業者自らが判断して行うものである。しかし、国土交通省としては、障害者団体や自治体の意見を聞き、個々の利用実態を把握しながら必要に応じて駅員等の配置を見直す等の責任を持った対応が必要だと考えている。そこで、令和4年7月に日視連にも協力いただき、「駅の無人化に伴う安全・円滑な駅利用に関するガイドライン」を作成した。ガイドラインの内容は無人化を認めるというものではないが、駅や窓口を無人化する際には鉄道事業者は最大限ガイドラインを尊重して対応していただきたいと考えている。

(5)駅ホームの安全な利用のため、更なる国庫補助によりホームドアの設置を促進すること。また、設置済みのホームドアを安全に稼働させるため、恒常的な点検を行うこと。

(都市鉄道政策課 酒井)
 ホームドアの整備等、鉄道駅のバリアフリー化は全ての人が鉄道を安全・安心・円滑に利用するために重要なことであると考えている。令和3年12月に鉄道駅バリアフリー料金制度を創設し、令和4年度は、地方における鉄道駅バリアフリー化を促進するため、市町村が作成したバリアフリー基本構想に位置づけられたホームドア等のバリアフリー設備等の整備に関して、国庫の補助率を最大3分の1から2分の1へと拡充した。
 国土交通省としては、都市部においては鉄道駅バリアフリー料金制度を活用し、地方においてはバリアフリー推進のための予算確保に努め、ホームドアを始めとしたバリアフリー化の促進を図っていく。

(技術企画課 金丸)
 ホームドアの設置された鉄道設備については、必要な機能を維持するため、適切な維持管理を行うことが大切だと考えている。そのため、鉄道事業者には、鉄道施設の使用状況に応じた点検方法を定め、定期検査を実施することを求めている。

(三宅部長)
 バリアフリー料金について、新たに料金が上がることだけが独り歩きすることのないよう、令和5年度以降、集めた料金をどのように使ったかが分かるよう見える化を図ってほしい。その際、視覚障害者にも伝わるように情報提供してほしい。
 また、バリアフリー料金の対象外となっている3大都市圏以外の地域のバリアフリー化についても、視覚障害者にもアクセスできるように情報提供してほしい。

(都市鉄道政策課 酒井)
 透明性の確保が課題となっていることは承知している。徴収したお金の使用先は、鉄道事業者から情報を開示する措置をとっている。バリアフリー料金制度は、3大都市圏に鉄道路線を持つ大手民鉄とJR東日本、JR東海、JR西日本等に活用することを想定している。それ以外の営業路線については、従来通り補助による支援を行い、バリアフリー整備の促進を図りたい。意見については、対応を検討したい。

(三宅部長)
 バリアフリー料金の見える化に伴う情報提供は、各鉄道事業者から行うということか。国土交通省からまとめて情報提供してほしい。

(都市鉄道政策課 酒井)
 現時点では、各鉄道事業者から情報提供をする予定である。国土交通省からのバリアフリー料金の情報提供は、担当部署に伝え、対応を検討する。

(佐々木副会長)
 バリアフリー料金制度について、あまり障害者のためであるということを強調されると矢面に立たされる可能性もあるため、周知にあたっては、障害者と健常者で分断されないように注意してほしい。

(6)全ての駅ホームに内方線付き点状ブロックを敷設すること。

(技術企画課 金丸)
 駅ホームからの転落防止は重要な課題であると認識している。平成30年3月の移動等円滑化基準及びガイドラインの改正により、駅の新設や大規模改修を行う際、プラットホームにあたっては、ホームドアまたは内方線付き点状ブロックの設置が義務付けられ、既存駅についても努力義務が課せられた。引き続き移動等円滑化基準に基づき、鉄道事業者への指導を行っていく。

(7)鉄道駅構内の案内放送は、聞き取りやすい適正な音量で流すこと。

(技術企画課 金丸)
 バリアフリー整備ガイドラインにおいて、音声、音響案内の音量は、周囲の騒音を考えて十分に聞き取りやすい大きさとすることを定めている。引き続き、ガイドラインの周知を行い、適正な音案内が行われるよう働きかけていく。

(8)無人駅を含む全ての駅で、視覚障害者にとって安全な音声による情報提供、安全対策が十分に取られている駅構内のスマホアプリでの誘導システム等の対策を進めること。

(9)視覚障害者が列車降車後の鉄道無人駅ホームを安全に移動できるよう、列車乗務員によるサポートやホームの安全対策(階段の音声案内装置、ホーム中央の誘導ブロックの設置等)を早急に実施すること。

(技術企画課 金丸)
 陳情項目(8)と(9)をまとめて回答する。
 視覚障害者にとって有効な安全対策であるホームドアの整備は時間や費用を要するため、ホームドアによらない安全対策も検討する必要がある。そのため、視覚障害者支援団体や学識経験者等を委員として「新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会」を令和2年10月に設置した。この検討会にて、視覚障害者のホームからの転落を分析するとともに、ホーム中央の視覚障害者誘導用ブロックの設置や駅構内のスマホアプリ、AI等を活用した対策の検討を行っている。
 国土交通省としては、以上のように様々な手段を講じることで視覚障害者をはじめ、全ての利用者が安全に安心して鉄道を利用できるように取り組んでいく。

(10)鉄道駅の窓口等にタッチパネル等の非対話型システムを導入する場合は、視覚障害者も1人で利用できるよう、AI等を活用した音声認識技術を取り入れること。
(技術企画課 金丸)
 ガイドライン等では、視覚障害者からの問い合わせに対応できるよう、職員等が不在になる時間がある駅や無人駅についてはインターフォンを設置することを定めている。
 指摘のあったAIの認識技術を活用した案内は、駅の利用状況に応じて一部の駅において導入されていることは承知している。今後も指摘いただいた技術も活用して環境の整備を進めていきたい。

(三宅部長)
 視覚障害者の中では、新たな機器の導入の話があると、「従来通りに切符の購入ができなくなってしまうのではないか」という誤解が広がることがある。新たな機器の導入の際には、視覚障害者に向けて、それに伴うサービスの変更等の情報提供や機器の取り扱いを説明する体験会を実施するよう、鉄道事業者に指導してほしい。

(技術企画課 金丸)
 周知や体験会の実施は大切なことであると考えているので、鉄道事業者への指導を行っていく。

(11)視覚障害者が鉄道を安全に利用するため、歩きスマホの禁止等のマナーを啓蒙し、声かけ運動を継続すること。また、これらの活動をマスメディアを活用して周知すること。

(鉄道サービス政策室 大久保)
 歩きスマホに関して、視覚障害者にとっても危険であるということから、鉄道事業者と携帯電話事業者と連携して「やめましょう、歩きスマホ。」キャンペーンを毎年実施している。また、鉄道事業者と警察庁と連携して「迷惑行為に関する連絡会」を毎年開催し、歩きスマホを含めたマナーの啓蒙を行っている。また、駅員や乗客による声かけについても、毎年鉄道事業者と障害者団体が連携して「声かけ・サポート運動強化キャンペーン」を行っていることを承知している。以上の取り組みを通して、障害者への声かけ、見守りが促進されるよう対応していく。

(橋井常務理事)
 最近は、晴眼者で視覚障害者誘導用ブロックを利用しながら歩きスマホをしている人がいる。このことも注意喚起していただきたい。

(鉄道サービス政策室 大久保)
 声かけやキャンペーンの実施を行っているが、国土交通省としても歩きスマホがなくなったという認識ではない。引き続き、声かけやキャンペーンの実施を通して粘り強く対応していきたい。

(三宅部長)
 橋井が指摘したことは、一部報道で「点ブロスマホ」とも言われ、危険である。啓発活動だけではなく、実際に「点ブロスマホ」をしている人を見つけたら、注意するような指導はできないか。

(鉄道サービス政策室 大久保)
 視覚障害者誘導用ブロックを歩きスマホをしながら利用している人には、まずは駅員等から声かけ、注意をしていくことが重要だと思う。そのため、鉄道事業者への共有を行うことで対応したい。

(12)障害者割引に対応した交通系ICカードの適用範囲を全国に拡大すること。

(バリアフリー政策課 中島)
 交通機関の障害者割引は、各交通事業者の自主的な判断によって実施されている。国土交通省としては、障害者の移動の利便性の改善、負担軽減は重要であると考えている。障害者用の交通系ICカードについては、関西圏や九州ですでに導入されていることも承知している。同様に関東圏の交通系ICカード、Suica、PASMOについても導入の要望が大きいことから、令和3年度より、事業者に対して障害者用の交通系ICカードを導入するよう働きかけを行った。結果、令和3年6月に令和4年度後半に導入予定となることを公表した。現在、導入に向けた検討を進めていると聞いているが、具体的な時期、方法等の詳細については、決まり次第発表されることになっている。今後とも関係事業者との連携を図り、取り組みを進めていきたい。

(13)視覚障害者が安全安心に踏切を横断するため、踏切を確実に渡るためのハード面の安全対策、声かけ等のソフト面の支援を全国で広めること。

(路政課 栗原)
 前半部のハード面の安全対策について回答する。
 令和4年4月に発生した奈良県の踏切事故を受け、日視連にも出席をお願いしている「道路空間のユニバーサルデザインを考える懇談会」を5月に開催し、「道路の移動等円滑化に関するガイドライン」を6月に改定した。改定点は、踏切の手前部分に視覚障害者誘導用ブロックを積極的に整備すること、踏切内に関しては、表面に凹凸のついた誘導表示等の設置が望ましいとし、整備内容を明確にした。今後とも道路管理者、鉄道事業者が連携して、道路利用者の意見を踏まえながら、地域と調整して安全な歩行空間の確保を目指していきたい。また、踏切の保安設備である全方位警報装置、非常ボタンの整備、踏切内の歩行者の検知ができる障害物検知装置の設置も推進していきたい。

(鉄道サービス政策室 大久保)
 後半のソフト面での支援について回答する。
 毎年鉄道事業者と障害者団体と協力して「声かけ・サポート運動キャンペーン」を行っている。国土交通省としても声かけ、見守りが促進されるよう、対応していく。

(橋井常務理事)
 踏切内は歩道の幅が狭くなっていることが多い。そのため、幅を広くする等で安全を確保することが望ましい。設置基準のレベルまで改正することはできないか。

(路政課 栗原)
 踏切道改良促進法では、国土交通大臣が指定した改良すべき踏切を道路管理者と鉄道管理者で改良することになっている。指定については、踏切内の歩道の幅、踏切前後の歩道の幅、交通量の多さを基準に、地域の要望も加味して行っている。今後も指定基準と地域の要望を踏まえ、対策を進めていく。

(14)視覚障害者が気づくことが困難な電動キックボードについて、視覚障害者の安全を守るための対策を講じること。

(技術・環境政策課 河野)
 電動キックボードの利用による歩行者の安全確保について、運転者が歩行者に配慮することが大切だと考えている。警察庁でも安全教育の徹底と対策についての検討会議を行い、国土交通省も出席している。そこで関係省庁、関係業界とも連携し、交通ルールの順守も含めた安全対策を進めていきたい。

(佐々木副会長)
 電動キックボードは、大きさ、重さがそれなりにあるので、同じ歩道を走行することに不安を覚える。先日、警察庁に陳情を行った際、警察庁の回答では、全ての歩道を走行できるわけではないと話していた。そうであれば、電動キックボードが侵入してはいけない歩道であるという表示、または電動キックボードが侵入しづらい歩道の設計をしてほしい。

(技術・環境政策課 河野)
 警察庁では、歩道の走行に関して、時速6km以下で徐行し歩行者の妨害にならないようにした上での規制緩和が行われている。今後、電動キックボードで走行できる歩道、できない歩道が決まってくるので、意見については関係部局に共有する。

(橋井常務理事)
 この要望は、電動キックボードだけではなく、無人配送ロボット等にも言えることで、視覚障害者にとっては走行音が静かなものは問題である。陳情項目(17)と被る内容となるが、何らかの方法で音を出して接近に気づけるようにしてほしい。

(技術・環境政策課 河野)
 電動の二輪車について、現在歩行者に対するの接近通報装置の義務付けは行っていないが、今後の交通実態は、国土交通省としても重視していく。無人配送ロボットについても意見を関係部署に伝える。

(15)多くの視覚障害者が安全に歩行できるよう、操作が簡単で安価なナビゲーションシステムを開発し、普及すること。

(バリアフリー政策課 北小路)
 国土交通省では、障害者や高齢者を含むあらゆる人々が円滑に移動できるユニバーサル社会の実現を目指し、ICTを活用した歩行者移動支援サービス「バリアフリー・ナビプロジェクト」を推進している。具体的には地方自治体や施設管理者等の各主体が保有している歩道、公園、公衆トイレや駅構内等の様々なバリアフリーに関する情報データの仕様を定め、オープンデータとして活用できるサイトを現在構築しており、このサイトを活用したナビシステムの開発をしてもらうことを考えている。
 また、「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン バリアフリー整備ガイドライン 旅客施設編」において、東京地下鉄を利用している視覚障害者向け駅構内ナビゲーションシステム「shikAI」や日本橋室町地区で利用されている高精度音声ナビゲーションシステム「インクルーシブ・ナビ」を紹介している。今後も情報提供サービスを行う民間事業者等のオープンデータ活用を推進し、ナビゲーションシステムの普及、促進に取り組んでいく。

(橋井常務理事)
 視覚障害者向けのナビゲーションシステムについては、まだまだ使いにくいものが多く、そもそも歩きながら使うとなると危険である。また、町の中でその都度スマホを開き音声を聞くとしても聞き取りづらい。もう少し簡単に操作できる装置を開発してほしい。
 また、バリアフリーのナビゲーションシステムについての会議に出席したが、なかなか障害者や高齢者の特性を理解したものが作成できていないように感じた。国で基準を作るべきではないか。

(バリアフリー政策課 北小路)
 国土交通省ではアプリの開発までは関わっていないが、総務省等の関係者に要望を伝えたい。また、移動の分野において国土交通省のガイドライン等を活用して、要望の旨の利便性の向上に努めたい。

(総務課 福島)
 現在、「バリアフリー・ナビプロジェクト」を推進しており、仕様を定めたり、利用しやすいよう情報の整理を行ったりしている。アプリの開発に関しては民間が行っているが、民間事業者と話す機会があれば、頂いた意見を情報共有する。

(橋井常務理事)
 民間事業者と話し合う機会には、日視連にも声をかけてほしい。

(三宅部長)
 ナビについて、一般的なナビアプリを使うと、目的地にはたどり着けるが、入り口が分からないために建物に入れないという視覚障害者が多い。このことはあまり知られていないので、オープンソース構築の際に工夫できないか検討してほしい。併せてアプリの開発事業者との話し合いの際には、このことも共有してほしい。

(総務課 福島)
 屋外から屋内への案内に課題があると考えている。国土交通省として、できることを検討したい。

(16)路線バスの行き先案内の車外放送を義務化すること。

(旅客課 佐藤)
 バスの車外放送設備に関しては、「移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備並びに旅客施設及び車両等を使用した役務の提供の方法に関する基準を定める省令」(※5)において、車両への整備が義務付けられている。また、「公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン バリアフリー整備ガイドライン 車両等編」(※6)において、行き先、経路、系統等の案内を行うための車外放送設備を設けることが定められており、視覚障害者の乗降に際して、ノンステップバスである旨や前乗り、中乗り、後乗りであるかを音声で案内することになっている。
 国土交通省としては、今後も障害者のバスの利用環境整備、バス運転者の教育が適切に実施されるよう業者に働きかけていく。

(三宅組長)
 ICカードを利用しての乗車の際、中乗り、後ろ乗りの場合、全国の視覚障害者からはタッチする場所が分からないという声が上がっている。タッチする場所の位置が分かるよう、音が鳴るようにする等の工夫をしてほしい。

(旅客課 佐藤)
 各バス事業者の乗務員が障害者の乗車案内をどのようにしているのか、業界団体と話し合い対応を検討する。

(※5)移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備並びに旅客施設及び車両等を使用した役務の提供の方法に関する基準を定める省令
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/content/001410425.pdf
(※6)公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン バリアフリー整備ガイドライン 車両等編
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/content/001475313.pdf

(17)全てのハイブリッド車や電気自動車に、擬音等の作動を義務付けること。

(車両基準・国際課 河村)
 国土交通省は、平成22年4月にハイブリッド車等の静音性に関するガイドラインを定め、一定の要件を満たした音の出る装置を任意で装備できるように自動車メーカーに通知している。これによりガイドラインに沿った自動車が少しずつ世に出回るようになっている。さらに国際連合においては、本ガイドラインを踏まえ、車両接近通報装置について議論が行われ、平成28年10月に基準が成立し、日本もこの国際基準を導入している。
 また、国土交通省では、平成30年3月より、電気自動車やハイブリッド車の新型車について、車両接近通報装置の搭載を義務付ける安全対策を実施している。

(三宅部長)
 停車中のハイブリッド車や電気自動車は無音となり、多くの視覚障害者は気づけない。このことで困っている視覚障害者は多く、今回の要望へと繋がっている。車両接近通報装置だけではなく、車両の存在を知らせる手段の検討もしてほしい。
 また、車両接近通報装置については、新車への設置の義務化は承知しているが、義務化前の車両への設置は徹底されていないので、設置義務化を検討してほしい。

(車両基準・国際課 河村)
 停車中の無音状態について、把握していなかったので、検討する。
 また、車両接近通報装置の搭載義務化について、一度ユーザーの手に渡った使用過程車への設置を一律に義務付けることは難しい。ただ、平成30年3月より搭載の義務化を行っているので、今後、車両接近通報装置未登載車は減少していくと思われる。

(三宅部長)
 何かキャンペーン等を行う等、車両接近通報装置の設置を推進するような取り組みを検討してほしい。

(18)賃貸住宅の貸主や不動産業者に対して、障害を理由とする借用拒否は差別的取り扱いであることを周知し、そうした差別をしないように指導すること。
(不動産業課 愛内)
 国土交通省は、不動産業関係者に向けて「国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」(※7)を作成し、業界団体に周知をしている。また、宅地建物取引業法においても、運用において宅地建物取引業者の社会的貢献に関する意識の統一のため、障害を理由とする賃貸住宅の売買の業務に係る不当な差別を含め、あらゆる差別の解消に関する教育、啓発を行っている。
 今後とも障害を理由とした差別の解消に向けて業界団体とともに問題に取り組んでいく。

(三宅部長)
 視覚障害者がアパートやマンションを借りようとすると、火災を起こすのではないか、階段から落ちるのではないか等、根拠のない大家の誤解により借用を断られることがある。宅地建物取引業法以前の不当な差別にあたり、是正が義務化されているので、周知徹底をお願いしたい。

(住宅局 伊倉)
 大家の業界団体も障害者の不当な入居拒否問題について把握しており、障害者差別解消法に基づく差別の解消に向けたガイドブック等を作成し、全国の大家への周知を行っている。国土交通省としても業界団体と連携し、大家の理解が得られるように進めていく。

(※7)国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/sosei_barrierfree_tk_000063.html



06 警察庁



1.日時
 令和4年8月24日(水) 15時00分〜16時00分

2.場所
 オンライン(Zoom)

3.出席者
(1)日本視覚障害者団体連合
                      会長  竹下 義樹
                     副会長  佐々木 宗雅
                    組織部長  三宅 隆
                    情報部長  吉泉 豊晴
                     事務局  佐藤 絵里
(2)警察庁
 交通局
  企画課                     塩野
  交通規制課                   大川
                          宮島
                          川瀬

4.陳情項目、回答、意見交換

(1)障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の第10条により、貴庁が所管する施策において視覚障害者への情報保障をさらに進めるための措置を講じ、あるいは予算を確保すること。

(交通企画課 塩野)
 警察庁においては、都道府県警察の警察官を対象とした、障害者への接遇のあり方について教育するための動画コンテンツを作成しており、各都道府県警察にこの動画を活用した研修を行わせている。ご指摘いただいた法律の施行時には、警察庁から各都道府県警察に対して、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の一層の推進を図るよう指示をしている。今後も都道府県警察への指導を行うとともに、視覚障害者を含めた障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に関して、各種警察庁の施策を進めていきたいと考えている。

(三宅部長)
 接遇の教材を作り各都道府県警察に対して指導していることは、我々も承知している。引き続き、視覚障害者が実際に各都道府県警や所轄の警察署に行った時の、視覚障害者への情報提供や視覚障害者から情報を提示する場合の方法について、さらにご配慮いただけるよう、各都道府県警察に周知していただきたい。

(交通企画課 塩野)
 指摘いただいた点を踏まえて施策を進めていくとともに、接遇のあり方については、機会を捉えて周知していきたいと思う。

(三宅部長)
 この法律に直接関連するわけではないが、警察官の視覚障害者への対応について気になることがある。まだ白杖の使用に慣れていない視覚障害者が道を歩いた時に、不審者と思われて警察官に呼び止められたと相談を受けたことがある。視覚障害者の中には、白杖の使用に慣れていない者もおり、全員がスムーズに使えるわけではないということを理解していただきたい。そして、慣れていない視覚障害者には、助けがいるかどうか声をかけることもお願いしたい。

(交通企画課 塩野)
 白杖を使用されている方や盲導犬を使用している方について、動画コンテンツではどのように声掛けをすれば良いのかということも併せて指導している。ご指摘いただいた事例を踏まえてより一層の周知を進めていきたいと思う。

(2)歩車分離式信号機やラウンドアバウト(環状交差点)、歩行者先行信号交差点を視覚障害者が安全に渡れるようにするため、音響式信号機やエスコートゾーンを設置すること。

(交通規制課 大川)
 歩車分離式信号機に対する音響式信号機の整備については、市町村が定める重点整備地区における駅や観光地、病院等を結ぶ主要な生活関連経路を中心に実施している。また、重点整備地区以外においても、視覚障害者の利用頻度の高い施設の周辺において、需要が見込まれる箇所から整備を進めている。警察庁では、歩車分離式信号機のうちスクランブル方式や歩行者専用現示方式の信号機に対して、視覚障害者用付加装置を優先的に設置するよう、都道府県警察に指導している。
 また、ラウンドアバウト(環状交差点)は車両の通行速度が低下するため、事故の被害が軽減する等の効果が見込まれているが、視覚障害者にとって、横断するタイミングが分かりにくいという意見があることも承知している。ラウンドアバウトには信号機が無いことから、音声案内を流す装置の設置は困難だが、引き続き道路管理者や関連機関と連携して、視覚障害者が安全に移動できる道路構造等となるように配備していきたいと考えている。いずれにしても、警察庁としては個別具体の交通実態等に応じて適切な交通安全対策を講ずるよう指導している。

(3)押しボタン式の音響式信号機の設置を推進し、誘導音は24時間作動可能とすること。

(交通規制課 大川)
 音響式信号機の整備にあたっては、視覚障害者と地域住民の双方の理解を得ながら、視覚障害者を始めとした道路利用者が安全に道路を利用できる環境を整えるように、適切な音量や稼働時間で運用する他、押しボタン等の操作時のみ鳴動させるような機能を活用していくように都道府県警察を指導している。このように、警察庁としては、視覚障害者が安全かつ円滑に移動できる環境の整備を進めている。

(三宅部長)
 この要望には「24時間信号機が作動すること」と記載しているが、誘導音を周りに響き渡る音量で24時間鳴らすこと以外に、24時間視覚障害者が信号の色が分かる状態を作ってほしいという思いが込められている。回答の中で、鳴らすのが難しい時間帯や鳴らし方を工夫しなければいけない時間帯についても指導しているとのことだが、警視庁管内では、昼間だと「ピヨピヨ・カッコー」、夜間だと小さめの音声で「青になりました」や「まもなく赤になります」と24時間知らせる仕組みがあると思う。この仕組みを他の都道府県警察ではなかなか取り入れてもらえないことが多く、地域の団体から相談を受けることがある。警察庁から、各都道府県警察で採用されている有用な音響式信号機のシステムを各都道府県警察に対して具体的に提示しているのだろうか。警察庁から有用なものを紹介していただければ、導入されていない地域でも導入を検討する材料となると思うので、「他の地域ではこのような有用なものがある」と紹介していただきたい。

(交通規制課 宮島)
 夜間に誘導音を鳴らす県警の仕組みについて、警察庁としては、例えば、夜間のみ押しボタンを押した時だけ音が鳴る仕組みや高度化PICSを利用することについて検討するよう、都道府県警察に指導している。こういったものを踏まえて、都道府県警察で個別の交差点等で設置できるか検討してもらっている。
 また、都道府県警察に対して、機器の紹介まではしていなかったが、押しボタンを押したときだけ音を鳴らしたり、音量を調節したり、高度化PICSを利用することについては紹介している。

(佐々木副会長)
 夜間では押しボタン式の信号機が有効だと思うが、設置台数が伸びていない。都道府県警察からの説明だと、信号機の更新時期があり、その更新時期に合わせて移行しているため一気には増やせないとのことだった。安全に関わるシステムのため、できれば信号機の更新時期に関わらず導入していただきたい。

(交通規制課 宮島)
 都道府県警察に要望していただければ、要望を踏まえて都道府県警察で検討すると考えている。

(竹下会長)
 押しボタン式にせよ、高度化PICSにせよ、どちらかが夜間に起動するということが広がれば、我々としては非常に大きな安全の環境が広がったと思える。我々としても、地域の団体から都道府県警察に申し入れしていきたいと思うが、機会があれば警察庁からも周知していただきたい。

(三宅部長)
 令和3年度より、警察庁を中心として高度化PICSに国の予算を付ける際は、全国のある1か所ではなく、できれば面的に整備をするように整理をつけている。ただ、どこまで整備されているのかが我々には見えないところがあり、全国の視覚障害者より普及状況の問い合わせがある。普及状況について、どこに何か所整備されたか等、データは公開されているのか。

(交通規制課 大川)
 高度化PICSの設置場所については、警察庁のホームページ「高度化PICS整備交差点」(※1)でデータを公開している。また、各都道府県のホームページにもデータが公開されているものと承知している。特に、都道府県警察のホームページには詳細な場所も地図付きで掲載されているところもあるので、是非ご覧いただければと思う。

(※1)高度化PICS整備交差点
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/seibi2/annzen-shisetu/utms/pics.html

(4)音響式信号機の稼働していない時間帯に、青信号を振動等で確認できる装置を全国に普及させること。

(交通規制課 大川)
 警察庁では、視覚障害者用付加装置の音響を鳴動させることが困難な時間帯がある場所やその装置が設置できない場所を中心として、高度化PICSの整備を検討するよう都道府県警察を指導している。なお、高度化PICSに対応するスマートフォンのアプリには、信号機の色に応じてスマートフォンを振動させることにより、利用者に灯色情報を伝える機能がある。このように、警察庁としては高齢者や障害者が交差点を安全かつ円滑に横断できる環境の整備に向け、高度化PICSの普及促進について都道府県警察を指導している。

(5)高度化PICSに対応する信号機の低価格化を図り、全国で普及させること。

(交通規制課 大川)
 警察庁としては、高齢者や障害者が交差点を安全かつ円滑に横断できる環境の整備に向け、高度化PICSの普及促進について都道府県警察を指導している。

(6)高度化PICSの導入においては、必ず従来型の音響式信号機等を併用すること。

(交通規制課 大川)
 警察庁では、視覚障害者用付加装置の音響を鳴動させることが困難な時間帯がある場所やこの装置が設置できない場所を中心として、高度化PICSの整備を検討するよう都道府県警察を指導しており、一律に高度化PICSと視覚障害者用付加装置をセットで整備することとはしていない。個別具体の交通実態等に応じて適切な交通安全対策を講じるよう、引き続き、都道府県警察を指導していきたいと考えている。

(佐々木副会長)
 私たちとしては、基本的には、音響式信号機の補完システムとして高度化PICSや振動する信号補助装置の設置をお願いしている。そして、補助装置の推進とは別に、音響式信号機をもっと増やしてほしいと思っている。なお、音響式信号機の設置の伸び率が低いように思うが、警察庁にはどのような数字が挙がっているのか。

(交通規制課 大川)
 細かい数字は手元にないが、信号機が全国で21万弱ほどあり、そのうちの十数パーセントは音響式信号機が設置されていて、このパーセンテージは若干上がっていると認識している。バリアフリー法で主要な生活関連経路上には音響式信号機やエスコートゾーン等を設置するように謳われているため、対応を進めていきたいと考えている。

(佐々木副会長)
 私たちの実感では、音響式信号機の設置の進捗率が低くなっているように感じる。設置率を上げるようにしていただきたい。
 また、高度化PICSの普及促進を図るとのことだが、令和4年度については、警視庁管内では新たな高度化PICSの設置の計画はなされていない。全国的には、今後も高度化PICSを普及させていくのか。

(交通規制課 大川)
 高度化PICSの整備について、確かに警視庁としては令和4年度中の計画はないと承知しているが、それ以外の道府県ではそれなりに整備予定があると聞いている。引き続き、意見を伺った上で必要に応じて整備がなされるよう指導していきたいと考えている。

(竹下会長)
 高度化PICSに限らず、信号機の種類やシステムについて、「今後はこういうものに統一していく」という形で、警察庁が都道府県警察に指針を示していくことはあるのか。

(交通規制課 宮島)
 全国の音響式信号機の今後の整備について、警察庁としては、視覚障害者用付加装置をメインに整備を進めていくと考えている。それを補完するという意味で、高度化PICSも併せて整備していくと考えている。

(竹下会長)
 警察庁は音響式信号機を基本に置いているとの考えが聞けて嬉しく思う。高度化PICSがいけないという意味ではなく、音響式信号機の補完として高度化PICSを整備してほしいという思いから陳情項目(6)を要望している。基本は音響式信号機で、それを補完する形で高度化PICSが併用されると、我々の安全性が向上すると思っている。

(7)視覚障害者が気づくことが困難な電動キックボードについて、視覚障害者の安全を守るための対策を講じること。

(交通企画課 川瀬)
 令和4年4月に道路交通法の改正が行われ、性能上の最高速度が自転車と同程度である等の一定の要件を満たす電動キックボード等は運転免許を必要としないとした一方で、16歳未満の者の運転は禁止することとした他、走行場所やヘルメットの着用については自転車と同様の交通ルールとすることとされている。併せて、交通ルールを周知するために、電動キックボード等の販売事業者に対して、購入者や利用者に対する交通安全教育を行うことを努力義務として課すこととしている。その具体的な内容については、現在、関係省庁と事業者とで組織しているパーソナルモビリティ安全利用官民協議会において、視覚障害者等への配慮に関する意識の向上や運転者の安全に対する意識の向上、運転マナーの向上に資するものとなるよう、検討している。警察庁としては、交通ルールが広く国民の皆様に注視されるよう、積極的な広報啓発等を行うとともに、悪質、危険な行為に対する取り締まりを徹底し、歩行者を始めとする全ての交通の主体の方々の安全な通行を確保したいと考えている。

(佐々木副会長)
 視覚障害者を含めた歩行者と電動キックボードが同居することは、危険だと思っている。今でさえ、自転車が歩道を走って視覚障害者の白杖を折ったりしており、自分自身も被害に遭った。そういう状況の中で、次は電動で馬力のある電動キックボードが走ることに不安がある。電動キックボードは専用の許可された歩道しか走行できないようになるとも聞いているが、実際は、歩道を走行するだろう。自転車も歩道に入って走行している。少なくとも、一般の歩道については電動キックボードの侵入を規制できないのか。

(交通企画課 川瀬)
 新しい法律に基づくと、歩道を走行することができる電動キックボードはかなり限定されている。まず、速度が時速6kmを超えないように電子的な整備がされないといけないということと、外から見て本当にその状態になっているか判別できなければならないとなっている。また、自転車も走ってよいとなっている限定的な歩道に関してのみ走行できるとされている。これについては、仮に違反した場合、取り締まりの対象となるし、警察としてもしっかりと取り締まっていきたいと考えている。

(竹下会長)
 走行できる歩道は極めて限られたところで、時速6km未満限定という要件だが、「限定された歩道しか走れない」ということがいつの間にか「歩道を走れる」というように認識されてしまう。自転車がまさにそうではないか。

(交通企画課 川瀬)
 それは警察庁としても認識しており、自転車も含めてどういった場合には走行できて、どういった場合には走行できないかについて、新しい交通ルールとともにしっかりと周知していきたいと考えている。

(三宅部長)
 横断歩道等で車は赤信号で止まっていて歩行者が渡っているにも関わらず、平気で突っ込んでくる自転車がいる。自分の視覚障害者の家族も先日自転車に轢き逃げされて怪我をした。これに関して、電動キックボードが原付扱いということなら、信号無視であるため取り締まりができると思うが、これについて指導はされるのか。電動キックボードも免許不要で乗れるようになるのだとすると、この意識付けをどのように対策していくのか。

(交通企画課 川瀬)
 横断歩道においては、当然、歩行者の優先義務があり、電動キックボードも原付扱いであるため、歩行者の優先義務がある。そのため、信号の有無に関わらず、横断歩道において歩行者は優先されるべきものであり、仮に渡ろうとしている歩行者がいたら一時停止をしなければ取り締まりの対象となる。歩行者に対する妨害行為については、警視庁でも力を入れて取り締まっている。引き続き、歩道では歩行者が優先されるよう、交通ルールの周知等、取り締まりを徹底していきたいと考えている。
 また、特に、電動キックボードの免許が不要となることについて、どのように運転者に交通ルールを周知していくかが重要だと思っている。販売事業者やシェアリング事業者に対して、販売やシェアリング事業の提供をする際に、利用者に交通ルールを学ばせる交通安全教育を実施することが努力義務として課せられているため、そこでしっかりと周知していきたいと考えている。交通安全教育の中身については、現在、官民で協力して具体的な検討を進めている。このように、利用者に交通ルールを周知していきたいと考えている。まず、この新しい交通ルールを周知することが一番重要であると考えているため、しっかりと対応していきたいと考えている。

(竹下会長)
 デンマークは自転車のルールについて非常に厳しい。自分がデンマークに行った際、自転車が歩道を走ることは全くなかった。これは恐らく、交通ルールに対する指導の問題と、道路自体の環境が一体となって、デンマークでは当たり前になっているのだろうと感心した。
 今後、電動キックボードを便利で安全性の高い移動手段として定着させるためには、厳しい指導が必要ではないかと思う。警察庁においても、我々の思いをご理解いただきたい。



07 総務省



1.日時
 令和4年8月24日(火) 13時30分〜14時00分

2.場所
 総務省 行政相談室(中央合同庁舎第2号館1階)

3.出席者
(1)日本視覚障害者団体連合
                      会長  竹下 義樹
                    組織部長  三宅 隆
                     事務局  木村 幸平

(2)総務省
 情報流通行政局
  地上放送課               主査  樋口 海里
  情報流通振興課 情報活用支援室     主査  日樫 誠
 自治行政局
  選挙部選挙課           総務事務官  森田 結衣
  選挙部管理課           総務事務官  但馬 佑典

4.陳情項目、回答、意見交換

(1)公職選挙法を改正し、全ての議会選挙・首長選挙において、選挙公報が発行される場合は、点字版、音声版、拡大文字版等の選挙公報を発行するように義務化すること。

(選挙課 森田)
 ご要望の点字版、音声版、拡大文字版等の選挙公報を制度化することは、各選挙管理委員会の中でこれらの媒体を限られた時間で誤りがなく作成し、地域の視覚障害者に公平に配布することができるかに課題があると考えている。また、候補者から提出された原稿には図や表を用いることがあり、音声版でこれらを正確に読み上がることができるかといった技術的な課題もあると考えている。
 なお、総務省においては、国政選挙や統一地方選挙の際に各都道府県の選挙管理委員会に対して、有権者である視覚障害者の意向に沿えるよう、点字版、音声版、拡大文字版の選挙のお知らせを地域で必要となる数を発行することを依頼している。このことは、今後の選挙においても継続的に行っていく。

(竹下会長)
 令和4年7月に行われた第26回参議院議員通常選挙では、選挙のお知らせの発行や配布において様々なトラブルがあった。例えば、ある県では選挙のお知らせを発行するための啓発費用が減ったため、視覚障害者向けの選挙のお知らせの発行数を減らした。また、要望している媒体が届かない等の問題も各地で発生している。こういったことは、私たちとしては納得できないことなので、その改善を求めるために今回も総務省に要望を出している。
 また、選挙のお知らせの配布においては、様々な問題があると考えている。例えば、選挙管理委員会によっては、視覚障害の有権者がどの媒体を求めているのかを確認することが煩雑になるため、点字版、音声版、拡大文字版の3つを送ってくるところがある。この場合、必要な媒体は1つであることが多いので、必要な媒体以外はゴミになってしまい、製作費用が無駄になってしまう。一方で、視覚障害者の中には選挙のお知らせの意義や価値を理解していないのか、受け取ることを拒否している者もいる。選挙のお知らせを配布することにおいては、情報を発信する側、情報を受ける側、双方に問題があると言える。
 さらに、技術的な部分では、私たち側にも課題があると考えている。例えば、全国各地で発行される選挙のお知らせのクオリティを維持しつつ、円滑な配布を行うために、私たちは日本盲人福祉委員会を中心に視覚障害者選挙情報支援プロジェクトを組織し、選挙のお知らせを作る全国の施設等が連携している。しかし、この枠組みに入っていない施設等もあり、こういった施設等で作った点字版は技術不足なのか当事者が読めない点字版を作っていることがある。また、発行した点字版等を違う選挙区に送った事例もあった。つまり、選挙のお知らせを発行する側が、正確に発行し、正確に配布できるかが課題となっている。
 これらの問題や課題があることを踏まえると、要望のように、国の制度化が必要だと思ってしまう。そうでないと、誰にとっても公明正大に選挙が実施されないことになってしまう。もちろん、回答のように視覚障害者へ全戸配布することに問題や課題があることは承知しているが、今の技術を駆使すれば対応可能だと思うので、要望の実現に向けた検討を進めてほしい。

(選挙課 森田)
 制度化や義務化となると公職選挙法等の法律を改正するため、残念ながら早期に実現することは難しい。総務省として今できることは、選挙のお知らせを適切に配布してもらうことを各都道府県の選挙管理委員会へお願いすることになってしまう。ただ、現行の制度の中で運用面の改善で対応できるのであれば工夫をしたい。

(竹下会長)
 制度化や義務化のハードルが高いことは承知しており、私たちも今できることから改善していくことが大切だと思っている。引き続き、頑張ってほしい。

(三宅部長)
 選挙公報のことで質問がある。公職選挙法には選挙公報の位置づけが記載されていると思うが、この部分を変えることは可能なのか。回答の中で「同一のものを作ることが難しいのではないか」との指摘があった。私たちも点字版や音声版で図や表をまったく同じように作ることは難しいと思っている。ただ、例えば、「視覚障害者に向けた媒体はその媒体が作れる範囲で原文を訳すことが可能」といった旨を公職選挙法に書き込むことができれば、選挙公報として点字版等が発行できるのではないか。もちろん、現行の公職選挙法に新たな解釈を入れる等、運用面での対応ができるのであれば、その方法でも良いと思う。

(竹下会長)
 「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」が令和4年5月に施行されたことを踏まえると、やはり、視覚障害者が選挙公報を読みたくても読めない状況に置かれていることは、大きな問題だと思う。選挙公報は法律で認められている。一方で、選挙のお知らせは任意となり法的に保障されたものではない。三宅が指摘したように、例えば、公職選挙法にみなし規定を設け、点字版等の選挙のお知らせを選挙公報として認めるようなことはできないのか。

(選挙課 森田)
 現状の公職選挙法の範囲では、候補者から提出された原稿をそのまま掲載する必要があることから、視覚障害者向けの点字版、音声版、拡大文字版は選挙のお知らせとして発行している。このことに問題や課題があることは総務省としても理解している。引き続き、改善ができるように検討を進めていく。

(2)障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の第10条により、貴省が所管する施策において視覚障害者への情報保障をさらに進めるための措置を講じ、あるいは予算を確保すること。

(管理課 但馬)
 この要望は、政見放送の範囲で回答する。
 国政選挙の政見放送に要する経費については、選挙公営制度により国費で負担している。一方で、政見放送における障害者に対する取り組みも行っており、その一つが政見放送手話通訳士研修会の開催になる。将来の国政選挙に向けて段階的にこの研修会の履修者を増やし、国政選挙において手話通訳を付すために必要な手話通訳士を確保するために、平成29年度以降、研修履修者が少ない地方都市等の手話通訳士を対象とした研修会の開催を増やしている。今後も、これらの取り組みを進めていきたい。

(竹下会長)
 政見放送で聴覚障害者に向けた手話を充実させることは、障害者への情報提供を底上げする効果があり、障害者全体にとって良いことだと思っている。
 ただ、最近の政見放送を聞いていて不満に思うことがある。候補者によっては演説ではなくビデオを流す方法を用いる候補者が増えている。この場合、多くの候補者はビデオの中で文字や図を使った説明をしている。ただ、表示した文字や図の読み上げがなく、多くの視覚障害者は説明している内容を知ることができない。このことは早急に改善すべきだと思う。

(選挙課 森)
 最近の法改正により持ち込みビデオが可能になったことで、多くの候補者がビデオを用いた政見放送を選ぶ傾向にある。このことは総務省でも承知している。

(三宅部長)
 政見放送を流す候補者や政党は、テレビを見ている人の中に視覚障害者がいることを認識すべきだと思う。もし、このことを認識してくれれば、ビデオを流す方法を工夫してくれるかもしれない。ぜひ、総務省から候補者や政党に対して、視覚障害者がいることを踏まえたビデオを作るよう、働きかけてほしい。

(3)テレビ放送において、緊急放送、ニュース速報及び放送中のテロップ等の音声化、並びに外国語字幕の音声化または日本語への吹き替えをすること。また字幕やテロップについては、弱視者に配慮した表示自体の拡大と時間の延長を行うこと。

(地上放送課 樋口)
 総務省では、平成30年2月に字幕放送、解説放送、手話放送等の令和9年度までの目標値を定めた「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」(※1)を作成している。この指針には「大規模災害時等にチャイム音とともに緊急・臨時に文字スーパーを送出する場合、できる限り読み上げる等により音声で伝えるよう努めるものとする」と記載しており、この指針に沿って各放送事業者は緊急放送時における視覚障害者への配慮を行っている。なお、この指針は令和4年度に見直しを行うことになっている。見直しに際しては、障害者の意見を整理し、どのような見直しが必要なのかを検討するため、障害者団体を交えた検討会を開催する予定になっている。
 また、テレビ番組の放送中の緊急放送については、各放送事業者より主に次の4つの対応を行われていることを聞いている。1つ目は、速報の内容が国民の生命・財産に関わる場合は、生放送中であってもその担当責任者の判断で読み上げること。2つ目は、録画番組であれば、番組を中断して特設ニュースを編成して対応すること。3つ目は、緊急地震速報についてはサイン音の後に自動音声を送出して注意喚起を行うこと。4つ目は、拡大字幕については、深夜・早朝に災害等が発生した場合、表示時間の長い文字スーパー、地図スーパー、L字放送を活用して情報を確実に届けること。総務省としては、今後も放送事業者がこれらの対応を行えるようにしていきたい。
 また、要望の外国語の日本語吹き替え及び日本語字幕の音声化については、放送番組中に外国語音声があった場合、放送事業者は日本語吹き替えする方法と日本語訳を字幕表示する方法の2つのパターンで対応している。ただし、放送事業者から聞いている範囲では、翻訳前の元の音自体がニュースの重要な情報源となっており、視聴者からも翻訳前の発言を正確に知りたいという声も寄せられている事情があるため、字幕にするか、音声の吹き替えにするかは、編集する責任者の判断によって対応している。また、字幕、日本語訳字幕の副音声化については、放送事業者から聞いている範囲では、放送中に部分的に副音声にすることは技術的に難しいため、対応ができないとのことだった。
 これらを踏まえ、総務省としては、技術的な解決方法の検討を含め、引き続き、障害者の情報アクセシビリティの向上が促進されるよう、取り組みを進めていきたい。

(三宅部長)
 要望の補足として、視覚障害者がテレビを見ていてどのようなことに困っているのかを説明したい。まず、私たちはテレビの緊急速報の中で、チャイムが鳴り、字幕を読み上げない緊急速報に強い不満をもっている。例えば、生命の危機を脅かすような事件があった場合、緊急速報で字幕が出て、音声で読み上げを行った。この場合、視覚障害者は「大変な事件が発生した」と知ることができるだろう。ただ、その後、事件が解決して、緊急速報で「事件は解決しました」と字幕が出て、音声で読み上げなかったらどうなるだろうか。視覚障害者は事件が解決してないと認識したままでいる。字幕を音声で読む・読まないだけで、これだけ情報の格差を生んでしまう。緊急速報の字幕を読める者と読めない者の間で情報の不平等が発生していることは大きな問題だ。回答では技術的に字幕の音声化等ができない旨の話があったが、私たちが知っている範囲では、字幕を音声化することは今の技術で十分に対応できると聞いているので、実現に向けて前向きに検討してほしい。

(竹下会長)
 内閣府の障害者政策委員会では、第5次障害者基本計画の内容について議論を行っている。この中で、総務省は手話や解説放送等の目標値のことを報告しているが、報告を聞く限りではこの5年間で視覚障害者向けの解説放送等は殆ど前進していない。今回の回答や目標値の動きを踏まえると、国が本当に努力しているのか疑問に思ってしまう。
 また、今回の回答を聞いていると、視覚障害者への対応は放送事業者に判断を委ねていてる部分が強く、総務省が何も指示をしていないとしか思えない。そのような対応で本当によいのか。総務省が回答から逃げているとしか思えない。もっと、総務省として真剣に対策を考えるべきだと思う。もし、費用面で課題があるのであれば、総務省が費用を補助する等、前向きな対応が必要だと思う。例えば、国土交通省が全国の鉄道駅バリアフリー化を加速させるために、鉄道運賃にバリアフリーの費用を上乗せする方法を創設しているが、これと同じようなことが放送分野でも導入できないのか。ぜひ、検討してほしい。

(※1)放送分野における情報アクセシビリティに関する指針
https://www.soumu.go.jp/main_content/000531258.pdf

(4)ウェブサイトのバリアフリー化を進めるため、JIS X 8341-3に準拠したウェブアクセシビリティの普及を進めること。特に、国や自治体等の公共機関は民間の見本となるよう、率先して普及を進めること。

(情報流通振興課 日樫)
 総務省では、高齢者や障害者を含む誰もが国及び地方公共団体等の公共機関のウェブサイトを利用しやすくなるようにするため、平成28年4月に「みんなの公共サイト運用ガイドライン」(※2)を改訂・公表した。このガイドラインはJIS X 8341-3に基づいて作成しており、公表以降、総務省ではこのガイドラインに基づいた周知広報を行ったり、公的機関の担当者向けの説明会を実施している。なお、令和4年度は調査研究事業を実施したり、公的機関の担当者向けの説明会を東京・大阪・福岡で開催することを予定している。今後は、自治体等の意見を聞きながら、必要に応じてガイドラインの改定も行っていきたいと考えている。

(竹下会長)
 要望の中で「特に、国や自治体等の公共機関は民間の見本となるよう、率先して普及を進めること」は、総務省としてどのように考えているのか。こういったウェブサイトのバリアフリー化は、私たちとしては民間レベルまで広まらないと意味がないと思っている。もし、国や自治体のウェブサイトがバリアフリー化していないのなら、民間は真似しないだろう。

(三宅部長)
 調査研究事業を実施しているとの回答があった。その調査では、国や自治体等でウェブサイトのバリアフリー化の実施状況を調べているのか。

(情報流通振興課 日樫)
 総務省では「自治体DX・情報化推進概要(地方公共団体における行政情報化の推進状況調査結果)」(※3)を毎年公表しており、ウェブサイトのバリアフリー化の実施状況等を報告している。なお、JIS X 8341-3の準拠率は76.5%になっている。

(三宅部長)
 「みんなの公共サイト運用ガイドライン」は、JIS X 8341-3の基準における「AA(ダブルエー)」までの内容を求めている。一方で、教えていただいたJIS X 8341-3の準拠率は、「A(シングルエー)」等のAA以下を含めた結果になるだろう。そうなると、「みんなの公共サイト運用ガイドライン」を推進することと、調査結果がアンマッチになり、国が進めたいことの目標が定めにくくなってしまう。調査の方法は考え直した方がよい。
 また、調査をするのであれば、好事例を整理することも意識してほしい。自治体によっては「AAA(トリプルエー)」の基準でウェブサイトを作っている所があると聞いている。こうった好事例があれば、私たちから全国の自治体に宣伝し、好事例を広めることもできるだろう。

(※2)みんなの公共サイト運用ガイドライン
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/b_free/guideline.html
(※3)自治体DX・情報化推進概要(地方公共団体における行政情報化の推進状況調査結果)
https://www.soumu.go.jp/denshijiti/060213_02.html

(5)マイナンバーカードを用いた行政手続きのデジタル化を進める際は、音声読み上げやウェブアクセシビリティにも十分配慮し、視覚障害者が取り残されることのないよう徹底すること。

(竹下会長)
 陳情項目(5)は回答がないとのことだが、意見だけ述べさせてもらう。
 実はデジタル庁にも同じ要望をしたが、デジタル化のことで個別具体的な施策の要望は担当する府省庁に問い合わせてほしいといった旨の回答があった。そして、今回、総務省に要望したが回答がもらえなかった。これらの回答を聞くと、改めて行政の縦割り意識を感じてしまう。確かに、マイナンバーカードやデジタル化といったキーワードで考えると、各府省庁で所管が別れるのかもしれない。ただ、視覚障害者にとっては要望の「視覚障害者が取り残されることのないようにすること」が実現できるかどうかが重要で、府省庁の縦割りは必要ではない。各府省庁が連携しながら、しっかりと対応してほしい。

(6)公的機関等から提供される情報は、音声、点字、拡大文字、テキストデータ等で提供すること。

(7)行政機関に提出する各種書類は、視覚障害者が確実に記入できるよう、関係府省庁のデジタル化を推進すること。

(竹下会長)
 陳情項目(6)と(7)も回答がないとのことだが、意見だけ述べさせてもらう。
 以前の陳情では、これらの要望は各自治体に要望すべきとの回答があったと記憶している。そうなると、これらの要望は全国1,700の自治体に対して個別に要望することになる。つまり、要望を全国で実現させようとすると1,700回も同じことを言わないといけない。要望を実現するまで、いったい何年かかるのだろうか。やはりこれらの情報保障に関することは、国内のどこに行っても同じ対応が受けられるべきだと思うので、要望のことは、総務省が責任をもって全国の自治体へ指導すべきだと思う。



08 経済産業省



1.日時
 令和4年9月7日(水) 9時30分〜11時00分

2.場所
 オンライン(Zoom)

3.出席者
(1)日本視覚障害者団体連合
                     副会長  及川 清隆
                     副会長  片岡 美佐子
                    常務理事  橋井 正喜
                    組織部長  三宅 隆
                     事務局  石原 慎太郎

(2)経済産業省
 経済産業政策局
  経済社会政策室           室長補佐  村山 恵子
                      係長  芳賀 諒太
 商務情報政策局
  商務サービスグループ
   消費・流通政策課         統括係長  林 直紀
   医療・福祉機器産業室       室長補佐  南須原 美恵
  情報産業課             統括係長  木村 鴻志
 製造産業局
  自動車課              総括係長  渡邊 太稀
  生活製品課             総括補佐  前場 卓也
 大臣官房 広報室           室長補佐  川森 敬太

4.陳情項目、回答、意見交換

(1)障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の第10条により、貴省が所管する施策において視覚障害者への情報保障をさらに進めるための措置を講じ、あるいは予算を確保すること。

(経済社会政策室 村山)
 経済産業省では、JIS X 8341シリーズやアクセシブルデザインによる規格の標準化、福祉用具の研究開発の推進を実施している。そして、本法律施行に合わせて、機器の開発、導入を行う事業者や関連する業界団体に情報アクセシビリティ関連機器の開発の現状、課題、今後の方向性についてヒアリングを行っている。ヒアリングを踏まえて、経済産業省として何ができるか、関係省庁と連携しながら検討していきたい。

(及川副会長)
 令和5年度予算に向けて、予算項目案等を作成しているのか。

(経済社会政策室 村山)
 同法の施行が令和4年5月からとなっており、現在、予算措置として要求しているものはないが、業界団体等へのヒアリングを通して必要な支援を整理して、予算要求に繋げていこうと考えている。

(及川副会長)
 視覚障害者にとって関心の高い事柄であるので、同法に関連した予算請求を国会に提出する際は、情報提供してほしい。また、日視連から同法に関連した情報提供が必要な場合は、声をかけてほしい。

(経済社会政策室 村山)
 政策を議論する際は、日視連からも意見を聞かせてもらう。

(三宅部長)
 経済産業省では同法の第11条の機器開発に関わることが多いと思う。そうした中で近年ICTを利用した機器を視覚障害者が利用できないということが多々聞かれるので、機器開発の段階での各メーカーへの働きかけを検討してほしい。

(2)盲導犬使用者の入店拒否をなくすために、身体障害者補助犬法の理念等を関係事業者等に周知すること。

(消費・流通政策課 林)
 経済産業省としては、障害者が安心して経済活動を行えるようにすることは重要であると考えており、要望の事業者に身体障害者補助犬法を理解してもらうことが必要となっている。
 例えば、コンビニの業界団体では、従業員の接客について場面別で声かけ等の対応マニュアルを作成し、実践している。このように現場レベルで法律の理念を浸透させることが重要だと考えている。経済産業省としても引き続き、周知啓発に取り組んでいく。

(橋井常務理事)
 身体障害者補助犬法は施行から20年が経つ。しかし、盲導犬ユーザーにアンケートを行うと半分以上の人が入店拒否を経験している。法律ができてから20年が経過しているのにまだ啓発が必要な法律というのは、問題があるのではないか。罰則までとは言わないが、盲導犬を拒否した店舗を公表する等の措置は取れないのか。

(消費・流通政策課 林)
 罰則等については、合理的配慮との関係も含めて慎重に議論するべきものと考える。周知啓発に関しては経済産業省としても十分ではないところもあると思っている。引き続き様々な観点を取り入れて、周知啓発を進めていく。

(片岡副会長)
 盲導犬の入店拒否の理由を経済産業省は把握しているのか。

(消費・流通政策課 林)
 事業者によって様々な理由があると思う。指摘の通り理念が浸透していないことも承知しているので、今後とも周知啓発に努めていく。

(3)様々な機器やシステムの開発に対して、視覚障害者が開発段階から意見を述べることができるシステムを構築する等によって視覚障害者のニーズを反映させ、視覚障害者にとって優しい機器やシステムが作られる仕組みを設けることを、国から関係企業等に指導すること。

(経済社会政策室 村山)
 年齢、障害の有無に関わらず、全ての人が多様な機器を利用できるようにすることは、日本社会全体にとって重要であると考えている。経済産業省としては、開発者を支援し、情報通信機器サービスを障害に関わらず利用できるようにすることを目的としたJIS X 8341シリーズを制定している。本規格の共通指針として、情報アクセシビリティを確保するためのプロセスや開発管理に関する推奨事項を記載している。
 今後も関係省庁とともに産業界にJIS X 8341シリーズを活用することで障害者にとってアクセシブルな機器、システムの開発を促していく。

(三宅部長)
 JIS X 8341シリーズにはアプリについての記述がまだはっきりと記載されていないと思う。そのため、アプリ開発において、視覚障害者が利用できるものが十分に揃っていないと感じる。その他、開発当初は視覚障害者にも対応していたが、バージョンアップによりいきなり使えなくなったという声もある。JIS X 8341シリーズの周知の他に、アプリの開発、バージョンアップについても視覚障害者の利用を考慮するようお願いする。

(経済社会政策室 村山)
 アプリやソフトウェアについては総務省の所管である。今後も、関係省庁と連携して意見交換等を行っていく。

(及川副会長)
 この陳情は何年も続けている。誰でも使いやすい機器を開発することにおいて、視覚障害者にも使いやすい機器を作ろうとする視点が欠けているのではないか。いつも健常者向けに機器が開発されてから、障害者団体が声を上げ、改良や新たに機器を開発するという流れになっている。このような後追いの補いを断ち切ることを経済産業省が考え、関係省庁やメーカー等に伝えてほしい。
 また、メーカー側も初めから障害者が使用することを想定して開発することによって、新たに機器を開発するよりも開発費を抑えることができ、単価も抑えることができるので、メリットが大きいはずである。このことも各業界に伝えてほしい。

(経済社会政策室 村山)
 今後、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法に基づき、事業者団体、障害者団体、政府間で協議を行うと思うが、その際に事業者団体に働きかけたいと思う。

(4)視覚障害者が利用する機器や製品の取扱説明書は、視覚障害者が確認できる媒体(音声版、点字版、拡大文字版、テキストデータ版等)で発行できるように助成すること。

(情報産業課 木村)
 取扱説明書作成に関する配慮事項について規定したJISはあるが、なかなか普及していないのが現状である。そのため、家電製品製造業者等と意見交換をし、取り組みを促していきたい。

(及川副会長)
 問題解決のため、国はより具体的な方策を示すべきだと思う。

(5)音声式のパルスオキシメーター及び非接触式体温計の開発を助成し、広く販売できるようにすること。

(医療・福祉機器産業室 南須原)
 経済産業省としては、高齢者や障害者の自立促進、活動を広げるための製品の開発等、従来の福祉用具の開発に加え、新たな社会課題に対応するため、令和4年度からは内閣府のSBIR制度を通じて福祉用具分野の開発支援を行っている。音声式のパルスオキシメーター及び非接触式体温計の開発も支援の対象に含まれる。用途によっては、医療機器として扱われることもあると思うが、その場合には、医工連携イノベーション推進事業を活用することができる。今後とも活動を推進していく。
 販売に関して、医薬法に基づく医療機器の承認や認証、販売等の規制があるので、所管の厚生労働省に相談してほしい。

(三宅部長)
 すでに要望の内容が支援対象として検討に入っているということか、それともこれから検討となるのか。

(医療・福祉機器産業室 南須原)
 メーカー側から要望内容の支援の申請が来ていないため、検討は行っていない。再度確認し、申請がされていた場合は検討と日視連への連絡を行う。

(6)全てのハイブリッド車や電気自動車に、擬音等の作動を義務付けること。

(自動車課 渡邊)
 平成28年車両接近通報装置の設置が新車のハイブリッド車と電気自動車に義務化された。他方、中古車や既存の車両に事後的に装置の設置を義務付けることは技術面も含めて難しい。この点については、国土交通省とも連携して、政府としてどのような対応ができるか検討し、車両接近通報装置の導入数を増加させていく。

(及川副会長)
 現在、国内で走行している車両の内、何%が装置を付けているのか。

(自動車課 渡邊)
 現在、回答できる資料を持ち合わせていない。ただ、新車のハイブリッド車、電気自動車には設置が義務化されているので、徐々に増加していくと考えられる。

(及川副会長)
 具体的な数値が分かり次第教えてほしい。また、以前、バックしてきた電気自動車に視覚障害者が轢かれるという事故があったので、バック時の車両接近通報装置作動の有無についての情報も併せて教えてほしい。

(三宅部長)
 ハイブリッド車、電気自動車は、アイドリング中は無音となり、視覚障害者が気づけないことが多いので、その点も理解してほしい。
 また、各自動車メーカーで車両接近通報装置の音がバラバラなので、音の統一、音の周知も検討してほしい。

(7)視覚障害者が気づくことが困難な電動キックボードについて、擬音等の作動を義務付けること。

(生活製品課 前場)
 電動キックボードの利用にあたっては、身体障害者、高齢者、子供等の全ての歩行者にとって安心安全に共存できる仕組みが大切であると考えている。令和4年4月に電動キックボード等を特定小型原動機付自転車と位置づけ、道路交通法の改正を行った。現在、国土交通省において、特定小型原動機付自転車の保安基準を検討中であると聞いている。
 また、電動キックボードの販売者、利用者に利用のルールを知ってもらうことが必要なため、事業者と関係省庁で組織するパーソナルモビリティ安全利用官民協議会を警察庁が中心となり立ち上げた。そこで交通安全教育を行っていくことで話が進んでいる。頂いた要望については、関係省庁とも共有する。

(橋井常務理事)
 回答にある協議会については、障害当事者団体を交えて協議してほしい。また、これからは無人配送ロボットの運用も始まってくると思う。そのため、歩行者第一で、歩行者が安全に安心して歩道を歩けるよう、音声等を使った危険防止策と厳しい安全規格、場合によっては罰則なども導入してほしい。

(生活製品課 前場)
 現在、電動キックボードが歩道を走る場合は、歩行者優先ということでルールを設定している。また、歩道を走る際は、時速6kmに制限することで話が進んでおり、時速6km以上のスピードが出ないように規制が進んでいくはずである。警察庁からも取り締まりを行うと聞いているので、経済産業省としてもルールの周知等、今度とも行っていく。

(片岡副会長)
 関連で自転車の場合も危険が伴うので、自転車についてもルールの周知を行ってほしい。

(生活製品課 前場)
 自転車についても周知を続けていく。

(8)ウェブサイトのバリアフリー化を進めるため、JIS X 8341-3に準拠したウェブアクセシビリティの普及を進めること。特に、公共機関は民間の見本となるよう、率先して取り入れること。

(広報室 川森)
 経済産業省のウェブサイトには、アクセシビリティ閲覧支援ツールというJISに対応したコンテンツを使用して、国民が快適に閲覧できるように配慮を行っている。足りないところがあれば、意見をもらい適宜改善していきたい。

(橋井常務理事)
 公的なウェブサイトを構築するにあたっては、事前に障害者団体にヒアリングを行ってほしい。また、民間のウェブサイトにもアクセシビリティを向上させるため、必ず当事者団体へのヒアリングを行う等の強制力を持たせるようなことはできないか。

(広報室 川森)
 民間のウェブサイトにまで強制力を持たせることは難しい。しかし、視覚障害者にとって使いにくいということは改善を促していかなければならないと思う。公共機関へのウェブサイトのアクセシビリティ向上に向けた周知は行っていきたい。

(片岡副会長)
 視覚障害者がどのようにウェブサイトを閲覧しているのか、知らない人が多いのだと思う。視覚障害者の中で音声を頼りに操作している者は、キー操作でウェブサイトを閲覧している。このような視覚障害者が閲覧しやすいウェブサイトの作り方のマニュアルを作成すれば、改善に繋がりやすいと思う。

(9)ウェブサイトにおける本人認証やセキュリティ対策については、視覚障害者が利用できる内容に改めることを国から関係機関等に働きかけること。特に、セキュリティ強化のためにシステム変更する際は、視覚障害者の利用の妨げとならないよう、対策を講じること。

(経済社会政策室 村山)
 本要望については総務省の管轄になるため、経済産業省としての回答は控えさせてもらう。ただ、総務省が発出している「みんなの公共サイト運用ガイドライン」(※1)の周知については、経済産業省も協力していく。

(三宅部長)
 視覚障害者にとって難しい本人認証については、何とかして改善してほしい。そのため、経済産業省、総務省、関係省庁と問題を共有してほしい。

(※1)みんなの公共サイト運用ガイドライン
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/b_free/guideline.html

(10)スマートフォン等の新たな情報端末の操作方法のバリアフリー化を、国から事業者に働きかけること。

(11)スマートフォンやパソコン用のアプリの開発者等に対して、これらのアプリが視覚障害者でも使えるようにすることを、国から事業者に働きかけること。

(情報産業課 木村)
 陳情項目(10)と(11)をまとめて回答する。
 スマートフォンやアプリケーションは社会のインフラであり、視覚障害者も使える環境を整えることが重要であると考えている。アクセシビリティを確保したものを実装すべく、高齢者・障害者等配慮設計指針等で周知を進めている。また、技術が革新していく中で、音声入力等のツールが登場し、バリアフリーに届くものも登場している。経済産業省としては、こういったアプリが普及するよう様々な取り組みを進めていきたい。

(片岡副会長)
 アプリがバージョンアップすると、音声認識ソフトとの互換性がなくなることがある。そのため、私たち視覚障害者は、バージョンアップの度に、スマートフォンやアプリが使えなくなるのではないかと不安になる。このような点を理解して、取り組みを進めてほしい。

(12)スマートフォン等の新たな情報端末を視覚障害者も容易に活用できるよう、全国で研修会を開催し、人による支援体制の充実を図ること。なお、国はこれらの経費等を助成すること。

(経済社会政策室 村山)
 現在、デジタル庁において、デジタル推進委員によるデジタル機器やサービスの利用が不慣れな方向けにきめ細かなサポートを実施していると聞いている。経済産業省としても関係省庁への取り組みの周知、必要な処置をとっていく。

(三宅部長)
 スマートフォン等の新しい端末が出てくるたびに不安の声が出てくる。そうすると視覚障害者にとっても扱いやすいものを求める声が出てくる。新しい端末が世に出る際には、あらかじめ端末の操作についての研修会を開催する等、視覚障害者が不安なく端末を使えるように配慮していただきたい。

(13)音声読み上げ機能付きフィーチャー・フォンを継続して生産すること。

(情報産業課 木村)
 フィーチャー・フォンが視覚障害者にとって利便性の高い端末であることは承知している。技術革新の潮流の中であるが、必要なものを残していけるよう、陳情内容については、業界団体に伝える。

(片岡副会長)
 高齢者と視覚障害者にスマートフォンに乗り換えられない者が多い。これからもフィーチャー・フォンを残してほしい。
(14)視覚障害者にも使いやすいセルフレジやキャッシュレス端末機器、ATM等を普及させるため、これらの開発を国から民間企業等に働きかけること。

(15)スーパー等にセルフレジやタッチパネル等の非対話型システムを導入する場合は、視覚障害者が1人で利用できるよう、AI等を活用した音声認識技術を取り入れること。

(16)セルフレジに店員等の呼び出しボタンを付ける等、視覚障害者が利用しやすいシステムにすること。

(17)セルフレジのデザインを統一し、視覚障害者にとって見やすいタッチパネル表示にすること。

(情報産業課 木村)
 陳情項目(14)から(17)をまとめて回答する。
 昨今の人手不足、コロナ禍の影響により人を介さないセルフレジやキャッシュレス決済の流れが急速に広がった。そういった中で視覚障害者が取り残されることがないよう、アクセシビリティの高い機器の開発を進めなければならないことは承知している。セルフレジ、キャッシュレス端末等、どちらも新しく世に出たものであるため、まだまだ整備できている所が少ないが、整備が進むよう要望を業界団体に伝えていく。
 また、音声認識技術を活用したやり方については、セブン銀行等で整備が進んでいる。経済産業省としてもこのような動きが進むようにしていきたい。

(片岡副会長)
 私は弱視者で、今まで必要なものは単独で買うことができたが、セルフレジ化によって支払いが難しくなり、買い物困難者となった。そのため、セルフレジについても音声で対応できるものが必要だが、人的サポートも受けられるようにしてほしい。

(三宅部長)
 セルフレジやタッチパネル操作が必要な買い物に関する要望は全国から多く寄せられている。セルフレジ等は人手不足解消になる一方、視覚障害者が取り残される状況を生んでいる。開発メーカーには視覚障害者が取り残されている状況を解消するように働きかけてほしい。

(18)デジタル通貨の到来が予測されるため、視覚障害者が使用できる専用機器を開発すること。

(19)銀行のATMにおいて、音声ガイドで通帳の記帳ができるシステムを開発すること。

(情報産業課 木村)
 陳情項目(18)と(19)をまとめて回答する。
 陳情項目(18)の専用機器の開発については、情報端末としてスマートフォンに集約して視覚障害者にも活用できるように対応していきたい。
 陳情項目(19)のATMについては、視覚障害者対応の機器として、音声案内や音声テンキーを押しながら預入、引き出し、残高照会、記帳等ができるATMの開発が進んでいると聞いている。関係省庁とともに普及に向けて取り組んでいく。

(三宅部長)
 デジタル通貨に関しては、スマートフォンを使った利用だけではなく、視覚障害者が扱いやすい専用端末を開発した方が、視覚障害者にとっては使いやすくなる。一方で、デジタル通貨の利用でもセキュリティの問題が出てくる。セキュリティの強化によって視覚障害者が利用できなくなることがないようにしてほしい。
 ATMに関しては、すでに実現しているATMがあることは承知している。そのため、対応しているATMがあることを広く紹介してもらい、全国の視覚障害者がATMの機能を一つでも多く利用できるようにしてほしい。

(及川副会長)
 現在、地方の金融機関では人のいる窓口は年々減少している。そのため、ATMでの通帳管理の依存度が上がっている。しかし、通帳の預金残高や暗証番号を他人に読んでもらったり、入力してもらったりすることは、プライバシー的にも問題がある。視覚障害者の中には、ATM操作ができないため、わざわざ遠くの銀行まで移動して窓口で預金を下ろす者もいる。そのため、地方の視覚障害者が利用できるATMがどの程度普及しているか調べて問題を把握してほしい。

(情報産業課 木村)
 セブン銀行等で実現していることは承知しているが、実態は様々あると思うので、関係省庁と連携して取り組みを進めていきたい。

(20)飲食店、小売店等で進むサービスの無人化やセルフレジ化された場合でも、有人支援等の代替手段を確保すること。

(21)百貨店やスーパー等での買物時や支払い時に、支援を希望すれば速やかにサポーターの派遣を実施する制度を確立すること。

(22)地域に関係なく、簡単な手続きや申し入れにより、店舗等での代筆・代読の支援が確実に受けられるようにすること。

(消費・流通政策課 林)
 陳情項目(20)から(22)をまとめて回答する。
 経済産業省としては、先ほどまでのハード面の要望と陳情項目(20)から(22)のソフト面での要望、両方を進めていく必要があると考えている。人手不足からセルフ化の流れは進んでいるが、非常時や機器に不具合が起きたときのため、対応できる人員を配置している。その他、日本フランチャイズチェーン協会では、場面ごとの対応をマニュアル化しており、視覚障害者への接客についても詳細にまとめ、周知を行っている。また、ソフト面での対応となるので、現場で働く人に対して、周知、研修していくことが大切だと考えている。

(片岡副会長)
 最近、飲食店等に入ると、入店から端末を操作し、自分で席番号を確認して席に着き、注文も端末で行わなければならないことが増え、視覚障害者にとって困り事になっている。人的サポートがなければ利用できなくなるので、要望のことはしっかりと理解してほしい。

(及川副会長)
 デジタル社会が発達するに従い、晴眼者の生活は豊かになっているが、視覚障害者にとっては不便な社会になっている。本来はAI等の活用により、視覚障害者にとっての不便さも解消されるはずだが、解消されないのは、各府省庁の認識不足と情報発信力不足があるからではないのか。
 また、デジタル化における不公平感も問題視すべきではないか。例えば、オンラインで予約すると安く済むことがあるが、視覚障害者単独では、オンラインで予約できないため、通常方法での予約となり、結果的に定価の料金を払わなければならないことがある。デジタル化に不慣れな人ほど不利益を被ることのないようにしてほしい。
(三宅部長)
 弱視、全盲を問わず、セルフレジは不便なものと感じている。画面の色、文字の大きさ、音声読み上げ等の機器開発と併せて、人的サポート、好きなタイミングで店員を呼べるような仕組みも作ってほしい。

(経済社会政策室 林)
 様々なご指摘を頂き、ありがとうございます。日視連からの話を聞き、機器開発やアクセシビリティに関して、視覚障害者の困り事と我々が考えていたこととの間にギャップがあることを改めて認識した。経済産業省を含め、各府省庁で何ができるのか検討、実行するので注視してほしい。

(及川副会長)
 活動の際は、当事者団体との意見交換を心掛けてほしい。我々としても問題解決を省庁だけに任せるのではなく、協議を続けることで解決策を提案できるようにしていきたい。



09 デジタル庁



1.日時
 令和4年8月26日(金) 15時00分〜16時00分

2.場所
 オンライン(Zoom)

3.出席者
(1)日本視覚障害者団体連合
                     副会長  佐々木 宗雅
                    組織部長  三宅 隆
                     事務局  石原 慎太郎

(2)デジタル庁
 国民向けサービスグループ
  アクセシビリティ班               永田 岳士
                     参事官  吉田
                   参事官補佐  岡村
 サービスデザイン班         参事官補佐  坂本
 アクセシビリティアナリスト            伊敷
 マイナポータル班          参事官補佐  谷島
 戦略企画班                    林

4.陳情項目、回答、意見交換

(1)障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の第10条により、貴庁が所管する施策において視覚障害者への情報保障をさらに進めるための措置を講じ、あるいは予算を確保すること。

(サービスデザイン班 坂本)
 現在、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の成立を受けて、デジタル庁での取り組みを進めるため、予算要求の準備を進めている。

(三宅部長)
 同法の第3条第3項に可能な限り障害の種類、程度に関わらず、同一時点で同一内容の情報を取得できるようにすることを定めている。こちらを基に第10条ができており、各省庁が予算をつけることになっている。デジタル庁の所管は、ウェブサイト関連になると思うが、ウェブサイト上の情報をいかに健常者と同等に視覚障害者に届けるか、しっかりと取り組んでほしい。

(2)デジタル化の進展においては、視覚障害者にとって使いやすいICT機器やシステムを開発し、幅広く普及させること。

(サービスデザイン班 坂本)
 デジタル庁としては、アクセシビリティアナリストをはじめとした障害当事者の職員等が製品のアクセシビリティのテストを行っている。
 例えば、マイナポータルについては、マイナポータルの公表前にユーザーテストを行い、操作に不便がないかを確認し、そこで出た問題点について、開発業者に報告し改善を行っている。また、デジタル庁のウェブサイトについても、スクリーンリーダーで読み込めるのか等、アクセシビリティに問題がないかをテストし、問題があれば随時改善を行っている。

(3)デジタル化に関わる各種機器やシステムの開発に対して、視覚障害者が開発段階から意見を述べることができるシステムを構築する等によって視覚障害者のニーズを反映させ、視覚障害者にとって優しい機器やシステムが作られる仕組みを関係府省庁の施策に盛り込むこと。

(サービスデザイン班 坂本)
 開発段階の早い時期から障害当事者がプロジェクトに関われるような仕組みを現在構築している。デジタル庁として、今後もしっかり取り組んでいく。

(佐々木副会長)
 視覚障害者が開発段階から意見を述べることができるシステムがあることは重要である。デジタル庁が関わる案件のみではなく、デジタル庁が窓口となり、視覚障害者側から世間に意見を発信できるようなものにしてほしい。

(4)マイナンバーカードを用いた行政手続きのデジタル化を進める際は、音声読み上げやウェブアクセシビリティにも十分配慮し、視覚障害者が取り残されることのないよう徹底すること。

(マイナポータル班 谷島)
 マイナンバーカードを用いた行政手続きは、マイナポータルを入り口として手続きを進めることになる。そのため、マイナポータルのアクセシビリティについては、JISへの適合を行うとともに、障害当事者によるアクセシビリティのチェックを行いながら改善を図っている。今後も機能強化や改善を予定しているが、その際にも当事者チェックを行いながらウェブアクセシビリティの向上に努めていく。

(三宅部長)
 マイナンバーカードを利用すれば、役所に行かなくともコンビニ等で住民票を取得したり、印鑑登録をしたりすることができる。しかし、端末が視覚障害者にも利用できるものになっていないため、操作を頼まないといけないが、マイナンバーの性質上、コンビニの店員に頼むわけにはいかないので、この方法が利用できない視覚障害者が多い。このことについて現在、解決策等があるのなら教えてほしい。
 また、マイナンバーカードについては総務省にも陳情を行ったが、マイナンバーカードはデジタル庁が答えると言って回答をもらえなかった。デジタル庁からも回答をもらえないとなると解決できなくなってしまう。

(アクセシビリティ班 吉田)
 政府内でマイナンバーカードについての窓口がはっきりしていないので、大変申し訳ないが回答することが難しい。問題については、しっかり受け止め、マイナンバーカード担当部署、マイナポータル担当部署を含め話し合い、場合によっては日視連とも意見交換をさせてほしい。

(三宅部長)
 マイナポータルは視覚障害者にとっても関心が高い。情報発信の際は、ウェブサイト上だけではなく、複数の手段を用いて情報提供してほしい。

(5)行政機関に提出する各種書類は、視覚障害者が確実に記入できるよう、関係府省庁のデジタル化を推進すること。

(三宅部長)
 この要望について補足をする。現在、ウェブサイトにて書式をダウンロードして必要事項を入力し、プリントアウトして役所に提出する流れが多くなっているが、アクセシビリティが確保されていないと、視覚障害者は手続きができなくなる。この点を改善してほしいので、この要望を出している。

(サービスデザイン班 坂本)
 関係府省庁では、サービスを作成する際は、障害当事者の職員がアクセシビリティのテストを行うことになっている。ご要望については、ご意見として関係部局と共有する。

(三宅部長)
 ぜひ、関係府省庁だけではなく、自治体にも波及するようにしてほしい。

(佐々木副会長)
 視覚障害者が単独で記入できるように、記入方法についての説明会や技術的な支援等の配慮も充実させてほしい。

(6)ウェブサイトのバリアフリー化を進めるため、JIS X 8341-3に準拠したウェブアクセシビリティの普及を進めること。特に、国は民間の見本となるよう、率先して取り入れること。

(サービスデザイン班 坂本)
 デジタル庁としては、JIS X 8341-3を満たせば良いのではなく、他のものと連携できるのか、サイト上で迷子になる可能性はないか、アプリ同士の相性を検証し、問題なく操作できるか確認しながら製品の改善を図っていきたいと考えている。

(三宅部長)
 総務省が打ち出している「みんなの公共サイト運用ガイドライン」(※1)は、最低水準のガイドラインを遵守していても、必ずしも高水準であるとは言えないことがある。デジタル庁からも総務省のガイドラインを遵守するように働きかけてほしい。また、積極的に取り組んでいる部署は好事例として紹介したらどうか。

(サービスデザイン班 坂本)
 デジタル庁では、ユーザー側からの視点でサービスを作っていくことを目指している。また、アクセシビリティに優れたウェブサイトの統一化や標準化を図る、サービスデザインやデザインシステムという取り組みも進んでいる。頂いた意見を参考に、よりアクセシビリティが向上するよう、今後とも取り組んでいく。
(アクセシビリティアナリスト 伊敷)
 デジタル庁では、総務省から出されている「みんなの公共サイト運用ガイドライン」に基づいて、省庁・自治体がウェブアクセシビリティ方針を立てて運用しているウェブサイトの試験を行っている。

(三宅部長)
 要望の「特に、国は民間の見本となるよう、率先して取り入れること。」について、デジタル庁が民間企業に直接働きかけることはしないことは承知している。ただ、デジタル庁として見本を見せることで周知を行うか、または各省庁を通じて、デジタル庁のウェブアクセシビリティを見てもらい、それを民間に促して参考にしてもらう等の取り組みはできないか。

(サービスデザイン班 坂本)
 対外的な情報発信については様々検討しているが、頂いた意見についても検討する。

(アクセシビリティアナリスト 伊敷)
 国や自治体のウェブアクセシビリティについて補足する。多くの自治体では、PDFファイルや動画音声コンテンツは編集に手間がかかるため、ウェブアクセシビリティ方針から除外していることが多い。そこで、デジタル庁としては、日本のデジタル化の司令塔になることを謳っているので、PDFファイル・動画音声コンテンツ共にウェブアクセシビリティ方針に入れるように促している。
 会議の議事次第や議事録、外部の有識者からの提出資料をPDFファイルで公開することが多いが、少なくとも議事次第や議事録に関しては、PDFと併せてウェブページ上でHTMLの形で提供することを進めていきたい。
 そして、併せてPDFファイルそのもののアクセシビリティに関しても少しずつではあるが、改善に向けた取り組みを始めている。その中で議事次第や議事録等のテキストメインのシンプルな形態のファイルをアクセシブルにすることが第一歩となると考えている。しかし、パワーポイントの資料をPDF化したものや画像のみのPDFファイル等をアクセシブルなものにすることは、技術的にもスクリーンリーダーの読み上げ対応状況的にも難しい。今後も継続して改善に取り組んでいく。
 動画についても同様で、視覚障害者向けには、音声解説を付けたり、状況を説明するようなテキストを付けたりしている。音声解説についてはまだできていないこともあるが、可能な限り実施できるようにしている。
 また、デジタル庁では、より多くのスクリーンリーダーのユーザーがウェブサイト上をスムーズに移動できるように、各ページの先頭に小見出しのようなリンクを付けた。これにより、スクリーンリーダーで説明部分を毎回読まなければならない点を省略し、ユーザーの読みたいコンテンツに簡単にアクセスできるようになった。このリンクについては、実装しなくてもJISの求める達成基準を満たすことができたのだが、スクリーンリーダーのユーザーのアクセシビリティを考慮した結果、実装することになった。
 JISに関係なく、障害者にとって使いやすく、ストレスなく利用できる施策を今後も取り組んでいく。

(佐々木副会長)
 以前、動画や絵に対しては、見出しが付けにくいとの話を聞いた。やはり技術的に難しいのか。

(アクセシビリティアナリスト 伊敷)
 刻々と流れていく動画の中で状況を細かく説明するには、映画の音声解説のようなスキルが必要だと考えている。そのため、音声解説を恒常的に付与した動画を公開するとなると、上記のスキルを持った人を常に動画制作班に入れるか、委託する必要がある。さらに公開する動画の数も多いので、動画への音声解説の付与については、仕組みから考える必要があると考えている。

(佐々木副会長)
 最近では、活字を使わず絵や動画で説明する形態が増えている。健常者には理解しやすいかもしれないが、視覚障害者にとっては難しいので、対策をお願いしたい。

(※1)みんなの公共サイト運用ガイドライン
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/b_free/guideline.html

(7)国のウェブサイトにおける本人認証やセキュリティ対策については、視覚障害者が利用できる内容に改めること。特に、セキュリティ強化のためにシステム変更する際は、視覚障害者の利用の妨げとならないよう、対策を講じること。

(サービスデザイン班 坂本)
 いわゆる「CAPTCHA(キャプチャ)」と言われる、応答者がコンピューターでないことを認識するための仕組みを改善してほしいということだと思うので、その点を踏まえて回答する。
 まず、CAPTCHAによる、文字を認識して入力するセキュリティ対策が視覚障害者に対するハードルになっていることは把握している。そして、サービスデザインの観点から代替となるセキュリティ対策はないかということも含めて検討している。

(三宅部長)
 金融機関のウェブ上での申し込みや府省庁のパブリックコメントでの意見提出では、最終的にCAPTCHAによるセキュリティがよくあった。そのため、画像が認識できない人のために別途音声によるセキュリティ対策もあったが、聞き取りにくいとの声がある。私たちとしては、このセキュリティの仕組みが視覚障害者でも対応できるようになってほしいと考えている。
 また、セキュリティ強化により大切な情報を守ることは当然のことではあるが、セキュリティ強化によりスクリーンリーダーが対応できなくなったり、今まで使用していたサービスが停止になったりすることがある。そうなると、視覚障害者が利用できなくなってしまう。従来通りに視覚障害者が使用するツールやサービスが使えなくなったりしないよう、配慮をお願いしたい。セキュリティ強化のためご理解くださいの一言で済ませないように対応してほしい。

(サービスデザイン班 坂本)
 技術的なことであるので明確な回答はできないが、障害当事者の職員と連携しながら対策を模索したい。

(三宅部長)
 現在、各省庁の問い合わせフォーム等でセキュリティ強化をしたことで視覚障害者にとってバリアになることや、利便性が低下することはあるのか。

(サービスデザイン班 坂本)
 各省庁のサイトの状況を全て把握はしていないが、セキュリティ強化の観点からCAPTCHA等を使用したセキュリティ対策を講じることは十分に考えられる。

(三宅部長)
 やはり視覚障害者がセキュリティ強化に対応できないことが考えられるため、例えば、専用のメールアドレスを用意して意見をメールしてもらう等の方法を模索し、各省庁に示してほしい。



10 金融庁



1.日時
 令和4年8月25日(金) 11時30分〜12時30分

2.場所
 オンライン(Zoom)

3.出席者
(1)日本視覚障害者団体連合
                     副会長  佐々木 宗雅
                    組織部長  三宅 隆
                     事務局  石原 慎太郎

(2)金融庁
 総合政策局
  総務課
   総括第二係                  田中 玲央
   広報室                    松田 佳敬
  リスク分析総括課
   フィンテック参事官室             串田 有
   IT・サイバーモニタリングチーム       細沼 学
 監督局
  総務課                     松下 啓一
  銀行第一課                   平野 義隆

4.陳情項目、回答、意見交換

(1)障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の第10条により、貴庁が所管する施策において視覚障害者への情報保障をさらに進めるための措置を講じ、あるいは予算を確保すること。

(総務課 松田)
 金融庁では、ウェブサイトを中心に金融庁の施策等を広く情報提供している。なお、金融庁ウェブサイトでは誰もが支障なく情報を取得できるように総務省が作成した「みんなの公共サイト運用ガイドライン」(※1)に基づき、管理、運営を行っている。そうした中で視覚障害者に向けた取り組みとして、平成25年よりウェブ・アクセシビリティ支援ツールをホームページ上に導入し、ウェブサイト内のHTMLやPDFによる文章の読み上げができるようにしている。また、ウェブアクセシビリティの確保、維持、向上を目的に年1回外部機関によるウェブアクセシビリティの検証を行い、結果を公表している。検証により改善が必要な事項については、閲覧数の多いものから順次継続的に改善している。
 今後も以上のような取り組みを続け、政府全体の取り組みも踏まえながら改善に努めていく。

(三宅部長)
 PDFファイルを直接的に扱えない視覚障害者もいる。テキストの読み上げができるPDFファイルだけではなく、テキストファイルやWordファイル等、可能な限り資料の媒体を選択できるようにしてほしい。そして、このことは金融庁だけではなく、所管する金融機関にも監督指針を通じて、視覚障害者への情報提供、視覚障害者からの情報発信について配慮することを求めてほしい。

(※1)みんなの公共サイト運用ガイドライン
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/b_free/guideline.html

(2)地域に関係なく、簡単な手続きや申し入れにより、金融機関において代筆・代読の支援が確実に受けられるようにすること。

(総務課 松下)
 視覚障害者のコミュニケーション手段を確保する観点から金融機関において、代筆・代読の支援を受けられるようにすることは金融庁としても重要なことであると認識している。そのため、業界別に監督指針を作成し、その中で障害者差別解消の観点から適切に対応しているかを着眼点として監督を行っている。
 また金融庁では、毎年、障害者等に配慮した取り組みに関するアンケート調査を行い、ほとんどの金融機関では代筆・代読の支援に関する内規が定められていることが分かっている。そのため、金融機関においては、一定程度進展がみられていると考えている。金融庁としては、引き続き業界団体との意見交換を通して金融機関の取り組みを促進させていきたい。

(三宅部長)
 今回、陳情書に併せ、参考資料として、本連合の弱視部会がまとめた「弱視者の困り事 資料集第5号」(※2)を情報提供する。
 この資料には弱視・ロービジョンという観点から、金融機関における困り事や活用事例がまとめられ、特に金融機関での代筆拒否のことを詳細にレポートしている。また、視覚障害者の中では、回答の監督指針を知らない者が多いので、この資料で監督指針について紹介している。ぜひ、参考にしてほしい。

(銀行第一課 平野)
 確認して、参考にしたいと思う。

(佐々木副会長)
 ガイドヘルパーや同行者にも代筆・代読が認められているはずであるが、各金融機関で対応が異なっている。金融機関でどのような情報交換が行われているのか。

(総務課 松下)
 金融機関内で周知徹底が不十分な点があるとのことだが、引き続き周知徹底を行い、代筆・代読の促進に努めていく。

(三宅部長)
 金融庁が監督指針を定め、指導を行っているにも関わらず、毎年全国の加盟団体から要望が寄せられ、改善を求める陳情を行うことは、回答の旨が徹底できていない表れだと思う。各金融機関の問題意識に関わることだと思うので、金融機関においての新人研修や管理者が代わる際の研修において、視覚障害者への代筆・代読の支援を行うことを強く指導してもらいたい。
 また、金融機関で働く従業員、または、金融機関に訪れる視覚障害者が代筆・代読についての内規を知らない可能性もあるので、その内規を内外に情報発信することも一つの方法だと思う。

(※2)弱視者の困り事 資料集第5号
http://nichimou.org/all/news/secretariat-news/201201-jimu-2/

(3)視覚障害者にも使いやすいATM等を普及させるため、これらの開発・普及を国から金融機関や民間企業等に働きかけること。

(銀行第一課 平野)
 金融庁では、監督指針において、視覚障害者からの要望により視覚障害者対応のATMの増設を積極的に推進している。また、銀行等に対しても毎年アンケート調査を行い、令和3年の結果では、視覚障害者対応のATMは、銀行全体の90%が設置済みとなっている。また、ATMの開発や改良にあたって、障害者の意見を取り入れている銀行もある。金融庁では、今後ともアンケートを通して、視覚障害者に配慮したATMの設置を促していきたい。

(佐々木副会長)
 ATMのハンドセットについて、高齢視覚障害者の中には、音がよく聞こえず音量を大きくする人がいる。ただ、音を大きくすると逆に周囲の人に個人情報を聞かれる恐れがある。そのため、受話音量を利用者のみに限定した形で大きくすることは可能だろうか。

(銀行第一課 平野)
 個別具体的なATMの機能については把握しきれていない。確認している事例の中では、ATMの試作機段階で視覚障害者に音声ガイダンスを体験してもらい、意見を反映しているという。意見については、金融機関に情報発信していく。

(三宅部長)
 視覚障害者の中には、実はこれらのATMの機能を知らない者がいる。そこで、盲学校で体験会を開いたり、中途失明者にも知ってもらうため福祉センターにデモ機を置く等、体験できる機会を設けてほしい。
 また、ATMの保守点検も大切だ。ハンドセットが壊れていたり、断線していたり、ボタンが適切に押せない状態のATMがある。金融機関にATMの修理について相談しても聞き入れてもらえないこともあるので、今後アンケートに保守点検に関する項目を作り、金融機関に意識してもらい、場合によっては指導してほしい。

(4)銀行のATMにおいて、音声ガイドで通帳の記帳ができるシステムを開発すること。

(銀行第一課 平野)
 視覚障害者にも対応したハンドセット方式のATMの中には、音声サービスを利用することで通帳への記帳も可能である機種も存在している。今後も視覚障害者にとっての利便性に配慮したATM開発を金融機関に促していく。

(三宅部長)
 通帳記帳の音声読み上げをハンドセットで行える金融機関があることは承知しているが、対応している金融機関が限られている。金融庁においては、金融機関との意見交換の場で、このATMの機能を共通化することを議論してほしい。

(銀行第一課 平野)
 金融庁では、アンケートによって各金融機関のATMのハンドセットの持つ機能を把握している。例えば、アンケート結果の周知の際に頂いた意見を情報発信することは可能だと思う。視覚障害者のニーズに適切に対応できるようにしたい。

(佐々木副会長)
 通帳への記帳の際、印字されている最終ページを開いてATMに挿入することになっているが、視覚障害者にはこの作業は難しい。そのため、どのページから挿入しても記帳できるようにならないか。技術的にも難しくないと思われるので、各金融機関に導入を促してほしい。
 また、市中の金融機関では、まだまだ視覚障害者の要望が伝わっていないと感じる。各金融機関が要望した旨を対応することは難しいことではないと思うので、金融庁から働きかけていただきたい。

(5)デジタル通貨の到来が予測されるため、視覚障害者が使用できる機器を開発すること。

(リスク分析総括課 串田)
 プリペイドカードやスマホ決済、暗号資産等の交換業者に対して、事務ガイドラインにおいて障害者の利便性を考慮し、障害者差別解消法及び障害者差別対応方針に則り、適切な対応を求めている。具体的な対策として、音声ガイダンスに対応したチャージ機、券売機の設置、スマートフォンアプリを提供する中で読み上げ機能に対応しているかどうかのアクセシビリティのチェックを求めている。
 金融庁としては、障害者に配慮した取り組みが一層充実するよう、引き続きサービスの向上を促していく。

(佐々木副会長)
 デジタル通貨は、まだまだ視覚障害者にとってなじみのあるものとは言えない。デジタル通貨について視覚障害者に対しても分かりやすい形で説明してほしい。

(三宅部長)
 そもそも一定のアクセシビリティが保障されていなければ、視覚障害者はデジタル通貨を利用できないだろう。回答の内容からより一歩踏み込んで、デジタル通貨を取り扱っている事業所を指導してほしい。
 また、今回は専用機器の開発を陳情しているが、パソコン、スマートフォンの音声ガイドや文字拡大機能を使っての単独利用ができるような仕組みも併せて検討してほしい。

(6)ウェブサイトにおける本人認証やセキュリティ対策については、視覚障害者が利用できる内容に改めることを国から関係機関等に働きかけること。特に、セキュリティ強化のためにシステム変更する際は、視覚障害者の利用の妨げとならないよう、対策を講じること。

(リスク分析総括課 細沼)
 金融機関においては、顧客の資産を守るために様々なセキュリティ対策を行っている。このセキュリティ対策と利便性の確保は、一般的には相反するものであるが、金融庁としては一定の顧客の利便性の確保も必要であると考えている。引き続き、セキュリティ強化の際には顧客の利便性を確保するよう対応を促していく。

(佐々木副会長)
 オンラインで金融取引を行う際、視覚障害者は個人認証のところで不便を強いられている。セキュリティと利便性が相反するものであることは承知しているが、両方を備えたものを検討してほしい。

(三宅部長)
 セキュリティ強化による仕様変更があった場合、音声の読み上げができなくなる等、今まで使えていたものが突然使えなくなり、利用していた金融機関との取引をあきらめざるを得ないことがある。しかし、金融機関は「セキュリティ強化のためご了承ください」の一点張りだ。了承してくださいということは、「視覚障害者は使えなくても良いということなのか」と思ってしまう。セキュリティ強化が大切であることは承知しているが、視覚障害者が金融取引に関して取り残されることのないように配慮してほしい。
 ちなみに、セキュリティ強化についての視覚障害者への配慮について、金融庁から各金融機関へはどのような指導を行っているのか。

(リスク分析総括課 細沼)
 令和4年2月に「金融分野におけるサイバーセキュリティ強化に向けた取組方針」(※3)を公表し、対話や説明会を通して金融機関に取組方針を参考にするように説明している。

(※3)金融分野におけるサイバーセキュリティ強化に向けた取組方針
https://www.fsa.go.jp/news/r3/cyber/cyber-policy.pdf




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